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狼狼狼狼狼狼狼狼狼娘  作者: 宵闇レイカ
五章 白き郷
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出発の白






夢白(ゆめしろ)の屋敷、大広間。

「――私達の目的は大きく分けて二つです。一つは、創白(だしろ)の末裔、つまり期規(きすのり)様の息女、期沙(きすな)様を保護すること。もう一つは、創白の奥義(、、、、、)を探し出すこと。これらを急ぎ達成しなければならないわけですが…、必ず敵に遭遇するならばまだしも、目的は敵と戦うことではありませんので、二班に分かれて目標を目指します」

「私と焔ちゃんがキスナちゃんの保護。(つき)クンとセンラちゃん、メイナちゃんが『奥義』の方だね」

(よる)さんの説明は目的に入るが、星夢(せいむ)が即座に判断し、過剰なほど円滑に話を進める。

 当の夜さんの方も、それをこれから話し合おうというつもりだったらしく、説明半ばに言葉を失った。というよりも、また頭の整理が追いつかなくなったらしい。

「っあ…、え?…えと、まだ内容も人数も説明していないのですが…」

「星夢、説明に対して説明が必要になりそうな判断をするんじゃあない。ていうか説明してくれ」

またもやタジタジになってしまった夜さんは、頭の上に『?』を重ねて思考をスリップさせているようだが、

「あの…、それではその方が迅速に行動に移せると…、するなら、……それで」

あ、夜さんが匙なげた。

 だいたい回転の速すぎるのが星夢だが、夜さんに変わって説明を始めた。

「要するに、創白(だしろ)の当主が父キスノリさんだってことは、まだその能力を使えない程の年齢のキスナちゃんは、しかし危険因子として襲われうるということだろう。それならば、年端のいかぬ少女の保護は紳士|()に任せておいて、九狼として代わりに『奥義』をセンラちゃんかメイナちゃんに担当してもらうのがいいだろう、ってことだね。私ら得体の知れない奴らが、直接神力に触れそうな『奥義』の方を担当するのは、この郷の人間にとって不都合だろうし」

じっくり考えればそれほど複雑ではないが、話の途中でそこまで持っていけるか?普通…。

 星夢がそう話し、焔ちゃんはやや恍惚じみた表情で聴いていたし、メイナは夜さんとまた違ったタイプで得体の知れないモノを見るような眼をして聴いていた。センラの方は…。これは多分どうでもいいって顔か?自分の過去による因縁で繋がっているとしても、記憶のない彼女にとって、過去は失ってしまっている空虚な他人話に過ぎないのだろう。

「で、『奥義』ってなんだい?勘だけど、創白(だしろ)の現実書き換え能力をフルに使った、状況をひっくりかえせる秘密兵器みたいなものかね?」

「…貴方の場合はもはや勘とは言いません。予言です…」

夜さんは半ばあきれたようにそういった。

 ここまで異次元でも怪しまないのは、自らが信用して呼んだ武白(たけしろ)の二人と、俺の頼んだ相手だからか。それとも他人の精神性に関わる『夢』の能力の夜さんだからか。独立した統治者である『武白』や『創白』に助けを求めたことも、ひょっとしたらその者が『自分にとって安全な人物』であるかどうかなんかが分かるのかもしれない。

 夜さんはやはり事実を告げるという点では躊躇わなかった。

「『創白の奥義』を見つけ出すことができれば、あらゆる問題をなかったこと(、、、、、、)にできます。無論、同じことを繰り返すこともありません。対象行為が存在しないように、世界そのものを創り変えるのですから」

「随分な反則級の効果だが、デメリットは?」

「結果的にはありえません。誰もが変更後の世界に生きるのなら、以前の世界の常識は通用しなくなります。これまであった常識や、その世界における不都合は、新たな世界に持ち越されることはなく、『奥義』を発動させた者も含めて、望んだとおりの構成の世界に創り変えられます」

単純にそれだけ聞くと、ゲームの魔王が目指す野望のように聞こえるのだが、恐らくそこまで壮大なレベルではないのだろう。それほどの規模のものを、創白(だしろ)が発動させるとは思えないし、やはり夜さんの口調にそれほどまでに覚悟のある雰囲気はないのだ。

 それでも、不安は残る。

「奥義の使い方は?道具的な意味ではなくて、規模の問題はどうなんだ」

夜さんは、しかし躊躇わずに言う。彼女はどうやら、相当に期規(きすのり)さんを信用しているらしい。

「その点の懸念は理解できます。私とて、自分たちの好きなようにして解決とは望みません。『奥義』については、発動させた期規様から『夢』を通じて説明されました。彼の『予知』の能力によって、――詳しい事情は私ごときに理解できませんが、『武白』のお二人が郷に(きた)ることを知っていた彼は、『奥義』を『武白』に託すように私に伝えました。…つまり、星夢様が割り振った通りの行動になります」

「あれ…?でも、私達は創白が倒れたからあなたに呼ばれたのよね?そうなると、それ以前に『奥義』を発動させるのは不可能だと思うのだけど…」

メイナは皆が思っていることを代弁するように言った。

 夜さんが期規さんから聞いた話だと、武白に『奥義』を託してその後に輝白に敗れたということになる。そうなると、そこでパラドックスが起こらないように考えるなら、

「『予知』でセンラちゃんやメイナちゃんに助けを求める展開になるまで知っておきながら、それでも輝白を捕らえられなかった。か、なにか別に理由があった、のか」

星夢は珍しく少し考えていた。少なくとも、俺の思考と同じタイミングで結論付けるくらいには。多分、『なにか別の理由』が本命だったのだろう。しかしそれが分からなかった、というところか。

「私には…期規様の考えはついぞ解りませんでした…。私では…」

「自責は必要ないよ、夜さん。今できるのは行動だけだ」

そうだ。今は考えても仕方がない。

 今できるのは、その思考に有用な理由が保障されていないなら、行動あるのみだ。少なくとも『奥義』の価値と程度は保障されている。それと、期規さんの娘、期沙(きすな)さんの安全も急いで保障しなければならない。

「夜ちゃん、月クン、方針は決まったなら、始めよう」

星夢の言葉に、全員はその場を後にすることになる。

 今回は隠密で目標を目指す。夢白配下の者達は屋敷に残り、俺、センラ、メイナ、星夢、焔ちゃん、夜さんの六人は二班に分かれ、別方向へ出発する。

 行動開始だ。







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