第22話 オバケが出るなんて聞いてない
「#ナ'アア゙:ナ゙タ~¿~コド¿、↓√シヌノハ↓√イヤ、※タシハワタシワタシハ」
半透明の何かが、呻くような声を上げて空間を縦横無尽にに駆け回る。
「従兄弟の再従兄弟の又又従兄弟殿、亡霊がいるなら言ってくださいよ!」
ヴィオラが頭蓋骨に文句をたれている。
「半月に亡霊って何よそれ!」
「扉なんて開けなきゃ良かったんだよ!!」
「透明なんてずるいぞ」
亡霊はとても危険な魔物だ。
何しろ物理攻撃が一切効かない。
一方で、亡霊の攻撃は生者の精神を削る。
向こうはやり放題、こちらはやられ放題なのである。
「聖なる息吹!」
ジルが魔術を使った。
ジルの足元から聖属性の光が湧き出る。
残念だが効いてない。
亡霊は高く舞い上がっただけだ。
「クソクソ!ジルのクソったれ!
クソクソ馬鹿エルフ!いい加減にして!
もうちょっとズレてたら私に当たってました。
私は聖属性でダメージ食らうんです!」
ヴィオラが喚く。
聖属性は亡霊も含めて生ける死体に絶大な攻撃力を発揮し、一方で人間を含め生物には何も影響がない便利な魔術だ。
しかし、吸血鬼であるヴィオラは聖属性でダメージを受けるはずだ。
「やめろ!ジル!ヴィオラを巻き込むな!」
俺は叫んだ。何やってんだ!
「ボクはヴィオラには当たらないようにやった。
だいたいヴィオラはこの程度じゃ滅びない。
そしてアレは生者の敵」
ジルの声は妙に平坦だ。
顔は真っ青で、大きな目をますます大きく見開き、動きは強張っている。
どう見ても普通ではない。
「ボボン、ジルをお願い。
ジル、聖属性魔術はボボンが危ない時だけ使うのよ!」
アイラが言った。
「↓√↓√↓√」
再び亡霊が降りてきた。
と、デニスが俺と壁の間に潜り込もうとする。
「おっ俺みたいな魔力の弱い一般人は亡霊に弱いんだよ。
魔術師さんと違って」
おいやめろ。
騒ぎに引かれて亡霊がこっちに来たじゃないか。
「エド様ァ!」
ヴィオラが俺と亡霊の間に割って入った。
ヴィオラは亡霊に向かって戦棍を振り回す。
「このド新人生ける死者、あんたなんか従兄弟でも再従兄弟でも又々従兄弟でもないんだからね!
新入りで全然修行足りないんだから」
亡霊はヴィオラの戦棍を避けているようだ。
効くのか?効いてるのか?
「ヴィオラ、亡霊を仕留められるの?」
アイラが質問する。
「ゴメンなさーい。捕まえるのがせいぜいですゥ」
ヴィオラが答えた。
ヴィオラは亡霊を捕まえられる。それなら。
「ヴィオラ、亡霊を捕まえてくれ。その隙に聖属性で仕留める」
「ヤですよぉ!
私のそばで聖属性を使う気ですか!
だいたいジルはノーコンじゃないですかぁ」
「俺がやる。俺も弱いけど聖属性魔術が使える。
ヴィオラに当たらないように気をつけるから」
「エド様ですか?
エド様でもだめです。聖属性は痛いんです。ヤなのー」
俺とヴィオラが話している間に亡霊はまた俺たちの回りを飛び回りだした。
「ブゥッ」
アイラは口に含んだ聖水を亡霊に向かって吹き付けた。
亡霊はヒョイと避けてまた俺の方へ向かってきた。
「うひゃー」
デニスが俺の側を離れてボボンとジルの元へ向かう。
それでいいよ。
三人で大人しくしていてくれ。
亡霊は俺に向かってくる。
「聖なる拳」
俺は両手の拳骨に聖属性を纏わせた。
たいした力ではない。
俺が使える聖属性魔術はこれだけだ。
亡霊はちょうど良いターゲットを失い、ぐるぐる回りだした。
ピシピシと音がする。
砂埃が舞い上がってる音だ。
この亡霊、風を起こせるのか?
「わかりましたっ、エド様、やりますぅ。
私がアレを押さえつけますから、その隙にエド様がやっちゃってください。
でもでも、聖属性が私に当たったら、また血をくださいね。
万が一、力加減に失敗して私が灰になったら、皆さん全員でコップ一杯ずつで良いので灰に血をかけて下さい。
復活するかもしれません。
それでも復活しなかったら、灰を集めてちゃんとお墓を作ってください。
お墓にはスミレの苗を植えてたまにで良いので思い出してくださいー」
「分かった、ヴィオラ。約束する。
だから亡霊を捕まえてくれ」
ヴィオラは亡霊を追いかけて走りまわり、最後はジャンプで亡霊の腕を捕まえた。
亡霊は暴れたが、ヴィオラの方が強いようだった。
ヴィオラは反対の腕で亡霊の胴体を抱き込む。
「えらいぞ、ヴィオラ!」
「聖なる拳」
俺は亡霊の足?を掴んだ。
ゾクッ。
「∋※≦≦≮∑」
一瞬マナが吸い取られる。
ここで怯むわけにはいかない。
「聖なる拳」
もう一度、術を使う。
聖属性を亡霊に送り込むように。
「※±∞※±∞※∞∞∞」
亡霊は明らかに苦しんでいる。
逃げようとするがヴィオラが離さない。
「聖なる拳」
三回目の魔術て亡霊は消えた。
「エド様ァ……」
ヴィオラは無傷である。だよね?
俺は、俺とヴィオラは、亡霊に勝った。
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