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役
「忌ま忌ましい。右京め」さっきの役人は
歯ぎしりをしていた。
役人の詰め所へ戻って、お付きの者たちとは
離れ
ひとりになった。
昼間なので、事務方の仕事もそれほどにない。
どうしてくれよう。
右京への報復をたくらんでいる。
悪い者、そんなものである。
己が天に背いた事をしている、と言うのに
天下国家のお蔭様で、役人をさせて頂いている。
そんな意識はないのだ。
貧しい農民から召し上げた租税を、我が物と
勘違いしている不届き者である(笑)。
お付きの者たちは、その頃
離れの厠の側で、煙草をふかしながら。
もちろん、きせるである。
「いやー、びっくりだったな、あの右京」
「人斬りだって聞いてたが、ありゃ死に神だな」
場数を踏んだ侍、右京の殺気に
圧倒させられてしまった。
「でも、ありゃこっちが悪いわな」と
本音を言うと、もうひとりは慌てて
「それを言うなって。宮仕えはつれぇなぁ」
町同心なのか、町人風情の彼らは
役人の不条理さが理解できない。(笑)
今も昔も変わらない(笑)。