第7話 光の壁
俺と地図屋アイラは、2人でダンジョンの状況を確認することにした。
呉越同舟か、袖振り合うも多生の縁か、まあいいか。
向かう先はアイラがマッドハウスを確認した北の通路である。
北の通路には薄く光る壁がそそり立っていた。
向こう側はおぼろげに見えるが、通り抜けられなかった。
無理に通ろうとしたら弾き飛ばされた。
なるほど。
これがダンジョンの封鎖。
これがマッドハウス。
アイラが一步前に出る。
「犯人はこのエドモンです。私はエドモンが死体の側にいるのを目撃しました。
証拠は十分です」
アイラは壁に向かって言った。
「なにを言い出すんだよ!」
「こう言えばマッドハウスが解けないかと思ったんだけどね」
光の壁はなんの変化もない。
そういうことか。なら。
「犯人はこのアイラです。
アイラは俺より先にダンジョンにいました。
殺人を犯す時間は十分にあったと思います」
「何を言い出すのよ!」
やはり光る壁はなんの変化もなかった。
俺と地図屋アイラは大きくため息をついた。
マッドハウスは犯人が見つかれば解けると言われている。
つまり俺とアイラは犯人ではないということだろう。
多分。
「マッドハウスは解除されない。
つまり、あなたも私も犯人じゃない。
なら、とりあえず協力した方が良さそうね。
よろしく魔術師エドモン」
地図屋アイラは態度を変えた。
俺を犯人扱いしたことへの謝罪はなかった。
「マッドハウスから解放されて、できたらダンジョンから出るまでは協力しあおう。
よろしく地図屋アイラ」
俺も応える。
ここで謝罪を求めても何も始まらない。
姉と妹から以下同文。
「アイラでいいわ。
さっきも言ったけど地図屋よ。
冒険者組合から仕事を請け負っている。
半月の時期にダンジョンを調査するのが主な仕事よ」
アイラはだいぶ気安い様子になった。
とりあえず俺への疑いは晴れたようだ。
「俺もエドモンでいいよ。
見ての通り治癒師で、攻撃魔術も少し使う。
僕は上の階から一人で落ちてきたけど、アイラは仲間はいないのか?」
「私は一人よ。半月のダンジョンはおとなしいし。何より大勢で潜ると報酬も山分けになってしまうからね」
「危険じゃないのか?」
「今は半月で昼間で、場所やタイミングを選べばそこまで危なくない。
私は危険の避け方も知ってる。
それでも何か起きればそれまでのことよ」
アイラは相変わらず素っ気なく言いながら、片手を差し出した。
?
「仲直りしましょ。ダンジョンの中で治癒術師と喧嘩しても仕方ないわ」
俺とアイラは軽く悪手した。
落ち着いたアイラはすらっと背が高く、……美人だと思う。
今日は1話投稿です。
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