国王陛下の依頼
僕が皆にカレーを振る舞ってから五日後の朝。
僕はいつも通りに畑の水やりをしている。
先日、作ったカレーが好評だったので次はシチューかお好み焼きでも作ろうかと考えている。
それはさておき、今の建設状況としては学校と遊技場はまだ半分しか完成していないが、運動場と公園は遊具を設置するだけだったので、それぞれ、シーソーと滑り台、鍛冶職人にお願いして作った高さが約三メートルのジャングルジムを設置した。
銭湯の拡張工事は、一度解体し、新しい木材と元々使っていた木材と組み合わせて一度に約三十人入る湯船が完成した。
あと、お湯を沸かすための自動で水をくみ上げる装置は木製の水車とある物を作くった。
まず、蒼我さんを含む鍛冶職人たちに鉄製のらせん状の柱とそれを組み合わせる歯車の製作をお願いし、その二日後に完成させた。
「村長さんよ。この変な柱を完成させたけどよう。これを使って何するんでい?」
「まぁ見てて」
銭湯の横の水路に水車を設置し、お湯を沸かすためのタンクに先ほど完成させたらせん状の柱と柱の大きさに合わせて中をくりぬいた丸太に入れて、後は水車と柱に歯車を取り付けてかみ合わせれば、これで完成だ。
「ゴ主人様、コレハ一体何ですか?」
「これは『アルキメデスのポンプ』といって、水車の力でらせんが回転することで、水を上に運ぶことが出来るんだ」
「ヘェー、ゴ主人様ガイタ世界デハコンナ装置ガアルンデスネ。羨マシイ限リデス」
これで銭湯の拡張工事が完了した。
ちなみに、僕の家の建築工事の進捗状況はというと、外壁が完成してあとは屋根を取りつけるのと、内装工事をしなければならないので、あと一週間ぐらい掛かるそうだ。
これが昨日までの出来事だ。
さて僕が畑の水やりを終え、トリ丸達の小屋の掃除をしようとした時だ、突然ルンが慌てて僕のところにやってきた。
ルンは僕に何か訴えているが、やっぱり何言っているかわからない。
するとルンが僕のズボンを引っ張り旧噴水広場の方へ指をさした。
どうやら旧噴水広場で何かあったようだ。
ルンの慌てっぷりに緊急性を感じ、ルンの案内の元、僕は旧噴水広場に向かった。
旧噴水広場に着くと、白い馬二頭と立派な馬車が停まっており、エリールと蒼我さんにダウストンを含む人たちが集まっている。
「えりーる、みんな。どうしたの?こんなに集まって、しかも何でこんな立派な馬車が?」
「あ、練。それが・・・」
エリールが僕に話しかけた時、どこか聞きえのあるチャラい声で話しかけてきた。
「やぁ、若村長君。元気にしていたかい?」
目の前にいたのは、黒髪で長髪の男性だ。
「げっ!お、お前は!!!」
確か、数日前にこの村に国王と共にやってきて、開口一番に女に口説いた騎士団の一人、ナルジャンだ。
「やだなぁ、私と会うのは二回目なのに、そのセリフはないでしょう」
「あ、すみません。ところで今来ているのはナルジャンだけですか?他の騎士団の皆さんはどうしたの?」
「あぁー、そのことかい?本当なら国王陛下と共に来る予定だったんだが、急な用事が入ってね。他の騎士団の連中も手が離せない事案で手一杯になってしまってな。そこでたまたま手が空いていた私がこの村に出向いたわけだ」
「ははは、そうなんですね・・・」
騎士団の方も色々と大変なんだな。
「あぁそうだ。今日は何のご用件で来られたのでしょうか?」
「おっと、そうだっだな。今日この村にきたのは、延期した村の契約の手続きするためだよ」
「あっ、そうだった。すっかり忘れていたよ。じゃあ早速お願いします」
「うむ、それではこの契約書の必要事項にサインを書いてくれ」
ナルジャンから一枚の契約書を渡された。
何か問題がないかじっくりと読んだ。
契約書には国王直筆のサインと以前に僕が提示した条件のほかの項目が書いていた。
必要なサインを書き終えて、書き終えた契約書をナルジャンに渡した。
「うむ、これで契約完了とし、晴れてこの始まりの村は正式に村として承認し、我らエストラル王国の加盟することになった。おめでとう!若村長君!!!」
ナルジャンの歓迎の言葉と共に右手を差し伸べたので僕も右手を出して握手を交わした。
ナルジャンと握手を交わし、僕はそのまま他の作業をしようとした時だ。
「ちょっと待ってくれないか?」
「急にどうしたんですか?ナルジャンさん」
「実は君に紹介したい人がいるのだが構わないかね?」
「大丈夫ですよ」
僕に紹介したい人とはいったい誰のことなのか?
