始まりの村の日々
デビル・ドラゴンの襲来とヤマトの技術である『体妖術』を知った翌日。
ぼくは変わらず、朝の水やりをしている。
今日は特にこれといったことがないのんびりとした日だ。
ところで、ギャリガンさんの教会作りはステンドグラスの材料と必要な家具はラーブさんが調達をしてくれて、揃え次第再開する予定だ。
昨日の作ったおかずラー油とマヨネーズを食べたのだが、まさに絶品だった。
今度は大量に作ろう。
そして、ヤマトの技術である『体妖術』を知った時はかなり驚いた。
魔法が使えない代わりに妖術を体に纏わせて、あたかも武器や鎧のように使う戦闘術か。
いまだに魔法が使えない僕でもできるのかな?
機会があれば聞いてみよう。
さてさて朝の水やりが終わったので、このまま畑で新しい野菜を植えることにした。
種を植える準備をしていると、誰かが僕に声をかけてきた。
「おーい、村長つぁーん」
僕にあいさつをかけてきたのはオーク族のパンチャだ。
さらにニグリと蒼壱郎にガフフもいる。
中々珍しい組み合わせだ。
何か僕に用があるのか?
「みんなおはよう。珍しい組み合わせだけど、どうしたの?」
「今からパンチャ殿とニグリ殿に農作を教えてもらう所でござる」
「俺達のところで薬草を育てているんだけど、なかなか思うように育たなくてな。そこで農作が得意なニグリさん達にお願いして農作の仕方を学ぼうってわけよ」
「へぇー」
「ところで村長さんはここで何を?」
「今から新しい野菜を植えるところなんだ」
「新しい野菜?」
「うん。白菜って言うんだ」
「ハクサイ?変な名前だべな」
「それって食べれるのか?」
「ははは、そうだね。他にも植えるものがあるんだが、蒼壱郎達はニグリ達に農作を教えてもらうのだろう?だから僕一人で大丈夫だよ」
「分かったでござる。村長殿も気をつけるでござるよ」
蒼壱郎たちと別れた後、僕は黙々と種を植えた。
今回植えたのは、白菜、ニラ、野沢菜、キュウリ、さらに果樹園には、デーツを植えた。
デーツに関しては、実を乾燥させて保存食として置くことができるが、これはある調味料を作るために植えたのだ。
ある調味料というのはデーツの実ができてからのお楽しみにしておこう。
植えた後は、収穫できる大きさになった野菜や果実を収穫した。
もうそろそろ冬に近づいているので、今後は休耕を視野に入れていくとしよう。
収穫をしたあと、僕は自宅に戻った。
今から朝ごはんを食べるためだ。
今日の朝ごはんは蒸したジャガイモだけだ。
本当はご飯を食べたいのだが、先ほど言ったように冬が近いので、冬でも食べれるようにしばらくは節約をしているわけだ。
しばらくガマンガマン。
朝ご飯を済ました後、僕は外へ出た。
ここ最近、村全体を見ていないので、散歩がてら巡回した。
村の様子は特に変わりはなくいつも賑やかだ。
村人達は僕を見るなり挨拶をしてくれる。
うん、とても気持ちがいい。
ふと、思い返すと、僕が来た時には殺風景で草木が生え放題だったこの廃村を一年もたたずに多種多様の人々が何不自由なく暮らしていて、なおかつ活気に溢れる村へとなっている。
今だと考えられないことを僕のスキルと様々な人たちと力を合わせて村の復興を成し遂げたのだ。
だが、正直に言うと、あまり実感はない。
僕はあくまでも人気のないところでゆっくり暮らすつもりが、気づけば約四百人を超える大きな村へと成長した。
今後もこの村は成長し続けて、世界一の村になっていくのもそう遠くはないと思う。
話は長くなってしまったが、本題の村の巡回の話に戻ろう。
村の景観などは問題はなく、道を歩いていると、とある場所に着いた。
「あれって」
僕が目に付いたのは建設途中の建物と大きく開けた土地だ。
「ここは確か・・・、あっ!」
そうだ!ここは学校と運動場じゃないか!
ここ最近は、教会作りやデビル・ドラゴンの襲来の対応をしたため、学校建設を後回しにしていたようだ。
これは早急に建設を再開にしなければいけないな。
今後、会議を行う時に議題としてあげよう。
そう考えていると、気づけばお昼になっていたので、自宅へ戻ろうとした時、誰かの声が聞こえてきた。
「空に轟く雷よ。悪しき者に神の罰を与えたまえ。『サンダー』」
呪文の詠唱を終えたと同時にドーーーンっと雷が落ちた。
呪文を唱えたということは、ここに誰かいるのだろうか?
僕はその音を頼りに近づいていくと、そこにいたのは大きな杖を持っているエリールだ。
エリールが持っている杖は確か、メランこと邪神竜の戦闘の時に持っていた杖のようだ。
ここで特訓でもしているのか?
