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狼狼狼狼狼狼狼狼狼娘  作者: 宵闇レイカ
四章 白い存在
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白、休憩中です










 ―――ヒメがいてくれなかったらどうなっていたことか。

「どうしてそうなるんだ…?」

部屋の扉を開けた後、状況に唖然として真っ先に扉を閉めた主人が言う。

「ううぅ…ぅん…」

あの後、蛇はさも懐くように私の尻尾へと巻き付いてきた。やわい弱点であり、その途端に動けなくなってしまったワケだが、ヒメが気付いてすぐに引きはがしてくれた。

 蛇は今も元気にもふもふを狙ってヒメの腕の中から抜け出そうともがいている。出来ればそのままでいて欲しい。別世界の奇襲を受けた私はしばらくこの『ソファ』の上から動けない。

「なんていうか。私も誘惑されそうな綺麗な毛並みよね」

そういうこと言うな。想像しただけで身震いしそうなのに。

 当たり前のように蛇を抱えたままのヒメが近付き、そのままやはり当たり前のように、私の尻尾を解こうと手を触れる。反射的にべしっと尻尾を(はた)き付ける。

 近付いたためか蛇は一層強く暴れていた。ヒメがそう言うのが伝わるのだろうか。そのままずっと拘束しておいてください。どうか。


 ご主人はヒメの座る『ソファ』の隣のものに座った。定位置だ。

「で、持ってきたけど…。僕の確認した限りではやっぱり『スズラン』っぽいな」

できれば私に確認してほしい、と付け加える。もちろん嫌だ。コチラはしばらく落ち着かせてほしいのだ。

 ところで『ソファ』の上に横になっている状態ではご主人の方まで視野が及ばないのだが、蛇はご主人には懐いていないようだ。飼われていたという話だったが、奇襲に使われたとも言っていた。そうだとすると人に懐きはしないのが正常なのかもしれない。

 取り敢えずはしばらく休ませてほしい。それからでもいいだろう。






 雁啼(カリナ)の時もそうだったか。

「確かにこのグラスから『スズラン』っぽい匂いがする。僕の鼻が間違ってたらそれまでだけど」

センラは二人掛けのソファ(定位置)にぐでーっとうつ伏せになりながら、肘掛けからはみ出た艶っぽい脚をバタつかせていた。血圧が上がって暑いのか、心なしか肌面積が増えている。

 真っ白の大きな尻尾は、少女のすらりとした体躯とソファの背凭れの隙間に潜り込ませてあった。イヌ科の尾は防寒にも使うというが、その本能的なクセなのだろうか。

「ナツキの『鼻』がどんなモノか知らないけど。私は、まぁ…、信用してる」

時折シルクのように滑らかなもふもふがうねる。これではコブラも誘惑されたのも納得できてしまいそうだ。

 ところで自宅アパートの部屋では尻尾の毛並みを解くようにせがんでくる彼女なわけだが。それはあれか。おっさんが美少女メイドに耳かきをせがむようなものなのか。この場合は性別が逆だが。

「うー…んあーー。なんか青臭い…あと酸っぱい匂いがする…」

相変わらずぐでーーっとしたまま、僅かに身をよじるだけしてセンラは呟いた。調子が悪いにしても、やはり狼は狼だ。変わった匂いがこの場にあれば気付くものか。

「この匂いで何の植物かわかるか?」

「ん…知らない匂いだと思う。でも危なそうなにおいがする」

そこまで言って、コテッと寝付いてしまった。とにかく寝てリセットしたがるその点は相変わらずである。……普段から部屋に放置している俺のせいかもしれないが。

 センラは『危ないにおい』だと言っていたが。野生の勘によるものか。されば毒性の植物と考えるのが妥当だ。

「へぇ。じゃあまー、なんでもありませんでした気のせいです。ってワケじゃなさそうね」

「とりあえず中身は慎重にコッチのボトルに移そう。持って帰る」

これで解決したとは言えない。少なくとも毒性がありそうだとわかったなら、それこそ命を狙われている可能性もあるのだから。

 ただ、こちらから何もできないのも確かである。手を出しても返り討ちに合うだけだろう。

 そうなれば、こちらは警戒しつつも到着までのあと一時間を待つしかない。それまではこの人の目のある個室を直接攻撃しに来たりはしないだろう。一応通気口はテープでふさぎ、代わりに窓を開けた。これで籠城準備はできた。











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