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因果1

誤字、脱字あったらすみません……。

 それから数日。ナオヤ達解放軍は大陸西南部の城から大陸大陸西北部へと進軍し村へと襲いかかる魔物、見つけた魔物の殲滅を続けていた。

 だが今だ諸悪の根源は突き止められず魔物はどこからともなくあふれ出てくるまま。それでも解放軍は村の人々を守るために、この先に魔物が出てくる原因があることを信じ大陸から魔物を殲滅するため戦い続けていく。


 そんな緊迫した状態でありながらも全員が集まる作戦会議の場で、ホールで穏やかに紅茶を飲みいつもと変わらない様子のフレン。


「それでは、次はこちらのルートを経由しそのまま北へと進軍しましょうか」


『はっ!』


 テーブルの上に置かれた大陸の地図を指差しフレンは解放軍の面々へと指示を出していく。


「しっかし、魔物はどこから本当にどこからわいてきてるのかねー、いい加減疲れてくるぜ」


「うむ、本当に不思議なものだな。拙者が旅をしていたときにも相当な魔物の数を斬ったが、あとどれぐらいの数がいるんであろうか」


「それは私にもわかりません。ですがこのまま北上していけばいずれ原因は見つかるはずでしょう」


 今だ終わらぬ戦いに少し飽き飽きといった感じで、そうぼやくヴィンとレンカの二人。

 そんな二人にフレンは紅茶を飲みながら冷静にそう話す。

 その時、城の入り口の方からドタドタとした走るような音が聞こえてくる。そのままホールへと解放軍の男が入ってきて膝に手をやり息を切らしうつむく。何やら随分と慌てている様子であった。


「た、大変ですフレン様!」


「どうされました?」


「そ、それが、この近くの村々の住民があとかたもなく一人残らず消えていました! 。それとべつの村では村人同士が武器を持って殺しあったような後があって全滅です……」



 息を切らしてホールへと入ってきた男が驚きを含めてポツリとそう言う。その言葉を聞いてなのか、フレンが一度も見せたことのない驚きの表情を浮かべ、持っていたティーカップをテーブルの上へと落とし紅茶がこぼれていく。


「フ、フレンさん?!」


「おっと、失礼! 私としたことが……」


 フレンが驚いた様子から我へと返り冷静にテーブルに置いてあった布巾を手にとり紅茶をふき取る。

 平然を装っているもフレンが人一倍驚いていたのは誰の目から見ても明らかであった。


「とりあえず、その話は今は置いといて明日調査に行きましょうか」


「ですが、魔物の仕業ならいますぐ調査したほうがいいのではないのでしょうか?」


「いえ、私もそのことに対して少し考えたい事があるので明日向かう事にしましょう」


「はぁ……」


 頑なに明日へとするフレンに男は口をつぐむ。他の面々も「フレンがそう言うなら」といった感じでその通りに従い黙り込んで同意をする。

 何より口を出しがたいそれ以上触れてはいけないような雰囲気がフレンからは出ていたので、誰も口を挟むようなことができなかった

 その後、何ごともなかったかのように会議を再開するフレンであったが、その態度はいつもとは違い笑うような事がなく、少し暗めな感じを見せていた。



 ――――



 そして翌日。ナオヤは昨日のフレンの態度におかしいものを感じ、日が昇る前の早朝、部屋を抜け出し城の一階の廊下を歩いていた。

 その予感が的中し、自分の前の廊下を城の外の方へと向け歩く、フレンの後ろ姿を見つける。


「フレンさん! どこいくんですか?!]


「おや、ナオヤ君。ばれてしまいましたか、あははっ」


 慌てて走り出しフレンへと駆け寄り声をかけるナオヤ。ナオヤへと気づき振り返ったフレンが「しまった」と言うような困ったような笑みを見せる。


「いやー実は昨日の話で気になったことがありましてね。それで少し調査へ行こうかと」


「だったらどうして一人で行くんです? しかもこんな朝早くに……後でみんなで行った方が安全なんじゃないですか?」


「まぁそれもそうなんですけどね、これは私個人の問題なんですよ。お願いですから見逃して行かせてくれませんか?」


「フレンさん……わかりました。けど僕も一緒についていきます」


 頑なに何か理由を抱えフレンは一人で村へと行こうとするが、このまま一人で行かせるわけにも行かずナオヤは一緒に行く事を決意する。


「……わかりました。けど危ないかもしれませんよ?」


「だったらなおさら、何が待ち受けているのかはは知りませんが危険なら一人で行かせるわけにはいきませんよ」


「そうですか……いやーすいませんね。わがままに付き合ってもらって。それでは行きましょうか」


「はいっ」


 こうしてナオヤとフレンは皆がまだ寝静まっている早朝、こっそりと城を抜け出し事件があった村へと向かう。

 まだ日は昇っておらず、真っ黒な空の中、赤茶色にどこまでも続く広大な地面の上を歩き続ける。

 ――小一時間ほどこかかったころであろうか、ナオヤとフレンは木の柵のような、囲いに覆われた村へと到着しその入り口へと立ち尽くし辺りを見回す。木で出来た家々が並ぶ村の中には人の影はなく、変わりに二つの不気味な姿が村の真ん中へと立ち並んでいた。


