表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼狼狼狼狼狼狼狼狼娘  作者: 宵闇レイカ
二章 白い想い
13/61

日常の白













 時は、それからおよそ6日が経つことになる。


 ご主人からはこの間様々な常識を教わったし、ご主人やヒメによる、私の『研究』も進んでいた。おもに、変身についてだった。

 私が狼形態から人の形態へ、または人形態から狼形態へ変身するとき、ご主人曰く「『魔法』のようだってのが正直な意見だな」とのことだ。つまり、ご主人やヒメの知る限りでは、解明不可能な特性らしい。

 また、これは有能な能力でもある。

 例えば、私が名前をもらった次の日、実際に形態を使い分けて、それぞれの特性をフルに活かせるようにすれば、人間にも狼にもできないことが可能だと判った。食材探しもそうである。

 また、私は自分でも狼と人間を行き来して実験していたが、私は『中間』にはなれないことが解った。人型の時の耳と尻尾は別だが。

 それはつまり、私にはおおよそ二形態しかないということだ。それぞれがそれぞれの特徴を持っているので、うまく活用していきたい。

 それからそれから、ご主人は私で面白い実験をしてきた。


 内容は、『変身によって体表の汚れはどうなるのか』というものだ。

 二日目の夜、ご主人は、私に「風呂入るか?」と訊いてきた。それはご主人からしてみれば、ほんの大したことはないレベルの質問だったのだろう。だが、私の「器具の使い方が判らないから一緒に入って。」の言葉で質問の価値は大きく変動したらしい。

 ご主人は「断る。」と即答した。その前にもご主人が言っていたが、女性が(男性も一応含む)一糸纏わぬ姿でいるのはマズイことなのらしい。結構念を押してそう言われた。

 そこでご主人は提案した。

 棚に置かれていた筆記用具立てから一本の『ペン』を取り出し、私の両手両足、肩、膝、頬、腹部に簡単な印をつけた。

 それから、私にその場で狼化するように言った。

 その意味は解らなかったが、私は言われるがままに狼化し、それから、再度人化するように言われた。ご主人からの追加指示で、服を持って洗面所で着替えてから出てくるように、と。

 面倒くさくはあったが、それでも言われたとおりにそうした。別に何か断るワケも無かったからだ。

 そうして、私が洗面所から出てくるなり、ご主人は「お?」とだけ反応を見せた。私が座るのを待って、それから『印』のチェックを始めた。それぞれ手足、肩、膝、頬、お腹の約10ヶ所である。

 結果としては、印はすべて消えていた。跡形もなくスッキリと消えていた。

 ご主人が言うには、「油性ペンの印が消えたってことは、大体の汚れは変身で消えるっぽい」らしい。それはつまり、私とご主人がさっきまで話していた、おフロの問題は変身するだけで解決できるということなのだとか。

 それでも、後日ヒメにおフロ設備の使い方を実践的に教えてもらった。

 私の思っていた通り、前にご主人が置いていた紙には書いてないこともたくさんあった。ヒメが居て助かったというところか。ご主人が教えてくれてもよかったのに、彼は頑なにそうしなかった。薄情な人である。


 他には、『洗濯機』の使い方と洗濯の仕方、簡単な料理と、とくにお米の炊き方なんかを教わった。ある程度は一人で生活できるように教えてくれたらしい。まあ、ご主人が居るのでそんな必要は無いと思うけど。

 ご主人と初めて出会ってから4日経った頃、私はご主人のお母さんに会いに行った。正確には『お義母(かあ)さん』らしい。ご主人も私に似た境遇なのか、『拾われた』と言っていた。

 ご主人のお義母さん――深世(ふかよ)さんは無口で簡潔なしゃべり方の女性だった。けど、そうであって概ね私の事は理解してくれたようだった。

 管理人室と称されている一軒家から出る際、「困ったら相談に来いな。」と言ってくれた。私の様以上に深世さんは優しいのでは、と思った瞬間だった。






 そうして6日が経ち、ほとんど慣れてしまった6回目の独りを満喫していた。

 この部屋の生活にも慣れてきたし、ご主人とヒメのお蔭でほとんどの器機は使うことならできるようになった。なので、結構豊かな環境で生活できるのだ。

 それこそ、ご主人が使うものは大体使い方を教えてもらっている。なので、覚えている限りなら使うことができるわけだ。ちゃんと危険を伴う物は分けて教えてもらっているし、そもそも危険そうなものや、使い方をよく覚えていないものは使わないようにしている。

 ちなみに、この部屋のものをある程度使えるようになったとはいえ、それで暇を消化しきれるわけではない。

 とくに、そもそも娯楽に繋がるような器機はそんなにない。娯楽といえば、数百冊の聖典(マンガ)くらいか。時間的に見れば、これだけの本を読み切るには時間が不足過ぎるくらいかもしれない。実際、私が読み切ったもので、漫画が70冊くらいと小説が2冊だけだ。

 そもそも、一日中読書で過ごすのは、相当な読書好きでなければ難しいことである。2~3時間読み続けるだけで疲れてしまうし、『読むこと』自体に飽きてしまう。

 殆どの日は、昼から3時間くらいはずっと寝ていた。

 読書についてはそれほど好きではないし、この家にはそれくらいしか暇つぶしのネタが無い。なので、昼頃にだいたい暇をもてあましてしまう私は、ある種の最終手段である『昼寝』のカードをキるのだった。

 昼寝の際は狼形態である。

 過去の私がどうしていたのか判らないが、寝るときは狼形態が一番心地よいのである。人形態で寝るのを窮屈に感じるのは、恐らく衣服を着たままであることに関係する。だから、そうでない狼形態が休息をとるのに適しているのだ。

 ただ、狼形態で完全に熟睡してしまうと、5時間ほどで人形態に成ってしまう。ご主人はどういう理屈なのか判らないと言っていたが、多分、寝言とか寝返りに近いものだと思う。

 その為、普段夜寝るときは、ご主人から強く言われて人形態で寝るようにしている。だが、昼間はご主人が居ないので、もし寝ている間に人化してしまっても、それから目が醒めてちゃんと服を着れば大丈夫なのである。

 その、いつもの日常であった。私は、今日もいつものように昼寝から醒め、時計を見れば16時を回っているくらいだった。

 ご主人が帰宅するだいたいの時間帯は17時から17時30分くらいである。

 今から一時間くらい経った頃になるか。今日はいつもよりも昼寝に入る時間が遅かったうえ、少し長く寝てしまったようだ。でも、それに物申す人は誰もいないのだ。幸せ…なのかな?


 だが、それから四時間が経っても、ご主人は帰ってこなかった。


 きっと何かの用で遅くなっているのだろう。と、自分を納得させることしかできない。

 何かの用(、、、、)が卑怯な程つかみどころのない言葉であることを、私は自覚していなかった。無意識のうちに、強引に取り繕った理由で済ませていただけだ。

 ただ愛しいご主人の帰りが待ち遠しかっただけなのかもしれない。それだけの些細な理由の元に、そんな思考が組みあがったのだろうか。

 ご主人の身を案じる要素など、その時、何処にも、無かった。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