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第24話 検死

「若い男と女が二人で死んだってことは、……心中ってことなのかな?」

デニスが言った。


デニスとしてはそういう風に片付けたい気分なのかもしれない。


「ボクは違うと思う」

ジルが言った。

言っちゃったね。うん。



「でも二人とも死んでるんだぜ?」


「ボクはこの女の亡霊レイスから、嫉妬と強い怒りの感情を感じた。

黒い感情だった。怖かった。

心中じゃない。絶対違う」

ジルは表情を強張らせながら断固主張した。


嫉妬と怒りか。

心中する男女の心持ちとは違う気がするよ。



「その、、男の死因は失血じゃありません。たぶん毒です。

血の味で分かります」

ヴィオラが言った。


血の専門家の吸血鬼ヴァンパイアが言うなら、そうなんだろう。

俺は修行が足らない。はあ。


「ヴィオラ、どこから毒が入ったと思う?」

気を取り直して、俺はヴィオラに質問する。


「腕の傷からです」


「ここに残ってるナイフや剣には触らない方が良さそうね」

アイラが言いった。


「心中でいいような気がするんだけどなぁ」 

デニスがもう一度言った。



「心中じゃないですよ。殺人です」

気がつくと俺は言葉を発していた。


心中ではない。殺人だと思う。


いやでも、なぜ俺は殺人だと思ったんだ?

俺の頭の中でモヤモヤと情報が渦巻いている。


情報を整理しないと。



まずわかりやすいのは女の方だ。

女、袈裟懸けに切られる。

女、頭を割られて死ぬ。

この順番で間違いない。 

やったのは男と見て良いだろう。


次に男についてだ。

男の致命傷は腕から入った毒だが、背中も刺されているし、出血してるし、ポーションも飲んでいる。


ただし最後は、男、死ぬ。



「最初にやったのは男なのか女なのかだ」

俺は呟いた。


「女の方じゃないかしら」

アイラが言った。

「男は自分で上着を脱いだのよ。

この荷物の上に鎧と上着があるけど、血糊はついていない。

女に切りかかるつもりなら、鎧も服も脱がないわ」


そうか、そうだな。

モヤモヤしていた理由が分かった。

背中の傷だ。

男は油断していたんだ。

だから背中から刺されたんだ。


俺の中で思考がまとまってきた。



「まず上半身脱いだ男に背後から女が切りかかった。

その時、男についたのが背中の傷だ。

男は女に警戒していなかったから、背中を見せた。

傷口の深さから見て、女は一撃で男を仕留めるつもりだったが、仕留め損なった。

男は反撃して女に袈裟懸けに斬った」

俺は自分の考えを話した。


「その時の男はまだ、女を本気の本気で殺すつもりじゃなかったかもしれないわね」

アイラが女の死体を見ながら言った。


そうだな、傷跡から見ても袈裟懸の一撃はためらいがあったかもしれない。



「次に、女は正面から毒刃を使って男の腕を斬った。

女の殺意を理解した男は、今度は女に本気で殺すつもりで反撃した。

頭を剣で叩き割った。女は死んだ」


床には血のついた大きな剣が転がっている。


「男は出血はひどかったがまだ息はあった。荷物のポーションをあさり体を回復させようとした。

でも毒が回り死んでしまった」



「男と女は相討ちでお互いを殺したってことか」

デニスが言う。


「違う。殺意があったのは女の方だ。

男は正当防衛だ。

女への最初の反撃は殺意が鈍い。

でも、女はふたたび毒刃で男を仕留めようとした。

男は腕を傷つけられ、毒を食らいながら反撃した。


この事件で、殺人者は女で、被害者は男だ。

女が死んだのは、正当防衛で反撃されたからだ」


「私もそう思うわ」

アイラが言った。


「ボクも殺したのは女だと思う。

あの亡霊レイスは闇の存在。

ヴィオラの気配もアイツに比べればずっとまともだよ」

ジルが微妙にピントのズレたことを言う。


「糞ッタレのジル、あんなダメな新人ルーキーと私を比べないで!」

ヴィオラは反論した。

ヴィオラの意見はもっともだと思うよ、ジル。




その時、カタカタと歯を鳴らす音がした。


「ヤアヤア、イイカナ」

壁からひょいと頭蓋骨が現れた。


「マッドハウスガヒライタヨウダヨ」


マッドハウスが開いた。

ということは、これが殺人事件の真相か。


「そんなの見に行けばわかりますよォ。

役立たず」

ヴィオラが言った。


「コノヘヤハスキニツカッテイイヨ。

ツギニダンジョンニハイッタラ、キミト(ここで頭蓋骨はアイラを見た)、キミ(ここで俺を見た)、ココノカリノアルジダヨ」


「仮の主って何よ、ってこの部屋?

つまりダンジョン内に拠点を持てるわけ?

あそこに泉があるから水も確保できる。

ここでキャンプをすれば探索の幅が広がるわね……」

アイラは何やら考え込んでいる。


この部屋の隅には小さな湧き水らしき噴水がある。


「トビラノアケカタハシッテルネ。ジャアネ」


言いたいことだけを言って頭蓋骨は壁に引っ込んだ。


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