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異世界廃村復興記  作者: 野薔薇 零雅
第4章 復興再起
33/36

移住希望者は突然に・・・

 ロックファントのシヴァ親子を迎え入れて三日目の朝。


 僕はいつも通りに水やりに行こうとした時、ミョルニルが慌ててやってきたのだ。


「ゴ主人様〜〜〜!」

「ミョルニル?何があったのか?」

「ハイ、シザートハーグガ大変ナコトニ」

「シザーとハーグが!?」


 一体何があったのかミョルニルの説明によるとシザーとハーグと共に村の見回りをしていると、避難民と思われる集団と遭遇したようで向こうから警戒態勢をとったため、彼らに戦う意思がないと伝えたのだが、聞く耳を持たず一方的に攻撃を仕掛けられたのだ。


 その時にシザーとハーグがミョルニルを(かば)い、ミョルニルを逃す時間を稼いでいるうちにミョルニルが知らせに戻ったというわけだ。


「分かった。すぐに向かおう」


 念のため、エリールには村に残ってもらうようにお願いして、僕はミョルニルと共にシザーとハーグがいる現場へ向かった。


 数分後、現場に着いた僕とミョルニルは様子を(うかが)うため僕は草むらに、ミョルニルは木の陰に隠れて見てみると、避難民の数はざっと五十人ぐらいと思われる。


 そして、その人込みの中から見えた光景に僕は愕然(がくぜん)とした。


 なんとシザーとハーグは戦闘不能になっていたのだ。


 どうやら集団の中でひときわ目立つ分厚い鎧を着ている騎士のような人物がやったようだ。


 分厚い鎧を着ている騎士は僕の存在に気付くと大声を上げる。


「貴様か!我らに魔物をけしかけた者は!!」


 隠れていることがバレた僕は草むらから出て敵意がないことを説明をする。


「ちがうよ!この子たちは危害を加えるつもりはなく・・・」

「しらばっくれるな!」


 僕は平和的に解決をするために説明をするが、まったく聞く耳を持たず話は平行線になっている。


 このままだとやられてしまう。


 なんとか納得する説明がないかと考えていたら、群衆の中から聞いたことがある声が聞こえてきた。


「その声はもしや練殿ではないか!」

「そっ蒼壱郎?」


 その声の主は少し前に魔王国メギドゥームへ向かっていた蒼壱郎だ。なぜ彼が避難民と一緒いるんだ?


「若僧、この者とは知り合いなのか?」

「知っているも何も、練殿はこの先にある村の復興をしているのでござるよ」

「村の復興?この若造が?嘘を言うのではない!」


 残念ながら蒼壱郎の説明も納得していないようだ。

 向こうも興奮していて、これ以上埒が開かないと思った時、僕の後ろから声が聞こえた。


「練ー!大丈夫?」

「パオーン」

「エリール!?それにパールヴァティーまで」


 その声はエリールだった。

 しかもパールヴァティーの背中に乗って駆けつけてくるとは。

 ロックファントのパールヴァティーの登場で避難民と思われる人達は動揺しているが、蒼壱郎は自分よりも大きいパールヴァティーに動じず、エリールに声をかけた。


「おー、エリール殿久しいでござるな」

「蒼壱郎君!?何でここにいるの?」


 避難民の中に蒼壱郎がいたことに驚いているエリールだが、分厚い鎧を着ている騎士はエリールの姿を見て動揺しているようだ。


「その声とお姿はまっまさかエリール様ですか?」

「あなたもしかしてダウストン?ダウストン卿なの?」

「はい、まさかエリール様が生きておられたとは、無事で何よりです」


 なんだなんだ?エリールとあの騎士は知り合いなのか?

