表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天下御免  作者: 深町珠
2/21

それから右京は、おっとりと

草履履きで、屋敷から出て


川沿いの、いつもの散歩道を歩く。



江戸前のこのあたりは水路も多く

柳の垂れ枝、風に靡いて心地好い。




茶店がいくつかあり、町娘が

かいがいしく働いている。



右京を見つけ、愛らしく会釈をする娘。




右京も、微笑む。




草履に感じる、土の感触が心地好い。




浪人は気楽なものだ。






と。





街道ではない川沿いの散歩道に、不穏な雰囲気。




道の中央を、顎をのけ反らせ

太った役人が歩く。


お付きの者が左右。




若い者だろう、痩せぎすの役人。





右京は、視線を合わさずに


川沿いの、蕎麦屋の屋台に。







さっきの役人ふうは、右京を

訝しげに一瞥。






「椿 右京か」と、高圧的に




右京は、それには答えずに平然と

蕎麦で冷酒を一杯。



微笑みを浮かべ、川に浮かんでいる親子鴨を

眺めている....




子分のひとりが、何やら気色ばむが


右京の耳には入らず。





悪辣な目つきで、役人は


足音を遠ざける。









直後。






さっきの町娘の悲鳴。






右京は、視線を向ける。





役人は、右京と町娘が親しいと思ったのか

娘を虐めて、右京に因縁をつけようとしたのだろう。





右京、静かに杯を置き



静かに、役人の子分のところへ歩く。






低い声で告げる「よせ」






役人はだみ声で「邪魔だてはまかりならん」



悪辣な笑いを含み。





右京、左手の刀に手を掛ける。

腰は落ち着き、半身の構え。




子分どもは気色ばみ、喚くが



右京の気配にたじろぐ。




修練を積んだ侍。




死の

気配。



役人も、ただならぬ脅威に怖じけづく。




おのれ、椿、覚えておれと



踵を返し、砂に足を取られながら逃亡。






右京は、構えを解く。




川風、さらりと

柳を流す。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