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【現実】

「お前、逃げられると思うなよ」レスラーのような男がゆっくりと三ツ森に近付いていく。三ツ森の後ろでは、ピンクの革ジャンの男と長髪の男、角刈りの男が出口を塞いでいる。 

 逃げる?その手があったか。三ツ森はそんな事を思ったが、なぜだか逃げる気にはなれなかった。目の前の出来事がリアルに感じられない。この期に及んでも、自分の置かれている状況に現実味などまるでなかった。まるで視界に膜でもかかったかのように、自分とは別世界の出来事に感じられる。まるで他人事のような感覚だった。三ツ森は何を考えるでもなく、その場に佇んでいた。三ツ森の射程圏内まで近づくと、レスラーのような男がいきなり右のパンチを振るった。そのパンチをヘッドスリップで躱し、三ツ森は男の口元に思いっ切り右のストレートを叩き込んだ。鈍い音が響き渡る。もろにカウンターが決まった。これ以上ないタイミングだった。もろに決まり過ぎて拳に激痛が走った。レスラーのような男の後ろで、あご髭の男が驚愕しているのが見える。レスラーのような男が二、三歩後ずさる。「いっ…て…」三ツ森は思わずそう呟き、右手を振った。レスラーのような男が血の入り混じった唾を吐く。「それはこっちの台詞だ」男は仁王立ちしていた。口から流れ出る血を拭い、怒りで顔を震わせながら、鬼の形相で三ツ森を睨みつけている。とても痛そうではあるが、効いた様子はまるでなかった。今のパンチで倒れなければ、一体どんなパンチで倒れるというのか。驚愕したのは三ツ森の方だった。

 レスラーのような男が三ツ森に襲い掛かる。左右のパンチを振っていく。三ツ森はバックステップでそれをやり過ごすと、男の顔面にパンチを炸裂させる。しかし、まるで効いていないかのように男のパンチが返ってくる。ウェービングとバックステップで男のパンチを躱す三ツ森。レスラーのような男は立て続けにパンチを繰り出してくる。スピードこそないが、とてつもなく重そうなパンチだ。三ツ森は圧力を感じていた。男のボディにパンチを叩き込む三ツ森。しかし、お構いなしに男はパンチを振るってくる。まるで効いた様子がない。まるで岩でも相手にしているかのような感覚だった。ダッキング、ウェービング、スウェーバックで男のパンチを凌ぐ三ツ森。男は攻撃の手を緩めない。ガンガンパンチを振るってくる。段々とパンチを捌き切れなくなってきた三ツ森が、男のパンチをガードする。吹き飛ばされる三ツ森。何とか倒れるのを阻止して踏ん張りを見せる。しかし、三ツ森の息はすでに上がっていた。やべぇ、勝てる気がしねぇ。ここにきて、ようやく三ツ森は自分がピンチである事を悟った。

 レスラーのような男から距離を取り、左へ左へと回る三ツ森。レスラーのような男は前へ前へと突進してくる。男が連打を振るう。バックステップ、ダッキング、ウェービングで凌ぐ三ツ森。パンチを躱すのに精一杯で反撃ができない。重そうなパンチが何度も顔をかすめていく。そのたびに肝を冷やし、精神が削られていく。男が再びパンチを振るってくる。三ツ森がパックステップを踏もうとした瞬間、あご髭の男が後ろから蹴りを放つ。背中を蹴られ、レスラーのような男との距離が詰まる三ツ森。後ろに気を取られ、レスラーのような男から視線が外れた次の瞬間、レスラーのような男のパンチが三ツ森の顔面に炸裂していた。目の前に火花が散った。これまで経験した事のない衝撃が顔面に走る。三ツ森は吹き飛ばされて倒れ込んだ。倒れ込んだ三ツ森の腹を、レスラーのような男が蹴り上げる。息が詰まった。激痛にのたうち回る。

「オラァ」あご髭の男が三ツ森の顔面を踏みつける。もろに喰らった。腹を押さえていた両腕を上にあげ、顔をガードする三ツ森。ガードの上からガンガン踏み付けてくるあご髭の男。

「死ねオラァ」角刈りの男が三ツ森の腹を蹴りつける。倒れながらくの字に折れ曲がる三ツ森の体。激痛が走った。吐きそうになる。内臓が悲鳴を上げている。左手で腹を、右手で頭を庇う三ツ森。太ももを蹴りつけられる。激痛が走る。体を丸めて痛みから逃れようとする三ツ森。逃れようがなかった。

「ムカつくんじゃお前」ピンクの革ジャンの男、長髪の男も三ツ森を蹴り始めた。三ツ森はすでに戦意を喪失していた。反撃などできる気がしなかった。そんな三ツ森を男たちは容赦なく痛めつける。顔面を踏みつけられ、腹や背中を蹴りつけられた。痛みで気が狂いそうになる。男たちの執拗な攻撃に、終わりが見えなかった。全身に痛みが走る。もはやどこを蹴られているのか分からなかった。こいつらは、加減というものを知っているだろうか。現実が痛みと苦しみを伴ってリアルに迫る。なぜ、こんな事になっているのか。なぜ、こんな事になるまで現実が分からないのか。どうしようもねぇ。気が遠くなっていく。男たちの攻撃は続く。本当に、殺されるかもしれないな。必死に体を丸めて体を庇い、そんな事を思いながら、三ツ森は気を失った。

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