 僕とミョルニルは今の状況に飲み込めずに立ち尽くしていると、ダウストンとなる者は背中に携えてた剣を出してその刃先を僕に向けた。


「貴様か!エリール様を誘拐した犯人というのは!」

「待って、僕は誘拐犯なんかじゃ・・・」

「問答無用!我が『豪鋼剣(ごうこうけん)』の餌食(えじき)となるがいい!!!」


 剣全体に茶色のオーラが纏っていく、おそらく土属性の魔力によるものだろう。


『あー、終わった・・・』


 僕はまた命を落とすことに悲嘆していた時だった。


「待って!」


 その声を聞いてはっきりと意識を戻した時には僕の前にエリールが立っていた。


「エリール様!なぜ犯人を庇うのですか?」

「練は誘拐され奴隷になっていた私を助けてくれた命の恩人であり、練は『神の使い』なのよ!どうしても練を倒したいなら、その前に私を倒してからよ!!!」

「ちょっと、エリール!?」


 いきなりエリールは僕の手の甲に刻まれた神の使いの証をダウストン達に見せつける。

 僕を庇ってくれるのは嬉しいが、僕が神の使いであることを言うのは余計なお世話だ。

 しかし、この話を信じてくれるのか心配していると、その話を聞いたダウストンの様子が変わった。

 ダウストンは急に手の力が抜けたかのようにガチャンと剣を落とした。


「なっなんですとーーー!!!」

「「「えぇーーーーーー!!!」」」


 ダウストンは僕のことを聞いて絶叫し、数秒遅れて蒼壱郎を除く避難民達も驚きの声を上げ森中に響き渡った。


 ダウストンは絶叫をした後、僕に向かって走ったかと思いきやそのままスライディング土下座をした。


「誠に申し訳ございませんでしたーーー!!!」


 いきなりのことでどう対応すればいいのか分からないが、避難民達を村へ案内するならいましかない。


「あっ頭を上げて下さい」

「はい、何でしょうか?」

「ここにいたら魔物に襲われてしまうので、僕達と一緒に村へ行きませんか?雨風を凌げる場所はないけど食料はたくさんあるのでいかがなものかと」

「食料があるのか!それは助かる。ぜひ私たちを村まで案内してくれ」


 多少のいざこざはあったが、避難民を僕たちの村へ連れていくことにした。


 ダウストンによって倒れたシザーはミョルニルに、ハーグはパールヴァティーに背負って帰ることにした。


 帰りの道中でエリールとダウストンの関係について聞いてみると、ダウストンとは何者か説明をしてくれえた。


 彼の名は、ダウストン・ベ・レ・クファレベルグといい、ブランチ鉄鋼国の兵士で、なんでも皇帝第一婦人の護衛隊隊長を務めていてエリールとは昔遊び相手になっていたそうな。

 なるほど、それでエリールのことを知っていたのか。

 しかし、なぜブランチ鉄鋼国の兵士が避難民を連れているのだろうとダウストンに尋ねたら、そのいきさつを答えてくれた。


 どうやら数日前に勃発(ぼっぱつ)したガルベラ火山の戦争の途中で起こった噴火によって甚大な被害が出たにもかかわらず兵士たちの命よりもオリハルコンの鉱脈を優先したため、今の情勢に不信感を覚えフィチャーチャー反対派の国民と共に同盟を結んでいない砂塵国ディンへ亡命をすることになった。


 その途中でミョルニル達と遭遇し、いまに至るというわけだ。


 あと、ブランチ鉄鋼国の避難民の中に蒼壱郎がいるのかというと、旅の途中で参加しようとしたトーナメントの中止の知らせを聞き、エストラル王国へ戻ろうとしたときに砂塵国ディンへ亡命中のダウストン達と出会い、少しの間だけ同行していたのだという。


 なるほどなー、ブランチ鉄鋼国の方も大変なんだな。


 そうこうしているうちに村に着いた。


 村の入口を通過しようとしたら、ルンが出迎えに来たようだが、なんだか慌てている様子だ。

 いつも通りにミョルニルに聞いてみると。


「ゴ主人様、俺達ガ村カラ離レテイル間ニ、村ノ見回リヲシテイタダンガ二組ノ避難民ガ見ツケタソウナノデ、今保護シテイルソウデス」


 別の避難民か、少しややこしくなるが人数の整理をするため旧噴水広場に来るように指示を出した。



 数分後・・・



 旧噴水広場には三組の避難民がいる。


 一組目はダウストン率いるブランチ鉄鋼国から亡命した老若男女の五十三人のグループ。


 二組目は身長が約百四十センチの小柄な女性が二十四人のグループ。


 三組目は身長が約百七十センチの筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の大柄の女性が十八人のグループだ。


 それにしても多少癖のある避難民が来たものだな。


 すると避難民代表と思われる人が出てきて自己紹介した。


「ボクはボクードタ族のレコラです」

「オレはオレリア族のガウラだ。よろしくな」


 ボクードタ?オレリア?聞いたことがない名前だが、この世界の種族なのだろうか?