僕はエリールに声をかけた。
「エリール」
「あら、練?どうしてここに?」
「ただの散歩。たまたま声が聞こえたからちょっと寄ってみたら、エリールがいたから声をかけたんだよ。エリールはここで何をしているの?」
「ちょっと魔法の練習をしていたところなの」
「どうして?」
僕の質問にエリールは黙ってしまったが、少し間が空くとエリールは口を開いた。
「以前、メランと戦ったでしょ?その時に私の実力の差を知ってしまってね。こうして時間があればここで練習をしているの」
「そうなんだ。ところで話は変わるけど、エリールが持っている杖は何なの?」
「ああ、これ?これはね。私が十二歳の誕生日の時に、プレゼントとしてお父様から貰った大切な杖なの」
「エリールにとって大切な物なんだね」
「うん。お父様もお母様もいない今、私にとって命よりも大事な物なのよ」
エリールの杖の話を聞いて悲しい空気になってしまったが、エリールは顔色を変えていない。
むしろ、溜まっていたことをスラスラといえてスッキリしているようだ。
エリールの話を終えたところで、僕はエリールに一緒に帰らないかと誘った。
「もうそろそろお昼になるし、一緒に帰ろっか」
「うん」
エリールの返事をした後、僕と一緒に自宅へと戻った。
約一時間後・・・。
僕はエリールと一緒に昼ご飯を食べ終えた後、僕はエリールと一緒にある場所へと向かった。
数分後・・・。
僕達が着いたのは、前にレンコンを植えた水田にやってきた。
今日はレンコンの収穫を行う。
レンコンは泥の中に埋まっているので本来は、強力なポンプから出る水でレンコンを取り出すのだが、この世界は魔法があるので、エリールの浮遊魔法を使い、レンコンに傷一つつかずに収穫できた。
やっぱり魔法って便利だな。
収穫を終えた後、僕とエリールは家へと戻り、一緒に保存食づくりをした。
今回作ったのは、リンゴのジャムとキンカンのシロップ漬け、カリンの砂糖漬け等、果物の保存食を作った。
完成した保存食は各地区のみんなに配布した。
これで、しばらくはビタミン不足にはならないはずだ。
少し時間が空いたので今度はある料理を作ることにした。
僕は手伝いとして、ショルヌとニグリを呼んだ。
「あら村長さん。私はどうすればいいのですか?」
「オデは?オデは?」
「えーと、ショルヌさんはこのゆでたジャガイモを潰すのと、ニグリさんはジャガイモをこの金網で切ってください。僕は切った玉ねぎを炒めます。お願いできますか?」
「「はい!」」
こうして食材の下処理と調理をしたところで、次の工程に入る。
次は、潰したジャガイモに炒めた玉ねぎと塩、コショウを入れて一緒に混ぜる。
次に、デカコッコーの卵を溶いて、村で焼いたパンを粉々にしてパン粉にする。
最後に、混ぜたジャガイモを楕円形にし、溶いた卵を纏わせて、パン粉をくっつけて、熱した油できつね色にカラリと揚げれば、みんな大好きなコロッケの完成だ。
次の料理っと言っても、ニグリにお願いして枝状にカットしたジャガイモを揚げて塩をかけるだけだ。
これでフライドポテトの完成である。
完成したコロッケとフライドポテトを試食を兼ねて僕とエリールとショルヌとニグリと一緒に食べた。
「うーん。このコロッケってカリカリでホクホクして美味しい」
「うんみゃー。これはなかなかいけるべ」
「これすごくおいしいわ。何個も行けちゃう!」
コロッケはかなりの好評だ。
僕もコロッケを一個食べた。
味は申し分ない。
だが、味にコクを出すひき肉が入っていない。
なぜ入っていないかというと、そもそもひき肉にする調理器具がないので、ジャガイモと玉ねぎだけで作った。
だけど、かえって肉の旨みが無い分野菜の甘味を感じて美味しかったので文句はない。
次はフライドポテトの味見をした。
「うん。これもおいしいわー」
「枝状に切ったジャガイモを揚げて塩をかけただけなのにうまいだ~」
「味は素朴だけど、これもおいしいー」
フライドポテトも好感触だ。
どうやらこの世界のジャジャガガもといジャガイモは蒸したり、焼いたりして食べるのが一般的のようで、揚げたり潰したりして食べたりしないそうな。
なるほど、これは面白い事実だ。
皿に山のように盛ったコロッケとフライドポテトがあっという間に空になった。
ともあれ、今回の料理はかなりの出来だ。
気付けば夕方になってきたので、ここらで解散し僕とエリールは料理の後片付けをして、晩御飯の準備でもしておこう。
今度はカレーを振る舞った時のように試食会を兼ねた村の設立記念の祭りでも行うことにしよう。




