春の決断
それから俺と汐里はその場で解散した
帰り道に今後のことを考える
現時点では汐里とも未来とも付き合っていることになっている
汐里の返答次第ではそれも変わってしまうわけだが...
一番引きずっているのはどちらにも浮気をされているということだ
どっちも全く信用できないわけではないけど今後付き合っていくとなると複雑なところだ
よく考えて自分はどちらが好きなのか
汐里と付き合っても恐らくもう1人の男が絶対に壁になるだろう
実際元から付き合っていたのは俺だし後から来たほうが有利というか何というか
未来は過去に浮気したけど今はちゃんと見てくれている
またする可能性もあったけど未来の目は真剣だったしそれはないだろう
家に着くと姉はまだ起きていた
「あら、春ちゃんおかえり」
「ただいま」
「どうしたの?浮かない顔して」
どうやら顔に出ていたようだ
「いや、何でもないよ、もう遅いんだし早く寝なよ」
「そう?なんかあったらいつでも言ってね、おやすみ」
眠いなら寝ればいいのに...
けど心配して起きていてくれる
いい姉を持ったと心から思った
部屋に戻った頃にはもう23時を回っていた
明日、放課後に二人を呼び出して話し合おう
本心ならこんなことしたくないし出来るなら平和に済ませたい
片方を選んだら片方は傷ついてしまうだろう
汐里が俺じゃなくてもう一人を選んでくれる
それが一番平和に終わる、はず
少し寂しい気もするが仕方がない
決心も出来た、覚悟も出来てる
人を傷つけるくらいなら自分が、と思っていたが少しはワガママになってもいいと思った
散々振り回されたしこれくらいなら許してもらえるだろう
もう一度明日のことを再確認した
心が痛んだ、恐らくこれからも当分痛むだろう
それも時間が何とかしてくれる
そう信じて眠りについた
久しぶりに桜の並木道を歩いている夢を見た
どう考えても季節外れなそれは相変わらず綺麗だった
以前は手を繋いでいたこの道
隣には未来と汐里はいたけど手は繋いでいなかった
風の音だけが聞こえる並木道
3人とも黙って歩いていた
突然不安になった
理由はわからない、心当たりもない
それは次第に増していき堪えきれず、振り切るように走りだしたところで目が覚めた
寝起きはやけに落ち着いていた
時計を見ると6時
二度寝をするにも今日起きることを思い出し寝れそうにもなかったのでリビングにいって
先に用意をすることにした
たまには自分で朝食を作るのも悪くないだろう
なるべく考え事はしないようにした
俺の意思はびっくりするくらい弱い
少し考え込むとすぐに決心が歪んでしまう
登校の時間まではかなり時間があったしテレビを見たりゲームしたりして時間を潰した
いつのまにか8時になっていた
支度は整っていたので慌てることも無く家を出る
あの桜の並木道はすっかり枯れて寂しくなったけどあと何ヶ月かすればまた綺麗に咲くだろう
その時、自分の隣には誰がいるんだろう
考えないつもりがやはり歩いているだけだとどうしても何かが頭をよぎってしまう
他のことを考えようにも今は特にハマっているものも無く
イベントは文化祭だけだ
何もしていないと考えないほうが難しいくらいだった
考えないことは諦め、なるべく深くならないようにだけは気をつけた
そうしているうちに学校に着く
未来はまだ来ていないようだ
汐里のクラスに向かう途中、例の男と出会った
目が合ったが自分からは何かいうつもりは無かった
しかし、相手はそうでもなかったようだ
「お前だろ、汐里ちゃんほったらかしにしてる彼氏は」
「...何の話だよ」
「お前、見るからに草食だよな、そりゃ女が離れて行くのも無理ないわ」
笑いながら去ろうとする男
「おい」
「あ?」
「言っておくがまだ汐里はお前を選んだわけじゃない、迷ってる、随分勝った気でいるようだけど
すぐにお前にいかないってことはそういうことなんだろうなぁ?」
「負け犬の遠吠えか?見苦しいぞ」
久しぶりにこんな喧嘩腰で話した
小学生以来だろうか
「見苦しいのはどっちだ、どの結果になっても恨むんじゃねえぞ」
そう吐き捨て汐里の教室に向かう
汐里は既に登校しているようだった
「汐里、ちょっときて」
「春ちゃん...どうしたの?」
「今日の放課後、中庭来て」
「放課後...わかった」
今すぐにでも結果を聞きたかったけど我慢した
今聞いたら意味がないんだ
教室に戻ると未来も登校していた
既に作業を始めていた
「未来、ちょっといい?」
「春くんおはよ、何?」
「放課後、中庭来てくれる?」
「うん、わかった」
未来が少しだけ笑ったような気がした
確認する前にもう作業に戻ってしまった
約束は数時間後
時間があるとは言え緊張してくるものだ
けどこれは避けられない出来事で逃げることも出来ない
緊張や不安をかき消すために俺も作業に入った