加工食品づくり
村の施設の建設が開始してから四日目。
今も建設作業は続き、物見櫓や魔物の小屋、そしてアズマ地区たちには念願の醤油蔵と味噌蔵、酒蔵が完成した。
僕の家の建築工事の進捗率は三分の一で、まだ半分にも満たしていないだけでなく、調理場や倉庫に会議室や応接室などの部屋を作るため完成までにはあと二週間ぐらいかかりそうだ。
完成まで気長に待つとして、今日は作業開始する前にみんなを旧噴水広場に集めた。
「よし、皆集まったな」
「村長、我々を集めて何の御用でしょうか?何か大事な話でも?」
「そう、とっっっっっっても重要な話だ」
「もったいぶらずに教えてくださいよう」
「では、単刀直入に言おう、酒造りを解禁する!!」
「「「うぉーーー!」」」
「酒か・・・いつ振りだろうかのう」
そう、今日から念願の酒造りを行う。
なぜ、今更酒造りを行うかというと、酒を造るための材料の量が少ないこともあるが、それ以前に酒を造るための蔵や樽の作り方がわからなく、例え僕が作り方を知っていてもそれを作れる技量が足りなかっため後回ししていたのだ。
だが、運が良いことにアズマ地区とブランチ地区の人の中には蔵や樽作りの経験がある職人がいたため、酒造りを決行したというわけなのだ。
早速、僕たちは酒造りを開始し、まずは、ワインから取り掛かろう。
どうやらこの世界にもワインが存在し、ワインが一大産業としている国があるほど馴染みがあるようだ。
最初はワインの材料である葡萄は事前にエリールとラーブさんの収納魔法しまっていたのでそれらを取り出した。
その他の材料も収納魔法によって収納してある。
その方が倉庫にしまうより長持ちするからだ。
では改めて、僕たちはワイン造りに取り掛かる。
まずは、昔ながらの工程である葡萄踏みから始めた。
これはテレビでしか見たことがないし、興味があったのでこの方法を採用した。
葡萄踏みにはボクードタ族とオレリア族、後は各地区の婦人たちと子供達が交代で行うことにした。
葡萄踏みには大きな桶で行うのだが、これだといちいち桶を持ち上げるか、柄杓で樽に移し替えるのが時間もかかるし、余計な体力を消費してしまうので、僕の建築スキルで特製の葡萄踏み台を作った。
特製の葡萄踏み台は転倒防止の掴む棒があり、踏んだ時に出た果汁は注ぎ口へ伝ってそのまま下にある樽に入る仕組みだ。
早速、僕たちは準備に取り掛かる。
桶に葡萄を入れ、注ぎ口には特急で造った樽をセットし、雑菌が混入しないように足を入念に洗って、ワイン造りをスタートした。
最初は足取りがおぼつかず危うく転倒しそうな場面があったが、次第に感覚をつかんでケガをすることなくワイン造りが終わった。
造ったワインは二十本あり、後はじっくり寝かせてうまく発酵すればワインの完成だ。
「よし、あとはじっくり寝かせるだけ。ワインの完成が楽しみだな」
「そうね。このワインを飲める日が待ち遠しいわ~」
「あれ?エリールって確か歳は十六だよね?」
「そうだけど?どうして?」
「いや~~、僕のいた世界では二十歳以上じゃないとお酒が飲めないんだよ」
「え~~~!そうなんですか?」
「もったいないですね」
「もったいないのう。主も飲めばいいのに」
僕の世界の飲酒事情を聞いたエリール達は驚きずつもこの世界のお酒が飲める年齢の説明をしてくれた。
エリールによると、このエストルフ大陸での飲酒ができる年齢は十五歳になってからだという。
さすが異世界の文化だと痛感する。
・・・ん?ってことはこの世界のルールでは僕は酒が飲めるということになるな。
いやいや、これはあくまでも働いている人たちの給料の代わりと村の名産品として売るための物なので、僕は決して二十歳になるまで飲酒をしないつもりだ。。
とはいえ、万が一、飲みすぎによる喧嘩やアルコール中毒などのトラブルを防ぐため、飲酒のルール作りをしていかなければならないようだ。
