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春と未来  作者: くろ
17/19

三つの思い

未来の家で様々なことを話した


「何で浮気なんかしてたの?」


「あの人はね、ずっと付きまとってくる人でさ、ある日揺らいじゃって...」


「そっか...」


「でもね、束縛とか強くてさ、あの時したことは本当にごめんなさい」


「もう何ヶ月も前の話だし別に気にしてないからいいよ」


「ありがとう、あんなに好いてくれてたのに...間違いだった」


「いいって、というか汐里のことなんだけど、たまたま見たの?」


「うーん、半分そうなんだけど、半分は違う」


「ん?どういうこと?」


「私が出かけてるときにね、偶然汐里ちゃんを見つけたの、それからこっそりついて行ったら

見ちゃったって感じかな」


本当に偶然なのかは少し気になったが今はどうでもよかった

他にも聞きたいことがあったけど何故か罪悪感が沸いてきて聞くことができなかった


「ねえ春くん、どうするの?」


「どうするって...」


考えていなかった

汐里とはまだ別れていない、しかし未来とは付き合っている

このままでは絶対にいけないのはわかっていた

けど、汐里と話しをする気にはならなかった


「春くんの好きなようにするといいよ」


未来からしたら別れてほしいはずなのにそれを催促しない

彼女なりにも罪悪感があるのだろうか


「今はまだ保留でもいいかな、明後日には必ず結論だすから」


「うん、わかった、待ってるね」


「じゃあちょっとやることもあるし帰るわ」


そういい未来の家を出る

未来は止めることもなく笑顔で見送ってくれた

ケータイの電源がいつのまにか切れていたのでつけてみると

着信とメールが大量に来ていた


家にはすぐついたので部屋に戻り大量のメールを眺めていると汐里から電話がかかってきた

出ようか迷ったが出てみることにした


「もしもし?」


「春ちゃん...あの...」


「何?」


「ごめんなさい、聞いてほしいの、今から会えませんか」


「ごめん、今はちょっと厳しいんだ、後でもいいかな」


「...わかった、何時頃?」


「21時くらい、大丈夫?」


「うん、じゃあ21時に」


どうしても今会う気にはなれなかった

一度気持ちをリセットしようと思いベッドに横になる

会ったときに何を言われるんだろう

どっちにしろ静かに終わってはくれないだろう

そう考えていたら自然と眠りについていた



起きたときには20時だった

約束の時間までは1時間もあるし大丈夫だろう

夕飯を食べにリビングに降りる


「あ、春ちゃん、さっき汐里ちゃん来てたけど」


「ああ、あとで会ってくる」


「わかった、あまり遅くならないようにね」


「姉ちゃんも早く寝ろよ」


「はいはい、わかってますよ」


ご飯を食べながら話しの内容を考えた

一回疑うとなかなか信じることはできない

かなり冷めてしまっている自分がいた


それは未来にも言えることだけど時間と現状の関係で

気にしていなかった


つくづく自分は単純だな、と


夕飯も食べ終わり部屋で支度をする

約束まであと30分

緊張してきた

少し早く出て気持ちを落ち着けようと思い

家を出ると汐里がいた


「...なにしてんの」


「あ、いや、待ちきれなくて」


思わず笑ってしまった

汐里も顔色を伺いながら苦笑いする


「じゃあ行こうか」


並んで公園に向かう

その手は繋がっていなかった


無言で歩くいつもの道はいつもより寂しい気がした

公園にはいつも通り誰もおらず座りなれたベンチに座る


「春ちゃん、あれは違うの」


座ったと同時に汐里が切り出す

その目は真剣だが少し涙がたまっていた


「あれってどれ、何の話?」


俺が中庭で起きたことを見たのは知らないはず


「え...?」


「いや、だから何の話?って」


「...」


汐里はバツが悪そうに俯く

その顔を見たときなんともいえない気持ちがこみ上げてきた

気持ちのいい気分ではなかった


「まあいいよ、中庭のことは見たよ」


そう言っても汐里は顔をあげなかった


「なあ汐里、どうしたい?」


「別れたくないに決まってるじゃん...」


「じゃああいつはどうするの、汐里のこと好きなんでしょ?」


汐里は俯いたまま何かを言おうとしていた

けど、声だけが奪われたように口だけが動いていた


「汐里はあいつのこと好きなの?」


「それは...!」


急いで撤回しようと顔をあげるがすぐに俯いてしまった


「そっか」


その瞬間、心が空っぽになったような気がした


「汐里はどっちが好きなの?」


汐里は答えようとしない

嘘でもいいから何かいってほしかった

じゃないと俺が潰れそうだった


「...ん」


「え?」


「ごめん...今は...選べない...」


唖然としてしまった

今度は自分が何も言えなくなってしまった


「で、でも春ちゃん、待っててほしいの、明日には必ず結論出すから...」


「わかった」


考えるより先に口から出て行ってしまった


どうしてこんなことになってしまったんだろう

自分の不甲斐なさを恨んだ

自分の臆病さを恨んだ


次に活かせる自信もなかった

それ以上に次があるのかもわからなかった

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