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魂
町娘の無事を確かめようと
右京が視線を移すと
「ありがとうございます、いつも、すみません」と
町娘は、丁寧に腰を折った。
いやいや、と
右京も、かわいい娘にそう言われると
まんざらでもない(笑)。
少し乱れた髪を、右手でかきながら
踵を返し、蕎麦屋に戻ろうと
歩みを進める。
「すごいねぇ。気配だけでやっつけちゃうなんて」と、茶店の老主人は、右京の後ろ姿を眺めながら。
暖簾の内側で。
町娘は、うん、と頷いて
右京の頼もしさを、憧れを持って見つめた。
武士と言うのは、そういうものである。
道に外れた者が居れば、正す。
刀は象徴である。滅多に抜く事はないが
ひとたび抜いたが最後、それが人生の最期かも
しれない。
そこまでの思いを持って、魂を磨くのが
武士、である。