「赤い糸」の先に
寝る前に思いついたネタです。急いでノートに書き留めてから寝ました、笑
私は小さい頃から赤い糸が見えた。
幼稚園の頃、その意味を知らなかった私は面白いなにかがあるとしか思っていなかった。
でも、その糸は家が隣で幼馴染の君につながっていた。
それだけが確かだった。
小学二年生になり、私は母に赤い糸の意味を聞いた。
毎日右手に結びついているこの糸が、不思議でたまらなかった。
「ママ、赤い糸ってなあに?」
当時の私からすれば、きっと純粋な疑問だった。
「どうしたの急に。」
やんわりと笑った母は、こう言った。
「赤い糸の先にはね、将来一緒に生きていく人がつながっているんだよ。いつか見えるようになるといいねえ。」
「へえ、なんだかプリンセスみたいだね!」
「そうだねえ。」
今思えば全然似てない例えだったと感じる。
幼稚な私は、右手の小指の先にあるそれを特に気にせずに生きていた。
小学校高学年になった。
周りの子が恋愛の話をするようになり、赤い糸の意味もおのずと察した。
でも、自分の幻覚だと思っていた。そんなはずない、と思い込んでいた。
中学生になった。
クラスが別れたことで交流はほとんどなくなり、彼が他のこと仲良くしているのを遠い目で見ていた。
この頃から彼への恋心を自覚し始めた。ただ、周りが可愛い子ばかりで、その気持ちは隠していた。
糸のことは、見て見ぬふりをした。
中学二年生になった。
クラスが隣になったものの、今更話しかける気にもなれずぼんやりとしていた。
新しい友達だってたくさんできたから、別に無理に関わる必要もなかった。
この年は一度だけ、帰り道に話したことがあった。
「元気?」
「うん」
会話したのはこれだけ。あとは、家の前で別れの言葉を言ったくらい。
それくらいに、私達はお互いがいなくても生きていけた。
それぞれが新しいコミュニティを獲得していた。
中学三年生になり、同時に受験生になった。
クラスは同じになったものの、勉強で忙しくてほとんど関わらなかった。
彼に彼女ができたことを知っても、もうなんとも思わなかった。
高校生になった。
偏差値的に問題もなく、家から一番近かった高校に入った。
そこで偶然、彼と同じ高校、そして同じクラスになった。
私は入学してすぐ、席が近かった優美と仲良くなった。
高校二年生になった。
風の噂で彼は優実が好きらしい、と聞いた。
そして、その翌日彼に協力してほしいと言われた。
胸が少しだけ痛んだ。
この感じ久しぶりだな、とも思った。
そして当日。屋上で話していた優実と私に、彼が話しかけてくる。
小さな頃から変わらない優しい声で「ちょっといい?」と。
これでいいんだ。忘れてしまえ、恋心。
赤い糸なんて、やっぱり嘘だったんだ。
幻覚だったんだ。
そうに決まってる。
私の、都合の良い妄想。
彼には何も見えない。
見えなくていい。
見えないほうが良い。
消えてしまえ。
ちぎれてしまえ。
思い出す、昨日の夜のこと。
覚悟を決めてハサミで切ったというのに、糸は何知らぬ顔でそこにあった。
胸が張り裂ける思いで、彼の告白を見守る。
さようなら、恋心。
「俺は――」
優実に真っ直ぐな目が視界に入り、思わず目を背けうつむく。そもそも、私がここにいる意味あるのか?
こんなことになるくらいなら、告白が始まる前に離脱すればよかったのに...。
「美空のことが好きだ」
―――え?
―――聞き間違い、だよね...?
驚いて顔を上げると、いつものように赤い糸につながっている、君がいた。
「江川さんには協力してもらったんだ。ごめん、驚いたよな。」
そして、私達は付き合った。
しかし高校卒業後、それぞれの道に進んだ私達は遠距離になった。
――でも、この糸だけは消えなかった。
だからこそ、心が揺らいだときもばっさり断れた。
ふと視線を向けるとすぐそこにある、小さくて強いこの糸が私を支えてくれた。
今日もこの糸は、空の遠くへ続いている。
これからもずっと消えない、私達の象徴が、また小さく揺れた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
『彼』の名前をあえて出さなかったのはこだわりポイントです...。
もう一本シリーズで書いたので、ブクマ登録等よろしくお願いします。
続き: https://ncode.syosetu.com/n4180lk/
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