接近
眠りについたと思ったら10分ほどで目が覚めた
頭が割れるほどの頭痛だった、冷や汗が止まらないうえに目が完全に覚めてしまった
その時は大丈夫だろうと思い汐里に先ほどの感謝の電話をすることにした
幸い、すぐに出てくれた
「もしもし、さっきはありがとな」
「あ、ううん、春ちゃんから電話してくるなんて珍しいね」
「ちょっと寝付けなく…」
咳のせいで話しづらいうえに座ってるのも少し辛くなってきた
「ちょっと、春ちゃん大丈夫?風邪引いたんじゃないの?」
「これくらい平気…」
咳こみながら答える
「熱は?薬飲んだの?」
汐里が不安そうに聞く、心配されるのは少しくすぐったかった
「大丈夫大丈夫、大丈夫だから」
「あ、春ちゃんちょっと待ってね」
すると電話が保留になった
なんだろう、急用だろうか?こんな時間に?
時計を見ると23時
ぼーっとしながら待っていると通話が切れた
なんだったんだろう…?
「まあいいか…」
二度寝を試みようとした途端、部屋のドアが開く
「ごめん、心配で来ちゃった」
寝巻き姿の汐里がたっていた
「え…何で?どうやって入った?」
「お母様に電話したの、この時間はお母様の好きなドラマやってるし起きてるだろうなって、それで入れてもらった」
俺より俺の母親のことを知っている…さすが幼馴染み…?
「ほら、お薬と体温計、先熱はかって」
そう言われて体温計を受け取る、手はかなり冷たかった
「わざわざごめんな」
「ううん、あたしも寝付けなかったからいいの」
不意に汐里の手を握ってみる
冷たくて気持ち良い…
汐里は一瞬驚いた後照れながら握り返してくれた
すると体温計がなった
………39度だった
「まずいね…これ多分朝までには治らないよね…ちょっとまってて」
慌てて汐里が部屋を出ていく
それを最後に俺の意識は途切れてしまった…
目が覚めて時計を見ると4時半だった
こんな時間に起きたのは初めてだ
汐里はもう帰っただろうか体を起こすと
「うーん…春ちゃん寒いよ…」
何故か隣で汐里が寝ていた
「え!?なにしてんの!?」
「んー…お母様がせっかくだし一緒に寝ちゃいなって…今日あたしも休みとったからゆっくり寝るんだよ…」
そういうとそのまま寝てしまった
母親め…一応これでも年頃の男女2人だぞ…てかあたしもって…お前も休むのかよ
…
やれやれと思いつつも額から落ちたタオルを見てきっと遅くまで看病してくれたんだと思った
頭を撫でると幸せそうな顔をした汐里
「もう一眠りするか…」
布団入り横になると汐里が抱き付いてきた
その時に未来との思い出が頭をよぎった
普段ならこれくらい堪えられるはずなのに涙が止まらなかった
バレないように声を抑えたが
「春ちゃん?泣いてるの?」
あっさりバレてた
「ごめん…未来にも同じことされたから思い出しちゃって…」
「そっかそっか、でもここにいるのは未来ちゃんじゃなくて、汐里だよ」
わかってるけど止まらなかった
安心したいがために寝返って汐里を抱き締める
自分が何をしているのかわかってたけど知らないふりをした
次第に泣き疲れて眠りについてしまった
また桜の並木道を歩いている夢を見た
今度は未来が居ないけど隣には汐里がいた
何故か寂しくなかった
少し歩いていると前から未来が走ってくる
そして俺の前で立ち止まりこういった
「ごめんなさい、ありがとう」
どういう意味なのか全く理解できないまま、未来は通り過ぎて走って行ってしまった
振り返って見送ると
あの男の人と手を繋いでいた
やっぱり未来は幸せそうな顔をしていた
アラームが鳴り目を開ける、しかし体が重くて起こすことができなかった
隣で汐里も目を覚ます
「ん、おはよ春ちゃん、具合はどう?」
「起きれないくらいには悪いかな」
「最悪じゃん…ちょっと待ってて」
部屋を出ていき下で話し声が聞こえる
母親と話しているのだろうか
ケータイを見るとメールが帰ってきていなかった、心に何かが刺さる
「春ちゃんお待たせ、ちゃんと寝てなきゃダメでしょ」
お粥を持ってきてくれたようだ
「辛いかもしれないけどちゃん食べないと悪化しちゃうからね」
「食欲ないんだけどな…仕方ない…」
スプーンを取ろうとすると
「病人はそんなことしなくていいです、あたしが食べさせてあげるから」
「この歳にもなってそんな事しなくてもいいよ…自分で食える」
「いいから黙って食べる!はい!」
…恥ずかしさで余計熱が上がるんじゃないかと思った
食べ終わるまでは生きた心地がしなかった
「よし、よく食べ切ったね!偉いぞ、タオル持ってくるね」
風邪のせいで全く抵抗ができない
ここまで辛いものだとは…
「ただいま、はい病人はすぐ寝る!」
「帰ってくるの早い…ういうい」
横にさせられタオルをかけられる
体温が下げられる感覚がとてもきもちよかった
「着替えるから一旦家戻るね、また来るから」
「わかった」
汐里が部屋を出た後にちょうどよく眠気が来た
「やることも無いしもう一眠りしますか」
最後にケータイを確認する
まだ来てなかった
恐らく学校が終わる頃には…
そう期待した