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第2話 異変

2話目です

翌日ヴェンはいつも通りに起床し、いつも通りに食事をし、いつも通りに畑に向かった。

籠を背負って片方の手に鎌を持ち、麦を刈り取っていく。

昨日刈り取れなかった分を全て刈り終え、背中の籠に入れる。

仕事が終わったので畑から出ると、そこに一人の男性の老人が立っていた。


「あっ! シリウスおじいちゃん!」

「おやおや、ヴェン。終わったのかい?」


シリウスと呼ばれた老人はヴェンの頭を優しく撫でる。

彼はヴェンの祖父の様な存在で、ヴェンやその両親とは血が繋がってないが小さい頃から面倒を見ていたので懐かれている。


「どうしたの?」

シリウスは滅多に外に出ない。あまり動くと体に悪いからだ。わざわざここに来たのには何か用事があるのだろう。


「いやいや、ちょっと頼みごとがあってね」

シリウスはそう言うとポケットから紙を取り出す。

紙には何か植物の絵が描かれており、その隣には『癒治草』と書かれている。


「山の中に川があるじゃろ? その近くにコレが生えているんじゃが取って来てもらえんか?」

山の中の川とは昨日ルルと遊んだ川だ。


「んー、いいよ。分かった!」

まだ昼までは時間があるし仕事も終わった。取りに行く時間は充分にある。

ヴェンはシリウスから紙を受け取り、背負っていた籠を下ろし山の中へと入っていった。





川に着くと早速紙に書かれている『癒治草』を探す。


「あっ、あった」

『癒治草』はてっぺんに黄色い花が咲いており、黄緑の草が花を覆うような形をしている。

タンポポの葉っぱが蕾の様に花を覆っている、と言えば分かるだろうか

途中から千切れないように丁寧に根っこから引っこ抜く。


「よしっ、次」

他にないか周りを探すが中々見つからない。


「むぅ、もっと上に行かないと無いのかな」

あまり奥に入り過ぎると危険だが気をつければいい、と考え、ヴェンは上流の方向へ山を登った。





「ふう、こんぐらいでいいかな」

額の汗を袖で拭う。土で汚れた両手には沢山の『癒治草』

川で手を洗い帰ろうかとしたその時、ゴロゴロと雷が鳴り始めポツリポツリと雨が降ってきた。


「あー、これは急いで帰らないとマズイなぁ」

今ヴェンがいる場所は少し川の流れが速い。雨が降ったら川が溢れたり地面が滑りやすくなったりで危ないだろう。

ヴェンは大降りになる前に帰るため、急いで村の帰路についた。




「はぁはぁはぁ、もう少し」

雨が降るなか全力疾走してきたせいで息があがる。

だが村まであと少しという所で不意に話し声が聞こえ、不思議に思ったヴェンは走る速度を緩め、確認の為に声のする方へ向かう。


「おい、急がないとがられるぞ」

「わかってるわかってる」

男の声だ。場所は昨日ルルと遊んだ場所。

聞き覚えの無い声音だったのでヴェンは茂みに身を潜め、男達の様子を見る。

だが、男達の身なりを見た瞬間ヴェンは背筋が凍るのを感じた。

騎士が胸元で剣を掲げている絵が描かれた旗を腰にさし、全身を鎧で覆っている。腰には両刃の剣。

(あの紋章……ヴィラウーツ帝国!?)

レイス村はローレンス王国の最南端にある。ヴィラウーツ帝国はその更に南にあり、実力主義の国だ。

何故そのヴィラウーツ帝国の兵士がここにいるのか……


「おい、マジで急いがねぇと隊列から遅れるだろうが」

「別にいいだろ? どうせレイス村はすぐそこなんだからよ」

「そういうわけじゃねぇよ……」

片方の男が呆れ、もう片方の男がヘラヘラと笑っている。

その後も笑い話をしている兵士だが、ヴェンには全く聞こえていなかった。

(今レイス村って……嘘……まさかっ!?)

嫌な予感が体を駆け巡る。

ヴェンは今すぐ村に戻るため立ち上がる。

だがその時バキッと足下の小枝が折れ、兵士に気づかれた。


「なんだっ!? そこに誰か居るのか!?」

兵士がバッとヴェンがいる茂みを見る。

そこには白髪の少年


「へっ、んだよ……ガキか。脅かせんなよな」

「おい待て、コイツまさかレイス村の子供じゃないか?」

男が何かに気付き、腰にさしていた剣を引き抜こうと手をかける。

ヴェンは男達が剣を抜く間に横を走り抜け、村に向かってただひたすら走る。


「あっ、おい待て━━━━」

後ろで兵士が何か言ってくるが今のヴェンには聞こえない。

(父さん、母さん……ルル!!!)

山を抜け、村の正門に向かう。だが普段半開きの正門は全開にされており、村からは炎が上がり、怒号が聞こえてきた。

ヴェンは構わず正門から中に入る……が、そこには沢山の村人の死体が広がっており、血の海と化していた。

ヴェンは吐き気を必死で押さえ込み急いで自分の家に向かう。

幸い家にはまだ兵士が来ていないようで、扉を開け家の中に入る。


「母さん! 父さん!」

「ヴェン!?」

「ヴェンか!?」

中には母親であるサリーと父親のヴァイル、そして何故か幼馴染のルルと今朝会ったシリウスまでいた。


「良かった……ヴェン、急いで逃げるわよ!」

サリーが矢継ぎ早にそう言うと、ヴァイルとシリウスがヴェンの後ろに来る。

サリーが先頭で後ろがヴァイルとシリウス、間にヴェンとルルだ。

家の裏手から出ようと扉に手を掛けようとした……その時

家の表の扉が蹴り破られ、そこから煌びやかな装備に身を包んだ男を先頭にゾロゾロと兵士が入ってきた。



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