すると停車していた馬車の扉が開き、そこから見たこともない男性が一人降りた。
男性の容姿は僕より身長は小さく、お腹から小さい山のような腹が出ている小太りで、黒光りのタキシードで着飾っている。
一体何者だろうか?と考えていたら男性から挨拶してきた。
「初めまして。我輩はヨーヌルト・グッドマン。エストラル王国の商人ギルドのギルド長を務めておる。」
え?この人が商人ギルドのギルド長?なぜそんな人が僕に紹介したのだろうか?
今は考えている暇はないので、僕は挨拶で返した。
「はっ初めまして。僕がこの始まりの村の村長の立吹です」
「おぉー、そなたがこの村の村長かね。話は国王から聞いていたが、こんなに若いのに村の村長を務めているとは感心じゃのう」
「いえいえそんなことは・・・ってか、そもそもなぜギルドの偉い人がこの村に?」
「それはだな・・・」
なぜこの村にギルド長のヨーヌルトさんがやってきたのか本人の説明によると。
以前、国王陛下が村の訪問から城へ帰ってきた時、たまたま別件で来ていたヨーヌルトさんが国王が持っているものに興味を持ち、国王と一緒に持ち帰ってきた手土産の果物を味見し、あまりにもおいしかったのと国王からこの村のことと僕の存在を聞き興味を持ったので、後日、契約の手続きの時にある物を渡したいため同行したのだという。
「なるほど。では、その渡したい物というのは何でしょうか?」
「これだよ。ぜひ受け取ってくれ」
ヨーヌルトさんの懐から出して、僕に渡されたのはクレジットカードのような物だ。
何か書いてあるので読んでみると『商人ギルド・ランクF』書かれていた。
「これってもしかして!?」
「そう、これはお主のギルドカードだ。本来なら正式な手続きが必要だが、こんな素晴らしい作物を村で消費するのは勿体と思ってな、なので今回特別に発行を許可したのだよ」
おっ!これは願ってもないチャンスだ。
すこし胡散臭いところがあるが、ここは敢えて話に乗ろう。
「わざわざご用意してくださりありがとうございます!」
「ほっほっほっ、礼には及ばないよ」
「ところでこのギルドカードはどのように使うのですか?」
「おおそうだったな。では、このギルドカードの使い方を説明するぞ」
「よろしくお願いします」
僕はギルドカードの説明を聞いた。
まず基本的にギルドには依頼を受理して遂行する冒険者ギルドや、メイドの紹介と派遣を行うメイドギルドなど、それぞれの職種の集まりがあり、僕が所属することになる商人ギルドの大まかな内容はこうだ。
一、商人ギルドは全大陸に拠点を持つ組織である。
二、無許可営業や闇取引などを防ぐため、商品の販売をするときは商人ギルドの登録が必須となる。
三、原則、取引のよる他国とのトラブルを避けるため、登録した国の中で売買を行い、登録した国以外の取引を禁止とする。(物々交換による取引は可能)
四、このギルドカードを本人以外に貸し出すことはできない。
五、他国での販売は現在のランクによって解放できる。ただし、国外で販売を行う場合、登録している国の商人ギルドに紹介状を発行をしてもらう。
六、商業ギルドには七つのランクを設けており、以下の特典が利用できる。
ランクF・登録した国で露店販売ができる。
ランクE・登録した国の地区主催のフリーマーケットに出店できる。
ランクD・登録した国の首都で月一で行われる商人ギルド本部主催のマーケット出店できる。
ランクC・個人店を持つことができ、商人ギルドの紹介状なしで他国で販売ができる。
ランクB・中規模の店を持つことができ、国内に五店舗まで支店を持つことができる。
ランクA・大規模の店を持つことができ、国内外に十店舗まで支店を持つことができる。
ランクS・本人の主催で市場を行うことができ、国内外に自由に支店を持つことができる。
