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第25話 彼女はなぜ殺人を行ったのか

俺達は殺人現場の部屋を出た。

部屋から持ち出した物は、遺髪と最低限の遺品だ。

このダンジョンで死んだ冒険者の遺体はダンジョンの物になる。



「でもさぁ、、なぜ、彼女は男を殺したんだろう」

歩きながらデニスが言った。


「殺したかったからでしょ」

アイラの返事は取り付くしまもない。


「あの二人はけっこう有名な冒険者なんだ。

ファンも多いし、そのさ、俺もそのちょっと憧れてた。

二人とも成功した冒険者なんだ。

殺し合う必要なんてなかったのに」


デニスが心中にこだわるのはそのせいか。

偶像アイドルが人殺しをするのは納得できないよな



「あの二人のことは私も知ってる。親しくはないけど一応知り合い」

アイラが口を開いた。


「私が駆け出しだった頃から二人で組んでた。

男は前衛の戦士、女は魔法剣士。

二人とも美男美女だし、一人でも目立つけど二人だとさらに目立つのよね。

当時から人気者だった。


でもね、最近に聞いた話だけど、男は結婚して冒険者を引退するつもりだったみたいよ」


そりゃまた。


「つまりですね、やっぱりですね、原因は愛憎のもつれってヤツですか?

私の元から離れるなんて許さない。

あの女には渡さない。コレですよ!」

ヴィオラが妙に興奮している。



「ヴィオラ、あなた考え方が単純すぎるって言われたことない?」


「ひどいてすね、アイラさん!

でも、男女の関係なんて単純だと思いますよォ。

お母様はそう言ってましたァ」




「なんであの男は脱いでたんだ?

毛皮もないし、服もないんじゃ不安じゃないのか」

ボボンが突然口を出した。


あーえーと、それは多分……。


「ボクが亡霊レイスは嫉妬で真っ黒だって言ったでしょ?

嫉妬の原因は色恋だよ。

二人はそういう関係で、そういうことをしようとしてたんじゃないの?」

ジルが言った。

言っちゃったよ。


「発情ってやつか。発情期の女は気が荒いからなあ」


うーん。



「ちょっと皆に質問だけど」

俺は気になったことを口に出す。

「ダンジョンって人を殺すのに向いた場所なのかな?」


彼女は男を殺すために計画的にダンジョンに入ったのだろうか。


「ボク的な意見だけど、死体は隠しやすいと思うよ。

特殊な魔術で焼いてしまうか、スライムに食わせてしまうか。

多少時間がかかってもダンジョンに吸収させるか」

ジルが言った。

割とこわいことを言うエルフである。



「あまり向いてないと思う」

アイラが別の意見を言った。


「ダンジョンに入る冒険者の名前を冒険者組合は記録している。

ダンジョンで殺人事件が発生すればマッドハウスが発生するし、冒険者組合はマッドハウスも記録している。

もしもよ、男を最初の一撃で仕留めたとしても、一緒に入った彼女は疑われたと思う。

どうしてもダンジョンで殺したいなら、満月か新月の騒がしい時期を選ぶ」


そうなのか。


「ついでに私は今日、マッピングの途中で彼らとすれ違った。

彼女は私がダンジョンの近場にいることを知っていたし、マッドハウスが発生すれば私が出張ってくる可能性も考えたはず」



最初に出会った時アイラは「あなたが犯人ね」って言って俺に立ち向かってきた。

俺がもしヒトを殺すなら、冒険者組合直属の地図屋マッパーであるアイラがそばにいる時は避けるよ。

別の日にする。


別の見方をするなら、それぐらい強い動機か、殺人にふさわしい条件が揃っていたということだ。



どんな時にヒトを殺したくなるだろう。

相手が憎い時だろうか?

金が手に入りそうな時だろうか?


あるいは、殺人がバレない確信があった時?


あっ!


「殺人のきっかけが分かったかもしれない」


俺は閃いた。



「あの二人組はダンジョンに偵察に来てアイラとすれ違った。

この時点では、彼女は男を殺すつもりはなかった。

でもその後、彼女は千載一遇のチャンスに遭遇してしまう。

殺人はバレなければ良いんだ。

冒険者組合にも、世間にも」


「どんな条件が成立したの?」


「彼らはダンジョンの中で殺人事件に遭遇したと思った」


「それは……!」


「そう。胸を刺されたヴィオラの死体を見つけたんだ。

この時点で彼女は『既にマッドハウスが発生している』と考えた。

そのあと隠し部屋で男を殺せば、マッドハウスがもう一つ発生するだろう。

でも、アイラも含めて誰も二重のマッドハウスなんて思わないだろう。

マッドハウスが開放されるタイミングがズレていても、皆そんなものだろうと思うだろう」



ついでに隠し部屋は、ヴィオラが刺された現場から近かった。

これも好条件だ。

アイラがやったような厳密な測量を行わなければ、マッドハウスの中心がどこかなんて分からないはずだ。



アイラが長くため息をついた。


「バレなければ人を殺しても良いって思ったわけね」


「俺の考えだけどね」


「ちょっと腑に落ちた。そうかもしれないわね」

アイラは言った。






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