次はビールを造るのだが、皆の反応はイマイチのようで不思議そうな顔をしている。
すると、僕の話を聞いていたダウストンがビールについて尋ねてきた。
「村長。その・・・『ビール』となる物は何でしょうか?」
「え!?ビール知らないの?」
「はい。そもそもこれがワインと同じ酒だなんて信じられないですね」
ダウストンの返答で僕は驚いてしまった。
どうやらこの世界にはビールが存在していないようなので、僕はビールがどんな材料でどのような工程で出来るのか説明をしたが、やっぱり納得がいってないようだ。
どうやらこの世界での麦は飲み物を作るよりもパンなどの主食として使用する認識のようだ。
ビールはかなりの手間暇が掛かる分、飲みごたえがある酒なので、皆にもビールのおいしさを知ってほしいものだ。
ビールの造り方はビール工場の見学を行ったきりでうろ覚えになるが、確か一度大麦を水に浸からせて発芽させ、そして焙燥したのち細かく粉砕し、ホップと一緒に煮沸して発酵すればビールの完成だ。
まずは大麦を発芽させるために大きな樽の中に水で満たし、村の畑で収穫した大麦を水の中に浸した。
後は発芽するのを待つだけなのでビール造り作業はここまでとした。
その後、新しく酒用の畑を作りそこに葡萄や大麦、そしてビールの苦味を加えるホップを植えた。
次に調味料作りを行う。
醤油や味噌、清酒はアズマ地区の職人に任せるとして、最初に作る調味料は砂糖だ。
砂糖の材料はすでに揃えており、以前から育てていた甜菜やサトウキビがあるのでそのまま作業に移す。
まず、砂糖を作るには材料から糖を含んだ汁を搾らなければならない。
そこで僕は今ある資材を使用して圧搾機を作った。
昔テレビで見た物で搾り出すローラーは三本で太い丸太を細い溝を掘りそれ同士を噛み合わせて歯車のように回すタイプにした。
ただ、ローラーは木で出来ているので破損しやすいのが難点だ。
でもせっかく圧搾機を作ったので試しにサトウキビを搾り出す。
特に問題なくサトウキビの搾り汁がドバドバ出たので大成功だ。
次は甜菜の砂糖作りは甜菜をみじん切りして鍋で煮込むだけなので、みじん切りした甜菜とサトウキビの搾り汁をそれぞれ鍋を入れて煮込み、コットンが作った布で濾して不純物を取り除き、また水分がなくなるまで煮込んで砂糖が完成した。
次はケチャップを作る。
これも簡単で予めすり潰したトマトとみじん切りしたにんじんやセロリなど野菜を煮込むだけなので、すぐに大鍋で材料を煮込み、煮詰めたトマトを|樽《たる》に移して、しばらく寝かせればケチャップの完成だ。
次は、小麦粉を作る。
その準備として小麦粉にするためダウストン達が鉄鉱石を採掘した時にでた硬い石を加工して石臼を作った。
そして小麦を石臼で挽き、小麦粉が出来た。
次に片栗粉を作る。
本来は片栗の根を使うのだが、ジャガイモをすりおろして沈殿したでんぷんを乾かすだけで片栗粉ができる。
ただ、先ほど使った石臼だと時間が掛かるので蒼我さんに鉄製のおろし金を作ってもらった。
早速、おろし金でジャガイモをすりおろし、水と混ぜて数分置いたのち、でんぷんが沈殿したので上澄みの水の捨てて、乾燥させて片栗粉が完成だ。
もう気づけば夕方になっていたので最後に酢を作ることにした。
一般的に使われている米酢は清酒造りの時に作ることができるので、清酒職人の方にお願いし、一方で僕は比較的に作りやすい黒酢を作ることにした。
黒酢に使用するためのツボは、村の掃除の時に出た物で何かに使えると思いエリールの収納魔法で残して置いたものだ。では早速、用意したツボに蒸した米と麹と水を入れ、蓋をして発酵すれば黒酢の完成だ。
いやー、今日は沢山の酒と調味料を作ったからか、ものすごく疲れている。
だが、その分美味しい料理が出来るとなると楽しみで仕方ない。
種族や身分など関係なくみんなでワイワイご飯が食べれる村にするため、僕はいっそうより良い村にする決意を固めるのだった。