七、万が一、ギルドカードを紛失した場合、料金を払うことで再発行できるが、ペナルティとして強制的にランクが一つ下がる。(ただし、ランクFより下がることはない)
八、規則に違反した場合、除名処分を受け、その国の法によって裁かれる。
九、店舗や設備などの相談は無償で受けれる。
・・・なるほど。
僕が思っていたよりこの世界の商売のルールはかなり複雑で厳しようだ。
何だか僕の村の作物は売れるのか心配になってしまった。
でも、考えようによってはお金が手に入るだけでなく村の宣伝にもなれるいい機会かもしれない。
ここは話に乗ることにしよう。
「わざわざ作っていただきありがたいですが、商売を始めるのは作物がたくさん収穫できる秋ごろに参加しようかと考えております」
「ほぉそうですか。では今回の話はここまでとしますが、もしご興味があれば、いつでもご相談してください。その時は我輩が直々に営業の準備の手伝いをしますぞ」
こうして頼もしい人が出来て今後の生活が楽になりそうだ。
僕とヨーヌルトさんとの話を終えようとした時、ナルジャンから声をかける。
「お話の方は終わったかな?」
「ナルジャンさん。どうしたのですか?」
「実は国王陛下からお近づきのしるしとして贈り物を用意している。というのも私が来た一番の理由はその贈り物を届けるために来たのだよ」
「そうですか。ではお願いします」
「よし分かった。今馬車に積んでいるからちょっと待っててくれ」
そういうとナルジャンは馬車の方へ走っていた。
数分後。
僕の目の前には国王陛下からの贈り物がたくさんスーパーの陳列棚のように並んでいる。
並んでいる品物を見て見ると、謎の液体が入った瓶が十本、水色の鉱石が入った箱、少し大きな水晶に宝石が飾られた姿見鏡、高級そうな家具などが置かれている。
「はっはっは、我々からの贈り物は!言葉も出ないだろ?」
「えーと、一体何のことやら?」
「すごい!万能薬に魔水晶、魔導鏡、それに・・・」
「神魂石まであるのですか!?」
「オリハルコンまであるとは」
「待て待て、一斉に喋ったら何のことだかわらないよ」
「はははっ、ごめんなさい」
「すまぬ」
「申し訳ない」
「まず、これは何なのか説明して欲しいけどいいかな?」
「いいわよ」
みんなが一斉に喋ったらどういう物なのか分からない。
なので、物知りなエリールに説明をしてもらった。
まず、謎に液体が入った瓶はどんな傷や病気を一発で治す『万能薬』で、これを作るには高度な魔力と特殊な素材を使うため、あまり市場には出回らなので高値で取引されているようだ。
次に水色の鉱石は、以前に聞いたオリハルコンだ。
オリハルコンと聞いて少し気になったのは、鉱石を知っているダウストンならともかく蒼我さんが神魂石と言っていたのは、ヤマトではオリハルコンのことを神魂石と呼んでいるようだ。
この水晶は魔水晶と言い、この水晶を通して会話ができる。
僕のいた世界でいう携帯電話のような物だ。
さらにカレンダーや失くした物を探したり、人探しもできる優れものだ。
最後に宝石が飾られている姿見鏡は魔導鏡と言い、性能は魔水晶と同じだが、一つだけ違うのは鏡を通して別の場所へ移動ができるのだ。
ただし、魔導鏡を使った移動場所は、同じ魔導鏡が置かれている場所にしか移動ができないかつ、どちらか片方が壊れてしまった場合、移動ができなくなるのが欠点だ。
一通り道具の説明を聞いたところで、気づけばお昼ごろになりそうなので、ナルジャンとヨーヌルトさんに帰りの催促をしようとした時、ナルジャンが割って入ってきた。
「ちょっとよろしいかな?」
「えっ、どうしたのですか?」
「実は国王陛下から君に依頼したいことがあるのだがよろしいかな?」
「依頼ですか?」
国王直々の依頼とは何のことだろうか?
