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狼狼狼狼狼狼狼狼狼娘  作者: 宵闇レイカ
四章 白い存在
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登場の白






 日芽の『親戚』とかいう人間の住所は俺も知っていた。建前上コッソリと彼女が教えてくれたものだ。緊急に備えてだろうが、まさに今がそうであった。

 ホテルからは五キロほど離れていたので、移動はタクシーを使う。…不幸にもタクシーが空いていなかったなら。

 結局市営のバスを使うことになった。その為メモした住所までは一キロほど歩くことになったのだった。

 そして、ホテルを出てから一時間弱の時間を経て。

「住所的にはここか?『人知れず家事に見舞われました』って感じだ…」

「ヒメの匂いがあるみたい。それとあと二人――」

会話しながら敷地に足を踏み入れて、それからその軽率な行動を呪った。

 ジャリっ……と、大粒の小石が敷き詰められた庭を踏む。それ自体に不自然が無かったからか、小石の意味することが頭から抜け落ちていたらしい。


―――ッパシュゥゥウッッ‼


「――ご主人っ⁉‼」

野生の勘というヤツだろうか、咄嗟に反応できなかった俺を庇うように、既にセンラは前へ踏み出ていた。

 強引に音を押さえつけられた弾丸は、ほぼ直線的に俺達の方へ突き進んだ。無論ロクに視認もできないわけだが。

「セン……ッ⁉」

ボロ…と、庇うように前へ出ていた少女の身体のカゲからちびた消しゴムほどの物体が落下した。

 この日常には何の関わりがあろうか。その直径一センチに満たない程度の筒は…、

「……『銃弾』か⁉」

「――えっ⁉なにが―」

センラの混乱を解く暇もなく、続いてくぐもった破裂音が響く。

 とても人間に反応できる速度ではない。仮に引き金を引く者の指を見ることができれば、格闘技なんかの達人は回避もできるらしいが。もちろん俺もセンラもそんな曲芸出来たものじゃない。

 弾丸は奥に見える古屋敷の上階から撃たれているらしい。これが硝煙のにおいとかいうやつか。

 拳銃から発射された弾丸がどれほどの精度で命中するのか分からないが、おおよそ俺との直線上にいるセンラの方へと吸い込まれていく。

「なっ…にが…⁉」

センラは必死に身を守ろうともがいて見えるが、俺の前から逃げ出す選択肢はないらしい。

 弾丸が命中する度、センラから薄く白い光が生まれ、そして弾丸のベクトルを消し去る。

 小石の敷き詰められた地面にはバラバラと金属弾が落ちてゆくが、状況は変わりようもない。センラの『防御』がどれほどもつのか分からないが、いずれのことジリ貧だろう。向こうも弾数は限られるだろうが、センラと残弾数、どちらがもつかを試すわけにもいかない。

 だから、こちらから進んでやる。その間センラに頼りきりになろうが、それでも俺は拳を強く握る。

「センラッ‼走れぇぇ‼‼」

視認ほぼ不可能の弾丸に怯えながらも、センラは一度だけこちらを見た後、わざわざ俺の手を取って走り出した。

 俺はややセコイながら、センラの後ろにくっ付いていくつもりだったが、センラはさらに気遣ってくれたのだろうか、離れることが無いようにか、手を取って走る。

「ご主人っ…どうすれば、いい……⁉」

センラの方が足が速いため、手を繋いだ状態だと、普通に俺が走るよりもずっと速く感じられた。あと五秒程度でドアまでたどり着く。

「っ。まずは――」

言いかけて、しかし伝えきることは叶わなかった。

 振り向くことも、声を上げることもできなかった。

 横合いから強引に加えられた不可逆のベクトルに――押される。

「――っ‼」

センラが気付いて何か口にしようとしたらしいが、そこまでしか捉えることができなかった。




 強く握られていた手が、剥がされる―――。




 その後に辛うじて分かったのは、比較しようもない程の速度で流れてゆく景色だけ。脚は地から離れ、そのまま重力の感覚が消える。

 飛ばされた先には、数十メートル級の谷底が待ち構えていた。







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