メール
「よーし、今日はここまでだ、帰っていいぞ」
「やっと終わった…」
自己紹介の後に掃除をさせられて今に至るわけだが
「お疲れ春樹、担任に目つけられるとはとんだ災難だな」
「災難とかいうなよ、むしろ光栄だと思っとけよ」
自己紹介で色々やらかした俺は先生のお気に入り(笑)になって掃除の時間に雑用係にされてしまった
「お前ら…他人事だと思って…!」
「まあまあ、怒んなって、確かにインパクトはあったけど」
「司の真似なんかするから…」
「普通が1番なんだよ、奏汰」
あの後奏汰も自己紹介したが
「えー、出席番号20番、松原奏汰です、趣味はギター、よろしく」
という普通の自己紹介だったはずだが
「カッコよくない?あの人」
「わかる、私一目惚れしちゃった」
などと2日目にしてファンが出来たようだ
イケメン死すべし
「まいいや、雑用も終わったんだろ?帰ろうぜ」
「帰ろ帰ろー」
学校を出て少し歩いていると前の方に未来がいた
「でさーあのシーンなんだけど…って春樹?」
「えっ、あ、何?」
「お前最近こういうこと多いぞ、前に誰かいるのか?って岸谷さんじゃん、司見てこいよ」
「やめろやめろやめろ行くな馬鹿司」
「はあ?誰が馬鹿司だよ!おい!」
「これだからチキンは、全く」
「うっせ、黙っとけ」
なかなか未来が曲がらない、というか通学路ほとんど同じじゃないかこれ
こんな運命的な事があっていいのか
神様ありがとう、ありがとう
「てかさ、春樹さっき岸谷さんと話してたよな?何話してたのさ」
「まじ?詳しく聞かせろよ」
「いや、別に、自己紹介の話してただけだけど」
「絶対嘘だな、目が泳ぎすぎだぞ」
「嘘じゃねえよ、また明日な」
今日は事情聴取される前に家についた、助かったぞマイハウス
部屋に戻って一息つこうとカバンを開けて整理しようとしたときに違和感に気づいた
「手紙…?何だこれいつのまに…」
開いてみると…
Dear 黒瀬くん
どうも!未来です、いきなりごめんね
もっと黒瀬くんのこと知りたいなって思ったから自己紹介してる時にこっそり入れちゃった
アドレス書いてあるから良かったらメールください
from 岸谷未来
突然の出来事に気持ちの整理が追いつかず5回も読み直してしまった
「ど、どうしよう、とりあえずメールしてみるか」
ケータイを持つ手が震え、何度もアドレスを間違えたが何とか入力し終わった
「なんて送ればいいんだろ…手紙見たってこと書いておかないとな」
件名:黒瀬です
本文:手紙ありがとう(´ω`)
未来であってるかな?
こんな感じでいいのだろうか…メールなんだしダラダラ書いても仕方ないもんな…
「よし、送るぞ」
-----送信が完了されました-----
メールを送信してから約10分経つ
返事が気になりすぎて何度も部屋をウロウロしてしまう
「まさかアドレス間違えたんじゃ!?まずいぞ」
確認しようとした時
-----新着メールを受信しました-----
驚いてケータイを落としてしまった
手が震えながら拾い上げメールを開く
件名:未来です!
本文:春くんありがと(^^)あってるよ(笑)
今日後ろ歩いてたよね?通学路一緒みたいだね!
「あれ気付いてたのか…そりゃあれだけ騒いでたら普通気付くか」
件名:Re
本文:よかったよかった(´ω`)
あ、気付いてたんだね(笑)そうみたいだね、これなら学校一緒に行けるね!なんて(笑)
-----送信が完了しました-----
冗談のつもりで言ったけどあわよくば…
とか思ってたら
「春ーご飯だよー」
色々考えていたらもう19時を過ぎていた
リビングに行きご飯を食べ始めると
「春ちゃん学校はどう?」
「どうって、普通だけど」
「普通って何よ、可愛い子とかいなかったの?」
「んー…別に」
「あ、いたんだ、何かあったらお姉ちゃんにいつでも相談してもいいからね〜」
俺の家は母親と姉と父親の4人暮らし
父親は家にいたりいなかったり、居ても特に話すことないんだけど
姉は2つ上で高校3年生、正直弟の目から見ても可愛いと思う
学校は別だが優しくて学校ではかなりの人気者らしい
「はいはい、わかりましたよ」
「あ、何だそれ、頼る気ないなー?」
「気が向いたらね」
そう言ってさっさと部屋に戻り風呂に入る準備をした
ふとケータイを見るとまだ返事は来ていなかった
俺が送信してから1時間半は経っている
少し不安になった
風呂に入り湯船に浸かっていたがメールのことが頭から離れなかった
「まずいこと言っちゃったかな…そりゃ会って二日目のやつに一緒に登校しようとか言われたら気持ち悪いよな…てか彼氏とかいるのかな、いたらかなりまずいよな…あー…」
風呂から出て髪を乾かし歯磨きをして部屋に戻り、すぐにケータイを確認すると
-----1件の新着メール-----
心臓が大きく跳ねた、恐る恐る内容を見る
件名:ごめん!
本文:遅くなってごめんね!家のことでバタバタしちゃって返すの遅くなっちゃった><
そうだね!明日一緒に登校しちゃう?
(笑)
「やったあああ」
モノは試しにだな、うんうん
ガッツポーズをして喜びを噛み締めた
神様本当にありがとう
件名:大丈夫だよ(´ω`)
本文:無理して返事しなくても大丈夫だよ
いいね、じゃあ明日8時に橋の前の猫の像前でいいかな?
-----送信が完了しました-----
通学路には1つの橋がある
橋の前に猫の像があってよく待ち合わせなどに使われる
昔はこの橋の下の川で司と奏汰とよく釣りとか泳いだりしたものだ
----新着メールを受信しました-----
件名:ありがと!
本文:春くん優しいね(^^)
わかった!私ちょっとやる事あるから
また明日ね、おやすみ春くん(∗•ω•∗)
まさか未来からおやすみって言われる日が来るとは…
何気ないメールだけど彼女とか出来たことない俺には新鮮で嬉しくて
ますます好きになってしまった
「俺みたいなやつが悪い人に引っかかるんだろうなぁ…あはは…」
件名:Re
本文:別に普通だよ(笑)
わかった、おやすみ未来
-----送信が完了しました-----
時計を見ると22時を回っていた
「今日くらい早寝してもいいかな」
電気を消し布団に入り寝ようとしたところスマホが鳴った
着信中:汐里
「もしもし」
「あ、春ちゃん?あの子と進展あったー?」
「あったあった、メアド交換してもらった」
「ほんとに!?よかったじゃん!春ちゃんも男になってきたねぇ」
「あ、いや、あっちから教えてくれたんだけど…」
「…やっぱり春ちゃんは春ちゃんだった」
「うるせえよ、明日一緒に登校する事になったんだ、これは俺から誘ったんだぞ」
「えっ…あ…そう…なんだ、やるじゃん!」
「おうよ、頑張るから応援よろしくな」
「う、うん、任せてよ!遅くにごめんね、おやすみ」
「うん、おやすみ」
途中から汐里の様子がおかしかったのは気のせいだろうか
その時はあまり深く考えず気のせいという事にして眠りについた