廃村とゴーレムと
女神様の転送魔法で異世界へといった僕は今、見渡す限り真っ暗なところにいる。
もしかして転送に失敗したのかな?僕は一瞬の不安がよぎった。すると、暗闇に一筋の光が差し込み僕の顔に当たる。眩しく感じ目を開くと、木々が生い茂る森の中にいた。どうやら気を失っていたらしい。僕は体を起こして周囲を見渡してみる。木が立っている以外は特に変わりもない。しかし、ここはどこなのかこの森は名称があるのかよくわからない。
今、僕の姿はどうなっているのかと体を見てみると、体は特に変わりはなく服装はゲームに出てきそうなモブの恰好でサイズは少しぶかぶかしている。
とにかく日が暮れる前に身を潜める場所を探さなければこのまま野垂れ死ぬか、この世界の動物の餌食になるかの二択しかない。そうならないためにも、僕は森を探索した。
森を探索して約一時間もたっただろうか一向に建物が見つからない。のどが渇いて正直フラフラだ。
お腹もすいてもうここで野宿したい気分だ。そう思った時、突然開けた場所についた。
その場所は原形を留めているが、ツタだらけになっている家や完全に崩れている家などがある。他にも何か残っていないか周りを見ると1枚の板を見つけた。近づいてみると何か文字が書かれている、女神様からくれた紋章のおかげか板に書かれている文字が読めた。
『ようこそハルヴァ村へ』
「ハルヴァ村・・・この村の名前か」
どうやらこの板は看板のようで、今は廃村になっているが、ここはハルヴァ村と呼ばれていた地区のようだ。野宿をする場所を探すついでにこの廃村を調べることにした。ざっくりだが調べてみて分かったことは村の中心には噴水広場があり、その北側には他の家に比べて大きな家がありおそらく村長が住んでいたのだろう。東側には大きなため池があり、この辺りは畑だったのだろう。今は草木が生い茂っている。西側には住宅街になっており倒壊しているのを含めれば十五棟ぐらいの家が建っているだろう。南側には何かの売店だった建物が二軒と村の出入り口になっている。この村はかなり活気に溢れていたようだ。僕はまだ調べていないところを調べようとした時、瓦礫の中からキランと何かが光った。不思議に思い近づいてみると、金属でできた箱のようなものだった。
「異世界なのに金属の箱って•••」
僕は違和感を持ちつつその箱を持ち上げると、箱から強い光を放った。僕はその箱を投げ捨ててしまう。それと同時に瓦礫や岩が『ゴゴゴゴゴ』と音を立てて金属の箱が核となって瓦礫や岩が集まっていき気づけば約三メートルの人型になった。
「ウウォーーーーーーーーー!!!!!」と岩の集合体が叫ぶ。
これはまさしく『ゴーレム』だ。
僕はゴーレムの咆哮で腰が抜けてしまった。するとゴーレムは僕を見つけた途端に
「オレヲ長イ眠リカラ覚マシタノハキサマカーーーー」と声を上げた。
あのゴーレムは喋るのか?するとゴーレムは僕の手の甲をみて怒号を上げた。
「キサマ「神の使い」カ、ナラバ容赦シナイ死ネーーーーー」
怒り狂っているゴーレムは自分の左手で僕をつかみ上げて力いっぱい握りつぶしてくる。
『くっ苦しいこのままだと死んでしまう』命の危機を感じた僕は一か八かゴーレムに説得を試みる。
「待ってくれ、僕が何をしたんだとゆうんだ」
「白ヲ切ルキカ、『神の使い』ガオレノゴ主人様ヲ殺シコノ村ヲ滅ボシタ。キサマハソノ仲間カ?」
「神の使い」の仲間?当然村を滅ぼすようことをした覚えはない。
「違う僕は初めてこの村に来たんだ、この村を荒らしに来たどころか君と戦いたくない」
「嘘ヲツクナ、オレヲ騙スツモリダロ」
「落ち着いて考えてくれ、動かなかった君がどうして動いているか分かるか?僕がいなかったらずっと眠ったままだったんだぞ!」
すると、ゴーレムが沈黙し
「・・・・・・確カニ」
ゴーレムがポカンとセリフを言うと、左手の力が弱まっていき僕は解放された。
「申シ訳ゴザイマセンデシタァ――――。アナタノ話シヲ聞クベキデシタ」
ゴーレムが土下座をして僕に謝っている、正直恥ずかしい。
「頭を上げて、君の村に何かあったか教えてくれないかな?」
「分カッタ、デモ話シハ長クナルケド・・・・・・」
ゴーレムの話によると、行き場を無くした人たちが集まってできた村で人口は二十人ぐらいだそうで仲睦まじく暮らしていたが、国の戦争に巻き込まれてしまい、その中に「神の使い」がいてゴーレムの主人を敵とみなし殺した。他の村民の生死がわからないまま一日もたたずに村は滅んでしまったという。
「そっか・・・辛かったんだな・・・」
ゴーレムにかけれる言葉が思いつかず、この一言しかなかった。
「オレガ復活シテモ生キル理由ガナイ・・・」
ゴーレムがかなり落ち込んでいる、何とかゴーレムを励ましつつ生きる理由を探さなければ・・・
・・・そうだ!!いいことを思いついた。
「なあゴーレム、僕と契約をしないか?僕たちで復興してこの村を甦らせようよ」
「コノ村ヲ?」
「そうだよ。僕は社会から隔離されたのどかな生活と広大な大地で農業をするためにこの世界に来たんだ。僕と一緒に生活をすれば人々が集まってきて昔以上に活気が溢れ笑い声が絶えない村に戻るよ。絶対とは言えないが、一緒にやってみないか?」
僕は右手を前に出した。ゴーレムはこの提案を乗るのだろうか?
「分カッタ、一緒ニ頑張ロウ」
そう言うとゴーレムは、大きな右手の人差し指を出して僕と握手を交わした。
よし住む場所が決まり、廃村の復興という大きな目標ができて悠々自適な異世界生活が始まる。
ぐぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~。
あっそういえば、異世界に来てから何も食べていなかった・・・・・・