移城
短くってすみませんorz
それから数日後、ナオヤ達は大陸西部へと遠征を繰り返し、魔物の討伐を続けていく。
だがさすがに東部から西部まで行くには何日もかかるため、住み慣れた東北部の城から大陸西南部にて見つけた空城に拠点を移す事に決める。
城にある武器や鎧、食料その他の道具をまとめ終え、城の前に立ちつくす解放軍。
「行って来ます、父上」
城の前に立てられた遺骨もない、ただ石を置いただけのようなヴォルドの墓石と城に向け、エルナは別れを告げるように深々と頭を下げる。
それに続くように他の解放軍の面々も同じように頭を深く下げ、新しい城へと向け歩きだす。
――それから一週間近くたった頃だろうか、解放軍は途中の村々で休憩を挟み、ようやく新しく住む事になる大陸西南部の城へと到着する。
前住んでいた城と同じぐらいの大きさであり特に外傷に目立った傷もない新しい城。
緑が生い茂りどこまでも続くような平原があった前の城とは違い、新しい城の付近は赤茶色の肥えた土がどこまでも続き、葉っぱのついていない枯れ果てた木があちこちにあるなど、不気味であり殺風景なものであった。
辺りが薄暗くなり、空がオレンジ色になっている頃、解放軍は新しい城へと到着し中へと入っていく。
ナオヤも魔剣を右手に下げ、ミアの手を引くエルナと一緒に城の中へと足を踏み入れる。
「ケホケホッ、すごいほこりだね~」
「ええ、どうやら長いこと誰も住んでいなかったみたいね」
廊下を歩いている途中、城内に溜まっているほこりで咳き込むミア。
城の中には、くもの巣やほこりがあちこちについており、ひとまずは掃除をする必要がありそうであった。
ほこりのたまったテーブルクロスの乗っかったテーブルのあるホールを抜け、階段をのぼり自分達がこれから生活するであろう三階の部屋を目指す。
前と同じテラスのある三階の廊下を通りぬけ、廊下の端辺りにある部屋と到着し、ミアが扉を開ける。
「ここが新しく住む部屋ね♪ けどほこりっぽい……」
「ははっ……まぁ仕方ないよ。掃除しようかミア」
「うんっ! パパ!」
それからナオヤとエルナとミアはミアの部屋の掃除をし、その部屋の隣にあるエルナの部屋。そしてその隣をナオヤの部屋とし、それぞれ自分の部屋の掃除をしていく。
それからホールや調理場など思った以上に溜まっていたほこりを解放軍の面々は協力し掃除を開始していく。
こうして城全体の掃除は城の整備もかね、二日間ほどにかけ行われていった。
「パパ! 城の探検をしよ!」
「探検? この城の内部はほとんど掃除したときに周ったはずだけど」
それからしばらく数日たったある日、次の戦いに備え、英気を養い部屋でくつろいでいたナオヤの元にミアが扉を元気良く開け、中へと入ってくる。
「うんっ! けどこの上の階はまだ誰も行ってないはずだよ?」
「そういえば、まだ行った事なかったね。行ってみようかミア!」
「うんっ!」
この階の上となるとあるとすれば王座の間だ。確かに行く必要がなかったので誰も立ち入ってないかもしれない。
きっと王座があるだけで何かあるとは思えなかったが、ミアの案にのりエルナも連れ、階段をのぼり王座の間を目指す。
「王座って言うと嫌な思い出しかないわね……」
「あっ、ごめん! エルナ。つらいこと思い出させちゃったかな?」
「いえ、大丈夫よ。行きましょ」
王座の扉の前に立ち少し浮かない顔をするエルナ。ここはヴォルドさんが亡くなった場所とほぼ同じなので無理もない。
少し重い鉄でできた厚みのある扉をナオヤとエルナは半分ずつ押し開く。
扉を開けると中から凄まじいほどのほこりがあふれ出て来て、ナオヤ達はむせ返す。
「けほけほっ、ここもほこりだらけだねー」
「そうだね、何もなさそうだけどとりあえず見て周ろうか」
「うんっ!」
段差の先に王座と思われる椅子があり、その両側の壁に沢山の額に入れられた絵か肖像画。
見た限りそれだけであったがナオヤはエルナと分かれミアと左側の壁を見て周る事にする。
「何か、人物の絵ばっかだねー」
「うんっ、そうだね。この人たちはきっとここの城にいた王族かな」
壁に立てかけられている肖像画をナオヤとミアは見て回る。
肖像画に描かれている人物は、高価そうな衣服やマントに身を包んでいる若い男や年老いた老人など、西洋風の王様と思われるものばかりであった。
「――っ! これは……」
「どうしたのママ?! わぁ~綺麗な人! それにママにそっくり!」
突然驚いた声を上げ、一つの肖像画の前に驚愕の表情を浮かべ、口に手を当て立ち尽くすエルナ。
その声に驚き反対側にいたナオヤとミアが慌てて駆け寄り、エルナが見ていた肖像画にナオヤ達も視線をやる。
そこにはエルナに良く似ており、高価そうな黒い毛皮に身を包んだ、赤い長い髪の女性が描かれていた。
もしかしたらこれは……。
「ママ~。どうして、泣いているの?」
「えっ?! あっ! ごめんなさい、ミア。私ったらもう泣かないって決めたのにね……」
「エルナ、今は泣いてもいいと思うよ。きっとこれはエルナのお母さんなのかな」
「ナオヤ……ありがとう、ええ、きっとそうだわ……。ごめんなさい……っ! ひっく……」
ミアに言われて初めて自分が泣いている事にエルナは気づく。
やはりこの肖像画はエルナの母親なのかもしれない。もしそうならエルナは王族であるという可能性が高くなるが……。
ナオヤの言葉を皮切りに声をあげ泣き続けるエルナ。事情を知らず首をかしげるミアと一緒に。ナオヤはエルナが泣き止み落ち着くまで側にいてあげつづけることにした。
何かこれだけじゃ物足りないので、新しい仲間に紫の羽に紫の肌の色の女の子の魔族でも出そうと思いましたが、キャラクターの描写が苦手なのにこれ以上出してどうするんじゃいと思ってボツに……。
ここから伏線の回収に励み後九、十話ほどで終わるかもしれない予定……。
読んでくださった方々に感謝です。