立吹、魔物図鑑を読む
異世界に来て四日目の朝。いつものように畑に水をやりに向かう、畑の様子は二日目に植えた作物は腰ぐらいに成長していて、この調子だと明後日には実が付くだろう。昨日植えた作物も芽を出している。女神様が授けたスキルに感謝をしながら畑に水を撒いた。
昨日仲間にしたブレード・ディアーのリリは、まだ村の環境に慣れておらず小屋に籠っているようだ。食べやすいようにカットしたグナの実はまだ食べていないようだ。
今日することは、果樹の植え付けと書庫で魔物図鑑を読む予定だ。
畑とは反対の西側で果樹園の整地を行った。いつもと同じ方法で作業を行い面積は畑と同じ四百平方メートル(20メートル×20メートル)の場所を確保した。果樹はリンゴ・みかん・すだち・アケビ・栗・ブドウ・マスカット・カリンの苗を植え付けて食べて出てきたグナの実の種を植えた。
作業を終えた後すぐに読書家の家に行き書庫に保管している本をゴーレムたちと読み漁ることにした。さすが読書家、書庫の中にはざっと千冊以上の本があり押しつぶされそうな圧を感じる。
昨日ミョルニルが言っていた魔物図鑑がないか早速本棚を調べてみたが、一列に三十冊ぐらい難しそうな本があり中には『媚薬の作り方』や『必見!!王様のへそくり』など「誰が読むんだ」と、ツッコムたくなるような名前の本がたくさんある。
するとガロンが魔物図鑑を見つけて僕のところに持ってきてくれた。
その図鑑は厚さが十センチぐらいあり少しボロボロになっているが、読む分には問題がないようだ。
図鑑を外に持っていってミョルニルたちと一緒に読むことにした。
『昨日リリの親を襲った魔物は気になるが、まずは気になる魔物の解説を読んでいくか』
僕はページをペラペラめくっていく、しかし魔物の情報が少なく適当な説明が書いてあるし、ページに掲載している魔物の絵は某ハンティングゲームのようにデフォルトに描かれているので姿が思い浮かばない。
例えば、
『ジャイアント・デス・スコーピオン』
体長:三メートル
生息地:砂漠
特徴:殻が黒い
解説:砂漠にすんでいる巨大なサソリで頑丈なハサミでどんなものでも切り裂く、しっぽの毒針は刺されたらひとたまりもないぞ!絶対に近づくな!!!!
や
『ゴブリン』
体長七十センチ
生息地:いろいろ
特徴:肌は深緑で鼻が長い
解説:一匹では弱いが集団で襲われるとひとたまりもない。大の女好きなので女性を連れていくな!!
そのまますぎる解説ではっきりしない。しかしリリの親を襲った魔物の情報がない何かヒントでもないかと思いページをめくっていくと気になるページを見つけた。
『邪神竜』
体長:???
生息地:???
特徴:不明
解説:暗黒の心を持った竜の化身、暴れれば国一つ滅ぶ。邪神竜を止めるには対となる聖王竜に任せるしかない。
邪神竜?いかにも悪そうなドラゴンの名前だな。一体どのような魔物かわからない、ミョルニルは知っているのか?ミョルニルに聞いてみた。
「ミョルニルは邪神竜を知っているの?」
「ハイ、邪神竜ハカツテコノ世界ヲ破壊ノ限リヲ尽クシタ災厄ソノモノ、ダガ聖王竜ニヨッテ邪神竜ヲ滅ボシ世界ニ平和ヲモタラシタ。今コノ世界ガアルノハ聖王竜ノオカゲデス」
「聖王竜は今もいるの?」
「ハイ、今ハ『天空大陸アンビオス』ノ守護竜ヲシテオリマス」
この世界には空に浮かぶ大陸があるのか、しかし聖王竜か・・・一度は会ってみたいな。
その後、本来の目的であるリリの親を襲った魔物について一通り図鑑を読んでみたが、結局その魔物については載っていなかった。
ミョルニルの言った通りこの図鑑が発行した後に発見された魔物かもしれないな。
書庫にある本は多種多様で実におもしろい。機会があれば他の本も読んでみたいものだ。
作物の収穫の準備として建築スキルでルンたちと一緒に木箱をたくさん作ることにした。
僕が持っているスキルは一つの道具を複数出すことができ、ルンたちにハンマー・釘・鋸を渡して自分で木箱を作るように指示を出した。
作業を分担した甲斐もあって木箱は五十箱を完成させた。これで収穫の準備は万端だ。
明日は、木材以外の資源の確保と作物を保存する倉庫の建設を行うことにしよう。