サイボーグおばさんYOSIE
アザとーさんの企画「ワンデーライティング」
お題をもらって一日で書くぜって企画で書いた、勢いな作品です。
──20XX年、世界はAIの独自の発展により、戦争も人間を消費するということが無くなっていた。しかし、ある時を境に発生した兵器であるロボットの反乱。それにより、人類は荒廃の危機へと瀕していた。
「逃げろ! 人間狩りだ!」
今日もロボット達から逃げ、隠れして、住まわっていた人間たちがロボットに連れていかれる。帰って来たものはいない。一体どんな目に合うのか、それは恐怖と共に語られるだけだ。
「まって……あっ!」
幼い子供が転倒しても誰も助けない。皆、そんな余裕などないのだ。二足歩行型ロボットの魔の手がその子供に迫る。その時だった。
「待ちな!」
燦然と夕日をシルエットに立ちふさがったのは、壮年期をそろそろ過ぎようかという女性だ。
「人間ってのはこんなにも薄情になれるもんなのかね。さぁ、嬢ちゃん立てるかい?」
当たり前のように転倒した子供に手を貸すと、迫りくるロボットに指を突きつける。
「あたしの目の黒いうちは、人間に手を出させはしないよ。とぅっ!」
そのままパンチ一発でロボットは弾けた。
「ありがとうおばちゃん!」
「あたしは、おばちゃんじゃないよ。YOSIEさ!」
「うちの子を助けて頂き、どうもありがとうございました」
ロボットたちにまだ発見されていない安全な隠れ家に辿り着くと、先ほど助けた子供の母親が転げるように出て来て我が子を抱く。それを優しく見つめるYOSIE。
「ちゃんと見てなきゃだめだよ」
「本当に……ありがとうございます」
辺りを見渡せば、人生に疲れ、うつろな顔をした大人たちが静かにYOSIEを見つめていた。
「辛気臭いねぇ、全く。私より若い子はもうちょい頑張って欲しいもんだよ」
「そんなこといったって、どうやって対抗すればいいっていうんだ!」
思わず立ち上がった何人かに、YOSIEが指を突きつける。
「ほら、そうやって立つ元気はあるじゃないか」
そう言ってカラカラ笑う。そして背負っていたズタ袋からごそごそと何かを取り出して、皆に配ていく。
「はい、飴ちゃんだよ。これ食べて元気になんな」
久々に見る甘味に色めきたつ皆々。そこへ先ほど助けた子供が近付いてくる。
「ありがとーYOSIEおばちゃん」
「おう、お礼ちゃんと言えたね。よきよき」
「大変だー! ロボットたちの大群がー!」
慌てて外へ飛び出してみれば、そこにはかつての大通りを埋め尽くす程のロボットの大群がこちらに向かってきていた。
「嗚呼、もうおしまいだ……」
「神様……」
「やれやれ意気地のないこと。あんたらは外に出るんじゃないよ。絶対だよ」
「あっYOSIEおばちゃん!」
外に出たYOSIEは、まとっていたボロ布を脱ぎ捨てると、その金属光沢のあるアーマーを、月の光に照らし出す。
「さぁて、ここは通さないよ。モード・タイガー!」
そのアーマーが虎柄に変わると、YOSIEは高速で走りながら、戦闘集団を薙ぎ払う。そしてそのまま全身に搭載されている火器の照準を合わせると、一斉に発射する。
「夜には綺麗な花火が似合うってね」
翌日、静かになった外に出た人々は大量のロボットの残骸を見て、状況が掴めず困惑していた。
「YOSIEおばちゃんがやったんだよ、きっと」
幼い子供だけは、何故かそんな予感の中、朝日の中にYOSIEの笑顔を見た気がしていた。
愛で空は落ちてこない。