とにかく話を聞いてみよう。
「そうだ。率直に言うと我が国の同盟国である『リブリール王国』から来た避難民を受け入れることは可能だろうか?」
リブリール王国?
聞いたことがない国だな。
しかし、困っているなら受け入れをしたいのだが、一応みんなに聞いておこう。
「避難民をですか!?僕は構いませんが、みんなはどうかな?」
「いいじゃない」
「私も賛成だ」
「俺モデスゴ主人様」
「ゴゴゴ~~~」
急な避難民の受け入れに対して、みんな肯定的のようだ。
だけど、蒼壱郎は少し疑問を持っているようでナルジャンに質問をぶつけた。
「ナルジャン殿。一つ質問をしていいでござるか?」
「どうしたんだい侍君?」
「拙者はこの受け入れについて異議はないでござるが、そもそもリブリール王国はどんな国で、どんな理由でこのエストルフ大陸に来て、なぜ拙者たちの村に避難民の受け入れを要請したのか。一から説明してほしいでござる」
「なるほど、そう来ましたか・・・」
確かに何も知らないで避難民を受け入れるのは早すぎたようだ。
これは一度聞く必要があるようだな。
僕がナルジャンに質問しようとしたら、ナルジャンから口が開いた。
「分かった。では、ここまでのいきさつについて話しておこうか」
「いいのですか?」
「あぁ、もちろん。でないと、不満を持っているそこの侍君が納得がいかないようだからね」
「さっきまで聞き流していたでござるが、拙者の事を『侍君』って・・・」
「まぁまぁ、ではナルジャンさん。お願いします」
「うむ」
では改めて、なぜリブリール王国からの避難民がこの村に来ることになったのかナルジャンからの説明で明らかになった。
そもそもリブリール王国はエストルフ大陸の北西にあるウフルグ大陸にある大きな国で、人間はほとんど住んでおらず、エルフやドワーフ、獣人などの亜人族が暮らしている国だ。
だが、ここ最近は政権をめぐる紛争が起きており、主な勢力としては王政による国王派と、民主主義による貴族派、今の政権に反旗を翻す反乱軍に王の座を狙う反社会勢力連合とかなり泥沼で混沌とした戦況で終戦が見えないため、一部の国民が国から出て行ってこのエストルフ大陸に着いたというわけだ。
たがしかし、今のエストルフ大陸も戦争のことで手一杯だったため、避難民の受け入れができずに困り果てていたところ、この村の存在を知ったため、そこで避難民を受け入れる依頼を出したというわけだ。
大まかな事情を把握したけど、それでも僕は困っている人たちのため、改めて避難民の受け入れを了承した。
僕の返事を聞いたナルジャンも納得し、国王に報告するためヨーヌルトさんと共に馬車に乗って帰って行った。
「はぁー、すごく緊張した~~~」
「お疲れ様。それにしてもまた避難民が来るなんてどうしましょう」
「そうだな。何人来るかもわからないから、また話し合いが必要だな」
ギルドの説明に国王からの依頼を聞きっぱなしで疲れてヘトヘトになった僕は座り込んだら、蒼壱郎がやってきて僕に話しかけてきた。
「練殿。先ほど、大事な話に割り込んでしまい申し分けないでござる」
「謝らなくていいよ。怒ってないから」
「かたじけない」
蒼壱郎との話を終えたかと思いきや、今度はレコラが話しかけてきた。
「あのー村長。すこし話してもいいですか?」
「ん?どうしたの?」
「この避難民を最後に受け入れを中止にしませんか?」
「えっ!?どうして?」
「ボクは避難民の受け入れ自体は反対しませんが、村の規模が大きくなるにつれて治安維持が手薄になり、避難民や旅人と偽って悪さをするものが出てくるため、来客への対応についてお願いしたいのです」
なるほど確かに、来客を偽って強盗とか起きたらシャレにならない。
ここはレコラの不安を取り除くため、来客や避難民の対応については今後話し合いをするということで結着を付いた。
さて今から僕の家の建築工事の続きを始めるとしようか。
新しい避難民の受け入れと今後の避難民と来局の対応などやることがたくさんあるが、果たして僕は生きてこれるだろうか。