「あら、ボクードタ族にオレリア族じゃない!」

「この子たちを知っているの?」

「えー、簡単に説明をするね。ボクードタ族は小柄だけど魔術に長けている種族で、オレリア族は大柄で体術に長けている種族なの。この二つの種族は女性だけで構成してるのが特徴ね」


 ほぉー、これはすごい人が来たわけか、村人になれば百人力だな。


「これで全員かな?」


 避難民のことを確認したので次の話へ移そうとした時、レコラが僕に話しかけた。


「ちょっといいですか?」

「どうしたんだい?」

「実はボク達と一緒に避難した人達がいるので呼んでもいいですか?」


 なんだそんなことか、仲間が多い方がいいので僕はレコラの話了承(りょうしょう)した。


「いいよ」

「あっありがとうございます。みんな出ておいでーーー」


 レコラが村の北の方へ呼ぶと、小さい何かがレコラの足元に集まってきた。


 僕は目を凝らして見てみると、約八センチぐらいの小人のようだが、他の種族じゃ見られない独特の模様が入った民族衣装を着ている。


 そして、レコラが小人の代表者と思われる人を自分の手のひらに乗せて僕の顔の前に見せてくれてその小人は自己紹介をした。


「初めまして。僕はコロポックル族のウィシムです」


 コロポックルだと!?コロポックルといえばアイヌの昔話に出てくる妖精のことか?まさかこの世界にもコロポックルがいたとは想定外だな。


「すごーい!コロポックル族って本当にいたんだ!」

「エリール知っているの?」

「もちろんよ。コロポックル族は人が入れないような場所に住んでいて、人前では滅多に現れないから、見たら幸運になるといわれているのよ」

「僕達そんな風に見ていたんですか・・・」

「はははっ、えーと。ウィシム、コロポックル族は何人いるのかな?」

「はい、僕を含めて二百五十九人です」


 多いな!小人だしこれくらいの人数がいて当然か。


 後はこの村へきた経緯が知りたい。

 ダウストン達は砂塵国ディンへ亡命するためだが、残りのグループはどうやってこの村に来たのか尋ねるとリコラがこの村へ来た経緯を話した。


 彼女達はガルベラ火山の麓に住んでいたが、噴火によって村は壊滅し新しい住処を探しているところでダンと出会ったのだという。

 コロポックルの方は堅氷国ザーラに住んでいたが、魔物の襲撃によって壊滅したのと、ザーラとエレブレアとの戦争を恐れてあまり影響のない南側は移動していた時、避難していたレコラ達と出会ったのだという。


「ボクたちは命からがら避難してきました。しっかり働きますのでこの村に住ませてください」

「オレからも頼む!」

「僕からもお願いします」

「俺達もこの村に住まわせてくれ!もし無理なら数日だけ(かくま)ってくれないか頼む」


 レコラ達は頭を下げてお願いをしてきた。


 二百人以上から懇願されるのはかなりの圧巻だし、その分のプレッシャーが僕の体にのしかかる。


 だが、当初の目的であった村の復興が達成できるため、僕は(こころよ)了承(りょうしょう)する。


「住民同士の喧嘩をしないなら構わないよ」


 僕の返答を聞いた避難民たちを歓喜の声に包まれた。


「ありがとうございます」

「やっと、体を伸ばせるぜー」

「よろしくお願いします」

「僕たちの新しい生活が始まるんですね」

「あんな皇帝のもとで暮らすのはこりごりよ」


 皆が喜んでくれてうれしい限りだ。


「ところで、蒼壱郎はどうするの?」

「本当なら故郷に帰りたいでござるが、しばらくこの村に厄介になるでござる」


 蒼壱郎はしばらく村に残るそうだ。


 他にも避難民と家畜を連れてきたので確認した。


 ボクードタからは牛が十五頭、オレリアから糸か取れて食肉にもなるコートシープが二十七頭、ブランチ鉄鋼国からダウストンの愛馬一頭、コロポックルからは彼らの長距離の移動手段として使っているフロストウルフ七頭だ。


 これは後で草食動物と肉食動物のエリアを作らないといけないな。


 夜まで時間があるので、まずは避難民たちが暮らせる仮設住宅を建てることから始めるとするか。


 こうして僕たちは戦争や噴火から避難してきた人たちを迎え入れ本格的に村として動き始めていくのだった。


















村に住んでいるグループは以下の通りになる。


立吹 練

エリール・ジェーン

八 蒼壱郎

ボクードタ・・・二十四人

オレリア・・・十八人

ブランチ鉄鋼国国民・・・五十三人

コロポックル・・・二百五十九人


ゴーレム・・・十六体

ブレード・ディアー・・・一頭

ジャイアント・デス・スコーピオン・・・一体

コットン・スパイダー・・・一匹

ヘル・センチピード・・・一匹

シルクモス(蛹)・・・六体

ミニドラゴン・・・二匹

ロックファント・・・三頭

牛・・・十五頭

コートシープ・・・二十七頭

馬・・・一頭

フロストウルフ・・・七頭

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