ヤマトの秘密
魔獣の森に現れたデビル・ドラゴンを迎撃し、命からがら僕たちは村へと生還を果たした。
村に着くと心配した親達が待っており、すぐに子供達と合わせた。
よほど怖い思いをしていたのか、それぞれの親を見て安心したのかすぐに泣き始めた。
とはいえ、知らずにケガをしているかもしれないので、念のため子供達全員に回復魔法が使えるエリール達に、回復魔法をかけてもらってから帰宅した。
ふぅー、やっと終えることができた。
もうそのまま家に帰って寝たいぐらいだ。
ところで、危うく襲われそうになった八家の方々はというと、千夏は泣き疲れて僕の背中で眠っており、蒼壱郎は気を失い、月さんは激しい動きをしたのかすぐに寝てしまったので、ミョルニルに抱えてもらっている。
蒼壱郎達は一度、僕の家の空き部屋に寝かせて安静してから、蒼我さんにお迎えに来ていただこう。
ひとまず仕事が終わったので、自室に戻るため、部屋の扉を開けると、そこにはことも達に回復魔法を施し終えたエリールがいた。
何か僕に用事があるのかと思い、声をかけようとしたら、エリールはいきなり僕に抱き着いた。
「練!私に声かけずに行って。もう心配したんだから!」
「ごっごめん・・・」
「うぅ・・・」
エリールが言うことはごもっともだ。
緊急事態とはいえ一人でも声を掛けていたら、もう少し早い対処ができたかもしれない。
これは、今後の課題としておこう。
「・・・練」
「ん?」
「むっ・・・」
エリールは目を閉じながら僕にキスをせがんできた。
うっ、ここで拒否すると気が引けないので、僕もエリールにキスをしようとしたら、階段の方から誰かが駆け上がる音が聞こえた。
「月!蒼壱郎!千夏!!!」
「・・・・・・あっ」
「あっ・・・」
そこにやってきたのは蒼我さんキリヱさんだ。
月さん達のことを聞いてやってきたようだが、まぁいい雰囲気の時にやってきたので少々気まずい空気に立ってしまった。
数分後・・・。
「よかった。みんな無事でいてくれて。もしものことがあったら、私は・・・私は・・・」
「父上、泣きすぎでござる」
「そうよ。私は大丈夫だから」
「千夏もだよ」
蒼我さんとキリヱさんが部屋に入り見守りをして、数分経ったら目を覚まし、今は家族団らんと話している。
今はそっとしておこう。
僕とエリールは蒼我さん達のいる部屋を出ようとした時、蒼我さんが声をかけてきた。
「村長。私の息子と娘を助けていただきありがとうございます!なんとお礼をしたらよいのか」
「いやいやいや。今回は不慮の事故でしたからお礼を言われるようなことは。むしろ僕の方からお礼したいですよ」
「村長殿。ご遠慮なさらずに」
蒼我さんのお礼にちょっとうれしいが、一番の活躍は変な奥義で倒した月さんだ。
また後日、月さんには何かお礼の物を送ろう。
こうして蒼我さんと話をしていたら、また階段の方から駆け上がる音が聞こえてきた。
『今度は誰なのか?』
そこにやってきたのは、子供たちと一緒にいたダウストンとデビル・ドラゴンの討伐についてきたラーブさんがやっていた。
一体、何の用事なんだ?
僕はダウストン達に何の用なのか聞いてみる。
「ダウストンにラーブさん!?一体何の御用で・・・」
「村長。いきなりで申し訳ないが月さんはいらっしゃるか?」
「はい。私はここに」
ダウストンは月さんがいることを確認するとゴホンッと咳払いをした後に話し始めた。
「では単刀直入に申し上げます。月さん、先ほどのデビル・ドラゴンを倒した時のあれは何なのですか?明らかに我々が知る魔法ではないもののようなのですが、あれはどのようなものなのですか?」
「・・・」
ダウストンの質問に月さんは沈黙する。
そこに間髪を入れずにラーブさんも月さんに尋ねる。
「月さんやお主のあの力。魔法にしては少々おかしいし、初めて会った時からお主達から異様な雰囲気があったのじゃが、そろそろ話をしてもいい頃じゃないかのう?」
続けてラーブさんの質問にも月さんは沈黙した。
確かに邪神竜と同等のデビル・ドラゴンを一撃で仕留めたあの技はなんなのか気になっていたところだ。
ここ最近はヤマトの事を聞くとすぐにはぐらかしてしまうので、そろそろ話をしても良い頃だろう。
しばらく場の空気は沈黙し重たくなったが、ここで沈黙を破ったのは月さんではなく蒼我さんが口を開いた。
「わかりました」
「蒼我さん?」
「父上?」
「あなた!」
「いいんだ。みんなにあの技を見たからには正直に話をしなければならない。おばば様も宜しいでしょか?」
蒼我さんの話を聞いていたキリヱさんはうんとうなずき口を開く。
「そうじゃな。そろそろお主達にもわしらの事を話せばな。わしは逃げも隠れません!あんたが納得いくまで好きに話すが良い」
「ありがとうございます」
おばば様から許しが出たようだが、なんのことなのだろうか?