「随分と早かったねぇフレン」


「やはり、この辺りであった村人同士であった殺し合いはあなたの仕業でしたか……」


 まるで前から知っているかのようにフレンの名を呼ぶナオヤ達の前に立ち尽くす紫の短い髪の女。その隣にはもう一人少し中に浮いているような赤い髪をした女がナオヤ達を楽しげな笑みを浮かべ見ていた。

 どちらの女性も見た目こそは人の形をしているものの、肌の色は紫であり黒いボンデージに身を包み、背中には紫の翼が生えていた。

 妖艶な笑みを浮かべ話しかけてくる女に、フレンは冷静な口調ながらも威圧的な雰囲気を出し明らかな敵意を向ける。


「ええ、そうだよフレン。おや、隻腕の坊やも一緒かい」


「っ! どうして僕のことを知っているんだ!」


「そりゃ、あたし達はあんた達解放軍の戦いをずっと見てきたからねぇ。まぁあたしはそれよりもずっと以前からフレンのことを見てきたわ。あ、それと坊や、あの馬鹿な人間を倒してくれた事には感謝してるわ。あいつのことはあたしも嫌いだったからね」


「この辺りの消えた村人はどこへとやったんですか?!」


「さぁ、どうしたんだろうね。知りたきゃ、ついてきなフレン」


「くっ! 待て!」


「フ、フレンさん!」


「おっと! サティの邪魔はさせないよ。 あんたの相手はこの私♪」


 普段とは違い冷静さを欠き、サティと呼ばれた女性の挑発に乗り、フレンは村の外へと去っていく女の後を追いかけていく。

 フレンの名を呼び引き止めようとするナオヤであったが、その声はフレンの耳に届いてなさそうであった。

 慌ててその後を追おうとするが、もう一人の赤い髪の女が立ちはばかり、足止めをし立ちはばかる。

 それに気づき追いかけようとする歩みを止め、残された女と向き合い、剣を右手に構え腰を低くし対峙する。その間にフレンの姿はもはや見えなくなっていた。


「それっ!」


「なっ?! ――」


「すごいでしょー。私は死人が操れるんだよ。それとその手に握られているのは拾ったおまけだよ」


「っ…… どうしてヴォルドさんが……」


 女が掛け声を出すと同時にナオヤの前の地面がうごめき何かが姿を現そうとする。

 自慢げに楽しげにそう言い放つ女。口を開け驚くナオヤの視線の先には、剣を手に持った亡くなったはずのヴォルドの姿が地面から現れる。

 だがその姿に生気はなく目は白目であり、その右手には前に戦ったときの男が持っていたとされる魔剣が握られていた。

 まさかもう一度姿を見ることが出来るとは思わず、動揺を隠せずナオヤは驚いたままヴォルドを見上げ固まり立ち尽くす。


「それじゃ、いっけぇー」


「くっ!」


 女の掛け声と同時にヴォルドがナオヤへと向け魔剣を縦に振り下ろす。それに気づき我へと帰り、ナオヤは咄嗟に剣を額付近で横に構える。

 ただ力任せに振り出されただけらしく、前回男が使っていた魔剣のすごみはなく軽々とその一撃を受け止めるナオヤ。


「ヴォルドさん止めて下さい!」


「説得しようとしても無駄無駄。もう死んでいるんだから切り伏せないかぎり止まらないよ。けどおっかしいなー、その剣はもっとすごかったはずだったんだけどなー。やっぱり死人には扱えないのかな」


