表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/27

第10話 誓約

「で、エドモン。あなたはいったいどうしたいのよ?」

ひとしきり悪態をついた後、アイラは言った。


「俺はこの吸血鬼ヴァンパイアから話を聞きたい。

俺はこの死体に借りがある。

なによりマッドハウスを解除するためだ」


ガッ。

足音が止まる。


「……どうやって?」


「魔術師組合の資料で吸血鬼ヴァンパイアを一時的に支配する方法を読んだことがある。

それを使う」



魔術師組合の記録によれば、吸血鬼ヴァンパイアは血を介した誓約で縛ることができる。


誓約の条件の1つは吸血鬼ヴァンパイア自身を同意させることだ。


吸血鬼ヴァンパイアにして冒険者ヴィオラ、君が誓うなら血を分け与える」


死体ならぬ、吸血鬼ヴァンパイアの冒険者ヴィオラはかすかに、でもはっきりとうなずいた。



では儀式の準備だ。

体内から血を抜く魔術というものが存在する。

血液は様々魔術の触媒に使われる重要物質だが、刃物で体を傷をつけるのは痛いし感染症の危険もある。

そんな中で開発された魔術である。


採血コレクトブラッド

上腕の内側の静脈に穴を開け、魔術で作った管を通す。

俺の腕から血液が滴り落ち、下のコップに溜まりだした。


コップは落ちてたモノを使った。

ヴィオラのモノだろうか?



誓約の条件の2つ目は、誓約者の、今回は俺の器を超える誓約をしないこと。

俺の器というのがどれくらいかだが。


実は良く分からない。器って何だ?

要は吸血鬼ヴァンパイアにとって不合理な約束は負荷が大きく、反抗される危険が増すということだろう。



「期限は俺がダンジョンから出るまで。

俺はマッドハウスが解除されたら、なるべく早くダンジョンから出るつもりだ」


まず期限を定めた。

時間を限定することで誓約の力が増す。



「誓約の内容は、他の冒険者を傷つけるなかれ。

不要に争うなかれ。

偽証するなかれ」


これらはダンジョンに入る時に立てる『冒険者の誓い』の一部だ。

今マッドハウスが発生していることから分かるように、必ず守られるわけではないけれれど。


吸血鬼ヴァンパイアヴィオラは冒険者の誓いと血の誓約で二重に縛られる。

そうそう破れないはずだ。

あとは。



「最後に、ヴィオラが次にダンジョンを出るまで生きた冒険者に吸血の牙を立てることなかれ」

吸血鬼ヴァンパイアの本能に反する誓約だ。

でもここは譲れない。


吸血鬼ヴァンパイアヴィオラは頷いた。



俺はコップからヴィオラの口に血液を流し込む。


変化は劇的だった。

最初の血の一滴が唇についた時にまぶたがピクリと動いた。

次の一滴で白い頬にかりそめの赤みがさす。

三滴目で、細い両腕が動き、胸からナイフを抜いた。

周囲の血溜まりの血は沸き立ち逆流し、胸の傷口に吸収された。


薄いプラチナ色の長いまつ毛に縁取られたまぶたが開く。

瞳は黄昏の紫色ヴァイオレットだった。



「誓約します、ご主人様。

約束します。

だからコップの残りをいただけますよね」


薄い金髪プラチナブランド美少女吸血鬼ヴァンパイアヴィオラは起き上がるなり言った。


「あ、ああ、いいよ」

俺は気圧されつつなんとか応えた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