迷い
その後は昼寝したり雑談したりゲームしたりしているうちに夕方になった
「もうこんな時間になっちゃった、私そろそろ帰るね?」
「あ、うん、今日は送っていくよ」
「いやいや、大丈夫大丈夫!」
「さすがに昨日送れなかったし今日くらいは送らせてよ」
「いいってば!」
「いや、でも…」
「いいって言ってるでしょ!じゃあね!」
急に怒りだして帰ってしまった…
いつもの俺ならこのまま帰ってメールをするだろう
しかし、今日は違った
好奇心と疑惑が交差する頭の中
俺はつけてみることにした
一旦家に入り、少しだけ時間をおいて家を出る
既に未来はいなかったが曲がった場所はわかっているのですぐ追いかけた
もう少しで母校とは違う中学校にまで来る、俺の母校は家から5分弱だがこの中学は20分くらいのところにあった
しかし何で未来がこんな所に…というか隣町とは反対方向だぞ…
すると未来が立ち止まりケータイを取り出した
誰かに電話をしているようだった
俺は気づかれないように曲がり角に身を隠した
辺りは静かだったので耳をすませば会話が聞こえてきた
「もしもし?冬吾?今終わったとこ、うん、うん、わかった、待ってるね」
とうごって誰だ…少なくとも知り合いにそんなやつはいない
「お待たせ未来、もう終わったの?」
俺が夢で見た男とよく似ていた
いや、これはまた夢を見ているのかもしれない
身長は俺と同じくらいか、少し大きいくらいだった
「うん、今日は塾にも早退するって言ってあったしね」
……未来が何を言っているのかわからなかった
さっきまで俺の家に居たのに塾…?俺の家は塾だったのか…?
そんな冗談を言っている場合ではない
「冬吾、ん」
未来が口を突き出している、よく見た光景だ
男は何も言わずにそのままキスをする
「じゃあ行こうか」
「うんっ」
2人は手を繋ぎ歩き出す、幸い俺がいる場所とは反対に歩いていったのでバレることはなさそうだったが
もう追いかける気力はなかった
この目で見てようやく思い知らされた
未来は浮気している
帰り道の気分は最悪だった
ひたすら先ほどの光景が頭の中で流れ続ける
もう少しで家につくころ
「あれ?春樹じゃん」
「ん?湊太か、なんでこんな所に」
「ああ、ちょっとな」
なんだか湊太に会うのが久しぶりな気がした
「お前今暇?」
「まあ帰り道だったし家帰っても特にやることは…」
「ゆし、公園行くぞ」
湊太の優しさに泣きそうになった
公園についてからは遊具で遊び続けた
自然と心の霞が晴れていった
遊び疲れてベンチに座った
湊太にならさっきの事を言ってもいいと思った
「実はさ、未来と付き合えたんだよ」
「ああ、岸谷さんか」
「でさ、さっき送ろうと思ったんだけどずっと断るからあとつけてみたの」
「何それ、ストーカーだな」
笑いながら湊太に言われる
よく考えればやってることはストーカーと一緒だ
「うるせえよ、それでつけていったら知らない男に会ってキスしてたんだよ、これ浮気だよな」
「おう…まじか…それは浮気だな、身内でキスとかありえないしな」
「で、今その帰り道ってわけだ」
「なるほどな、春樹はどうしたいわけ?」
どうしたい…その場のことで頭がいっぱいでそんなこと考えてなかった…
付き合う前は浮気されたら別れる、当然だと思っていたけど今は…
「別れたくない…」
初めてこんなに人を好きになれたし自分でも信じられないくらい依存してることに気付いた
「春樹がそれでいいならいいんだけどさ、この先辛いと思うぞ、見えない影に怯えて付き合うってそのうち精神やられるぞ」
湊太の言う通りだった
いくら好きでも浮気がわかっていて付き合うのは…でも忘れられるわけがない…
「好きなのもわかるし忘れられないのもわかる、けどお前の友達として助言をすると、岸谷さんとは別れろ、その程度の奴だったって思えば少しは楽になると思うぞ」
そう言われて、心の中で未来を悪く思ってみた
浮気はするし軽いし我が儘だし突然家にくるし…
けど優しくて可愛くて何より……
そんなこと出来るはずなかった、泣きながらうずくまった
その背中を何も言わず湊太が撫で続けてくれた
こいつと友達になって本当に良かった
「辛いけど、好きだけど別れてみる」
まだ迷っていたけどこのままでは自分が潰れるだけだ
「よし、よく言った春樹!別れた時は俺と司で煽りまくってやるから覚悟しておけよ!」
「なんだよそれ…ありがとな」
その後は司を呼び3人で遅くまで遊んだ
未来と別れるのは悲しいけど、きっとお互いのためだ
俺はその夜にメールを書くことにした