「ぐっ! だったらお前を先に倒す!」


「あははっ 通すわけないじゃない」


 ただ闇雲に剣を大きく振り上げ、ナオヤへと向け振り下ろし続けるヴォルド。その後ろでは赤い髪の女が楽しげにその光景を眺めている。

 女の方へと向かい斬りかかろうとするも、邪魔をするようにヴォルドがナオヤの行く手を阻む。八方塞のこの状況でナオヤはひたすらガードへと徹しつづける。


「ほらほら速く終わらせないと、あっちの人が危ないかもよー」


「くっ……」


 頭ではわかっていても斬ることができない。ナオヤの脳裏にヴォルドが生きていた頃の笑う姿と笑い声が蘇る。

 振り下ろされる剣をナオヤはただ受け止め続け、しだいに焦りがつのる。そうしている間にも日が昇り辺りが明るくなり、だんだんと時間が過ぎていった。

 追い込まれた状況。そんな時、ナオヤとヴォルドの横を不意に一つの黒い影が通り過ぎる。その影は後ろにいる女の方へと向かい素早く詰め寄り、剣を両手で一気に縦に振り下ろす。


「はぁぁぁぁ!」


「きゃぁ! いったーいきなり現れて何するのよ!」


「黙れ! 死者を愚弄しおって!」


 その突如現れた姿はエルナであった。不意の一撃を女は左腕でかばい紫色の血が噴出す。

 追い詰められている状況のナオヤであったが、思わぬ増援を見て少しながらも安堵の笑みを浮かべ、剣を受け止めながらエルナの方へと目を向ける。

 ナオヤとヴォルドに背を向け、エルナは剣を両手に持ち女を睨み立ち尽くす。


「エルナ! どうしてここに?!」


「ああ、朝ナオヤとフレンが城から出て行くのを目撃した人がいてな。とりあえず話は後だ!」


「ちょ、ちょっとたんま! 私は自分で戦うのが苦手なの!」


「問答無用!」


 両手を前に出し慌てて制止しようとする女に、エルナは剣を両手で躊躇なく勢い良く縦に振り下ろす。その一撃は女の胸をとらえ、斜めに切り裂いて勢い良く血が噴出し始める。確実に致命傷となり女が顔を歪ませ苦しんだ表情となる。


「くっ! おぼえてなさいよー!」


 最後に女がそう言い残し黒い煙を発し、エルナの前から跡形もなくあっさりと消え去る。これで残されたヴォルドは止まるものだと思っていたが、その動きは今だ止まらずにナオヤへと向け剣を振り下ろし続けていた。

 どうやら斬り伏せない限りは止まる事がないようだ。決断を迫られるナオヤ。そして――。


「父上……」



「ぐっ! くそおおおぉ!」


 やり場のない怒りをぶつけるかのように、ナオヤはヴォルドの剣を大きく上に弾き上げる。がら空きとなったヴォルドの胴に向けナオヤは、剣を力任せに振るい横殴りに斬りつける。

 深々と胴を斬られたヴォルドが剣を上に上げたまま硬直し、そのまま後ろへと仰向けに大きな音を立て倒れこんでいく。もはや動くような気配はなく次第に体が土へと変わり消え去る。ヴォルドを形作っていた土が風が吹いて、去っていき地面の上には握っていた魔剣だけが取り残された。


「父上……安らかにお眠りください」


「ぐっ! くそ!――」


エルナが剣を左腰の鞘に収め、両目を閉じ、両手を合わせヴォルドへと追悼するように祈りを捧げる。その近くでナオヤはこんな事をさせられる事に対し、やり場のない怒りを抱え地面を睨み、持っていた剣を思い切り地面へと叩きつける。だが今は怒りにも悲しみにも浸かっている時間などない。すぐ気持ちを整えナオヤは前を向き、エルナの方を見据え直す。


「さっ、ナオヤ! 速くフレンの元へと急ぎましょう!。私と別れたヴィンとレンカがきっと向かっているはずだけれど」


「うんっ……そうだねエルナ、今は立ち止まっている暇なんてないんだ……。あっ、そうだ! これ以上誰かが使う前にこの魔剣を破壊しとかないと」


 そう思い、ナオヤは地面に残されていた魔剣へと目をやり、剣を上に振り上げ目の部分に狙いを定める。これできっと害のないものになるであろう。

 一気に剣を振り下ろし確実に魔剣の目をとらえるものだと思っていた。が、しかしナオヤの振り下ろした剣は空を斬り地面へと突き刺さる。

 今までそこにあった魔剣の姿はもはやどこにもなく、どこかへと消え去ったようであった。


「一体この剣は何なんだ……」


 今まで使って来たもののこの剣について何も知らない。何のために存在するのか? 一体誰が作ったのか? また新たな使い手を捜しに行ったのだろうか? いくら考えてもナオヤの持っている知識では答えが出るはずもなく、考えるのをやめ、フレンが走り去った方向へとナオヤとエルナも後を追いかけ走り始める。

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