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天下御免  作者: 深町珠
7/21

妖刀

蕎麦屋の娘は、後ろ手に縛られ

その後ろに、昼間出会った役人が

悪辣そうに笑っている

「椿右京、よく来たな」





「娘を離せ。関りなきゆえ」と、右京は

静かに押す。






「蕎麦屋の租税が溜まっておってな」と

片笑いの役人。






右京は、刀に手を掛け「お上の租税である、お主が受け取るは筋違いであろう」と、ははは、と笑う。





その時、階段を登って来る足音は

草履でなく、靴だった。



「出納掛でもない。物納をお上は許しておらん」




「おお、源の字か」右京は笑顔になった。





「この件は蕎麦屋の主人もな、娘も了承済みよ。租税を払えないなら店を畳まなくてはならん」と、役人は高笑いし、娘の着衣に手を掛けた。



娘は、身体を硬くして身をよじる。






「ふ、モテない男はこれだからいかん。

お上の権力にかこつけて。違法だろう」と

源は言う。




「貴様、わしを愚弄するのか」役人は娘を離し、立ち上がる。







頭に血が上ったのだろう。






「やかましい。罪なき町人をいたぶる

おのれは最早、人ではない。叩っ斬ってやる」

白刃が夜闇に煌めく。



幾度も人の生き血を吸った妖刀、それ自体が

血を求めて彷徨っているかのようで



光の軌跡が緩いカーブを描き、天上を指す。




役人は、慌てふためく。

「皆の者、出合え、出合えー」




だが、お付きの者も用心棒も

逃げ帰ってしまった(笑)。





「おのれ、右京」わなわなと震えながら刀を取ろうにも



娘をなぶろうとして、腰から抜いたまま(笑)。





ほれ、と源が刀を投げてやった。





「丸腰を討ったのでは、右京の名に差し障る」と、源は笑った。




役人は鞘を投げ捨て、定まらない太刀を構える。





「鞘を捨てるとは。既に帰らぬ心持ちか。」と

右京は笑う。




半月の構えに、右京は太刀を下ろす。






捨て鉢になった役人は、大声で叫びながら

右京に斬りかかる振りをして

階下へ逃れようとした。



階段を下りかけた。




破裂音。




源が、拳銃を懐から抜き

役人の脳幹を撃った。



蘭学者だけあって、急所を上手く撃ち当てた。






「すごいのぉ、その、拳銃は」と、右京は

笑いながら刀を納めた。


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