ますます気になる。
少し考えていると、蒼我さんが僕に声をかけた。
「村長」
「はっはい!」
「先ほどの事についてですが、まず各地区と種族の代表者を呼んでいただけませんか?」
「構わないけど。どうして?」
「それは代表者が集まってから私がお話しします」
蒼我さんに聞けば聞くほど気になることばかりだ。
だが、今は蒼我さんの指示に従おう。
数分後・・・。
蒼我さんの指示で僕の家の大広間に各地区と種族の代表が集められた。
後、ここにミョルニルも同席したかったのだが、先ほど月さんによって倒したデビル・ドラゴンの遺体を回収しに行っているところだ。
こうしてみんなが集まったところで、蒼我さんから今回の集会のあいさつをする。
「みなさん。お忙しいところ集まっていただきありがとうございます。今回集まっていただいたのはほかでもありません。先ほど、この森に現れたデビル・ドラゴンを私の妻が使った技の事について話してまいります。よろしくお願いします」
蒼我さんの挨拶が終わると同時に、拍手が上がる。
拍手が静まると、蒼我さんが今回の件について話し始めた。
「私の妻が使ったこの技は古来よりヤマトに伝わる秘伝の奥義『体妖術』と言います」
蒼我さんの話で僕も含めて少しざわめいた。
蒼我さんの口から出た『体妖術』となる言葉。
一体何なのかと色々疑問が残るが、蒼我さんが言うのだから間違いはない。
そして、蒼我さんの口から体妖術とヤマトの歴史について語られた。
昔この地がヤマトと言う名前が無かった時、この地には人間しか住んでいなかったのだが、他の大陸から『妖怪族』、『鬼人族』、『妖狐族』、『忍狸族』、『竜人族』となる者達がこの地にやってきて、領地をかけた大きな戦いが起きたそうだ。
これは戦争はのちに『六族大戦』と呼ばれるそうな。
その戦いの中でのちの初代帝である神の使いがこの地に現れ、各種族の代表と共に会議が行われ、この戦争を終わらせることができたという。
以前この村にやってきた政義が言っていたのはこのことなのか。
そして体妖術というのは、人間の内に秘めている妖術(他で言う魔力)を放出し、それを自分の手足のように使う技なのだそうだ。
「なるほど。『体妖術』・・・。それが蒼我さん達が隠したかったことですか?」
「はい。この体妖術は悪しき者が悪用せぬよう公の場では使用せず、当時の帝様の命で鎖国していたというわけでございます」
ほぉ、そのような理由で鎖国をしていたというわけなのか。
「それじゃあ。前にやってきた政義さんのことは大丈夫と言っていたのはその体妖術が使えたからってことなのかな?」
「はい。おっしゃる通りでございます。政吉は体妖術の習得が早かったため安心できたと言うわけです」
「蒼壱郎も使えるの?」
「いえ。蒼壱郎はまだ練習中の身のため習得できてません。」
「そうか・・・」
なるほど。これでヤマトの事情と鎖国のことについてはある程度分かった。
しかし体妖術となるものがあるとは、まだまだヤマトについて色々聞きたいことがあるが、蒼我さんの事を考えて、ここでお開きとしよう。
話を聞き終えた代表者は各自持ち場へと戻り残ったのは、蒼我さんと僕とエリールだけになった。
少し間を開けたと思ったら、いきなり蒼我さんが僕に向かって土下座をし謝り始めた。
「村長殿!!!」
「はっはい!」
「今まで黙って申し訳ございませんでした。ですが、これは伝統と村の者たちを守るため必要な事だったのです。どうかお許しください」
いつも冷静な蒼我さんの迫力ある土下座で僕はたじろいでしまった。
だが、こんなことで頭を下げるのは少々やりすぎるような気がする。
「そっ蒼我さん!お気持ちは十分ですから、頭をお上げください!」
僕が蒼我さんに頭を上げるよう催促をすると蒼我さんは頭を上げた。
「はっ!申し訳ない。私としたことが少々取り乱してしまった」
何とかいつもの蒼我さんに戻ったところで、僕は蒼我さんに話しかける。
「蒼我さん。今回、ヤマトに関する話をしていただきありがとうございます。今まで蒼我さん達のことが気になっていたので、解決できたので大丈夫ですよ」
「私も!今まで知らなかったヤマトのことについてたくさん知ることができたのですから、元気出してください」
「村長、エリールさん。ありがとうございます。この恩は一生忘れません」
ふう、これで前から気になっていたヤマトの秘密を知ることができた。
しかし、ヤマトには激動の時代があったとは思わなかったし、大まか流れとしては前にエリールから聞いた召喚戦争の内容とほぼ同じなのは気のせいだろうか?
まっ、この事はいずれ分かることだろうし、今はお昼ぐらいなので、デビル・ドラゴンの遺体を回収しているミョルニルが戻ってきて、少し休憩してから、前からやりたかったことをしておこう。




