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【肘】

 後楽園ホール。日本フェザー級タイトルマッチは、第七ラウンドを迎えていた。山田の顔は腫れていた。その顔が激闘を物語る。第四ラウンド、ダウン後のピンチを凌いだ山田は、その後も前に出た。村上は一気に山田を仕留めにかかった。果敢に連打を浴びせかける。しかし、村上が打てば山田も必ずパンチを返す。パンチを喰らっても、山田は怯む事なく前に出た。そしてパンチを繰り出してくる。深追いすれば山田のパンチを喰らう事になる。村上は不用意には前に出られなくなった。山田は次第に五分の打ち合いに持っていく。試合は乱打戦。中盤に入り、ようやく山田らしいボクシングが見られるようになってきた。山田が圧力を強める。山田の集中力が高まってきた。全神経を、村上のパンチに集中させていた。

 村上がジャブの連打を放つ。それをパーリングとヘッドスプリットで躱した山田はワンツーを放って前に出る。そのパンチをガードでブロッキングすると村上も左ジャブと右フックで応戦する。山田もブロッキングでパンチを凌ぎ、すぐさまパンチを打ち返す。そのパンチをウェービングで凌ぐと村上もすぐに反撃に出た。どちらも下がらない。足を止めての打ち合いとなる。お互い上体を振りながらパンチを繰り出していく。パンチが交錯する。村上の左フックが山田の頬をかすめる。山田も右ストレートをガードの上から叩き込む。村上が右フックを放つ。それをダッキングで躱すと山田が左のボディを打ち込んだ。そのパンチが村上のレバーを捉える。しかし村上が返した左フックも山田の顔面を捉えている。山田が左アッパーを放つ。スウェーで躱した村上が右ストレートを繰り出す。しかし同時に繰り出した山田の右ストレートが村上の顔面にヒットする。お互い手を休めない。近距離でのパンチの応酬が続く。嫌がったのは村上だ。山田の左ボディが再びレバーにヒットし、山田が返しの右のフックを放つと、村上はジャブを突きながら堪らず距離を取る。

「ボディ効いてるよ!そのまま一気に詰めろ!」青コーナーから恋塚が指示を飛ばす。

 山田が前に出ながら右ストレート、左フック、右ストレートと連打を放っていく。村上がバックステップを踏む。そしてジャブを突いてくる。そのジャブをパーリングで払ってワンツーを返す山田。パーリングとヘッドスリップでそれを凌いだ村上が左ボディから右フックを放つ。ガードとダッキングで躱して左ボディを返す山田。ボディをブロッキングした村上のガードが下がる。すかさず左右のフックを顔面へ繰り出す山田。ウェービング、ダッキングで凌ぐ村上。村上が左ボディ、右ストレート、左フックと連打を放つ。被弾する山田、それでも構わず前に出る。左右のボディを連打で叩き込む山田。村上は必死にガードする。そして左ジャブを突いて山田を牽制する。それをヘッドスリップで躱して距離を潰しにかかる山田。一進一退の攻防が続く。

「…やっまっだっ!やっまっだ!」

「むっらっかみっ!むっらっかみっ!…」

 山田コールと村上コールが沸き起こる。会場は最高の盛り上がりを見せていた。山田がワン・ツー・フックと連打を浴びせかける。ジャブ三連打でカウンターを狙いにくる村上。村上のパンチが山田の顔面を捉える。続けて右ストレートを放つ村上。それをヘッドスリップで躱して左ボディを叩く山田。村上はそれをかろうじてガードする。

「ボディ嫌がってるよ!上下打ち分けて、ボディ狙えボディ!」青コーナーから恋塚が叫ぶ。

 村上が左ジャブ、右ストレート、左フック、右ストレート、左フックとパンチをまとめてくる。ガードとダッキングで何とか凌ぐ山田。しかし休む間を与えない村上。右アッパー、左フック、右ストレートと続けざまにパンチを放ってくる。右ストレートを被弾する山田。続いて左フック、右ストレート、左ボディ、右フック、劣勢と見た村上が一気に攻勢をかけた。盛り返しにかかる。必死にガードを掲げ、ブロッキングする山田。左ジャブから右フックを返す。それをガードして右ストレートを放つ村上。そのパンチを山田はウェービングで凌ぐ。村上がすぐさま左フック、右アッパーと繋げていく。上体を振ってパンチを凌ぐ山田。すぐさまワンツーを返す。山田は怯まない。打ち合いの中で徐々に自分のペースに持っていく。いつものパターンに村上を嵌めていく。その段階を踏んでいた。打ち疲れか、その後の村上のパンチが続かない。山田が左ジャブ、右フック、左ボディとパンチ放つと、左ボディが村上の体に突き刺さった。くの字に折れる村上の体。右ストレート、左フック、右のボディと山田が追い打ちをかける。村上が下がる。

「いけぇええ!山田ぁああ!」観客席から叫び声が上がる。

 山田が距離を詰める。ワンツーから左フック、そして右のボディを叩いていく。ボディを嫌がって村上のガードが下がる。左ジャブ、右フック、左フックとパンチを振っていく山田。村上も必死に上体を振ってパンチを躱す。しかし後退する。ワンツーから左のボディブローを放つ山田。ガードしながらロープに詰まる村上。山田が畳み掛ける。左ジャブ、右アッパー、左フック、右ストレート、それを必死に上体を振って凌ぐ村上。村上も打ち返す。左ジャブ、右フック。山田も上体を振りながらパンチを繰り出している。山田の右フックが村上の顔面を捉える。続いて左ボディを二度叩く山田。必死にガードでこらえる村上。

「やっまっだっ!やっまっだっ!」山田コールのボリュームが上がる。

 山田が連打を放つ。村上はガードするのが精一杯だ。ガードの上からガンガンパンチを叩き込む山田。

「むっらっかみっ!むっらっかみっ!」村上の応援団も必死に声を振り絞る。

 山田の左ボディが炸裂する。何とか耐え凌ぐ村上。必死にガードを上げる。続いて左フック、右フック、再び左ボディ、右フック、山田が連打を上下に打ち分ける。ガードとウェービングで必死に凌ぐ村上。更に山田が追い打ちをかける。左フック、右フック、そしてまたボディにパンチを打ち込もうとした次の瞬間、村上の肘が山田のあごを横から叩き付ける。山田の膝が折れた。キャンバスに右ひざを付く山田。会場が一瞬静まり返る。そして歓声が沸き起こる。レフリーが間に割って入った。山田は一瞬何が起きたのか分からなかった。脳を揺さぶられて膝を付いた。分かったのは、それだけだった。

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