うん、本当にこれが異世界ってやつだ。
「すみませんでした。」
地上に降りた後、とりあえず、私は美青年さんと、彼の隣に飛んできた、これまた美青年さんに頭を下げた。
ごっちゃになりそうなので整理しておく。
美青年Aさんは、私を抱きとめた人。
そしてあとから来た美青年Bさん。
こっちはスカイブルーの髪と瞳の、やんちゃっぽい顔の人。
美青年Aのほうがすました顔をしている。
それにしても紫の瞳だの、スカイブルーの髪だのって。
周りの人を見回してみるとみんな赤だの青だの華やかな髪や眼をしているから、この国の人はきっと不思議な色素をもっているんだろう。
美青年ABなんて空中飛んでたし。
どうもここお城っぽいし。
私の周りをがっちり固めてるのは、カッコいい騎士たちだし。
あれだよね、これこそ、異世界だよね。
あらまあ。本当に。どうしましょ。
「・・・・・い!!おい、聞いているのか!!」
「あ、すいません、もう一度お願いします。」
「ダイムラーの王直々に助けてもらった挙句、無視とはいい度胸だな。」
美青年Aが怒ってる。
けっこう怖い。
美形って怒っちゃだめだよね。
「・・・・だから名前は何だと聞いている!!それとも名前もないのか!!」
「まあ、まあ、ギルバート王。そんなに怒ってしまったらこの少女もすくんでしまいますよ。」
美青年B優しい。でもさっきこの人美青年Aにためで話してなかったっけ。
・・・そろそろだんまりもやばそうなので自己紹介ぐらいしようか。
「失礼いたしました。わたくし、佐藤なつきと申します。佐藤が姓でなつきが名前です。先程は助けていただいたのにもかかわらず無礼を働き、申し訳ありませんでした。
失礼を承知で伺いますが、ダイムラーとはどこの国の名前でしょうか。不勉強で申し訳ありませんが聞いたことのない名前でして。」
私だってだてに社会人やってない。
「信頼できそうなお姉さん」の仮面をはっ付けてご挨拶。
ま、今からこんな真似したって遅いかもだけどね。
しかし!!王とか呼ばれている美青年Aは、少しは動揺してくれたみたいだ。
「ナツキ・・・・か。変わった名だな。」
「あなたはどこからいらしたのですか?」
全く動揺していない美青年B。こっちは食えないぞ。
どこから来た・・・・ってどうしよう。。
「異世界、と言ったら、信じてくださいますか?」
その瞬間、空気がフリーズした。
☆・★・☆
落下物は、少女だった。
しかも彼女の髪は、漆黒だった。
あの、漆黒。
急いで抱きとめる。
そのやわらかい感触に、胸がどくんと波打った。
一瞬固まっていた少女は、こちらを見た。
瞳も漆黒だった。
吸い込まれそうなほど美しい瞳をしていた。
体中の血が、下腹部に集まるのを感じないわけにはいかなかった。
少女はすっと息を吸い込んだ。
俺は、この少女の声を聞くのを渇望した。
そして少女は、
叫んだ。
この俺の顔を見て!!叫ぶ!!
まるで怪物にあったようではないか。
なんとか少女を落ち着かせ、地上に降りる。
少女とはいえ、不審者には変わりないため、尋問をする。
少女は不思議そうに俺たちの顔をじっとみつめる。
その視線にまたも血が波打つ。
思わず、荒っぽい声を出してしまう。
またアルバートが面白そうにこっちを眺めるからいけないんだ。
そして少女はしばらくうつむいたかと思うと、人形のようなほほ笑みを顔に浮かべて、慇懃な口調で話し出した。
人の顔をみて叫んだかと思えば、今度は丁寧な物腰で接してくる。
何なんだ。
何なんだ、この女は。
ナツキ・サトウ。耳慣れない名前だ。
そしてアルバートが彼女の出身地を聞くと、
彼女は異世界から来たと言った。
皆が息をのんだ。
漆黒の髪に瞳。
そんな不思議な容姿をもった少女が千年に一度異世界から訪れる。
彼女の心と身体を手に入れた者は、世界を手にする。
彼女は「黒星の御子」と呼ばれる。
そんな伝説がある。
昔話。
あり得ない話。
そう思っていた。
本当に現れるなんて、思ってもみなかった。
それもまさかこの俺の眼の前に。
黒い髪。
黒い瞳。
名前はナツキ・サトウ。
くそっ俺はしかもこいつに一目惚れしてしまったようだ。