エリールと過ごす日々
この村にエリールが住むようになって一週間が経った。
最初の頃は体が傷だらけで痛々しく手足が少し痩せこけていたが、今は完治しだいぶ顔色が良くなった。ボロ布のローブを着ていたエリールの服装は、コットンに作ってもらった純白のワンピースを着ている。他にも作業着やエプロンなど用意している。
純白ワンピースを着ていて清々しいエリールの姿はとてもかわいい。
天使のような笑みの彼女を見て僕は絶対に守ると決心をした。
エリールが来てから村の生活が大きく変わった、というのもエリールは魔法が使えるからだ。
以前はハーグの吐く炎で火を起こしていたが、エリールの指一本ですぐに火を起こし、農業スキルで取り出せる魔法の水筒で水分補給をしていたが、手を前に出しただけで水が出てくるなど魔法さまざまだ。
僕は魔法が使えないので時間があればエリールに魔法を教えてもらおうかと考えている。
決して羨ましいというわけではない。
気分を変えてトリ丸の話をしよう。村の仲間入りしたデカコッコーたちは、最初は十羽以上だったが、今はひよこが生まれたので二十五羽になった。今後はデカコッコーの数を雄雌問わずに百羽以上に繁殖させて住人が増えてからか、販売経路の確保ができたら卵を採ることにしよう。
エリールが村の住人に加わり食い扶持も増えてきたので、入居祝いも兼ねて今日はあの野菜を植えよう。
僕は畑に向かい、早速例の野菜の苗を持って植える準備をしていると、エリールが苗に興味を持ち不思議そうな顔で僕に近づき、苗のこと聞いてくる。
「ねぇー、あなたが持ってる苗は植えると何になるの?」
「サツマイモという野菜だよ」
「サツマイモ?変な名前ね、どんな野菜なの?」
「うん、この野菜は生命力が強くて酸性の土や痩せた土によく育つし高温や乾燥にも強いから栽培初心者にもお勧めできるんだ!」
「酸性?とっとにかくすごい野菜なのね」
「そうなんだよ。サツマイモは煮ても焼いても蒸しても揚げてもおいしいからみんなでサツマイモの苗を植えようか」
せっかくなので作業に入ることにしよう。ロングの金髪をポニーテールに結び作業着に着替えたエリールとルン達小型ゴーレムと一緒にサツマイモの苗を植えた。
みんなで一緒に収穫をするのが楽しみだ。作業を終えてすっかりみんな土まみれなっていた。
ゴーレム達は土で出来ているので土汚れは平気だ。一方でエリールはかなり土で汚れている。
でも、エリールはパチンと指を鳴らしただけで作業着の汚れが落ちたではないか。
そもそも落ちたというか消えたと言ったほうが良いだろう。
お昼になり休憩を取ることにした。休憩中にミョルニルのところに行きエリールに聞こえないように小声で声をかけた。
「ミョルニル、ちょっと考えたことがあるんだが・・・」
「奇遇デスネ。俺モ同ジコトヲ考エテイマシタ」
「そうか、それじゃあみんな耳を貸して・・・」
僕とミョルニル達とあることを打ち合わせした。
休憩が終わりエリールが作業にとりかかろうとした時、僕とミョルニル達がエリールの前に立ちふさがる。
「ちょっと練、ミョルニル、みんな集まってどうしたの?」
「エリール、お願いがあるんだ」
「?」
「頼む。僕達にこの世界のことを教えてれーー!」
僕とミョルニル達は羞恥心と漢気を捨ててエリールの前で土下座をした。
「え?えぇ〜〜〜〜〜〜!!??」
エリールの戸惑う声が村中に響き渡った。
「ちょっちょっと、わざわざそんなことをしなくても」
「僕はこの世界に来て分からないことがたくさんあるんだ。だからエリール、僕にこの世界の現状を教えて下さい!!!」
「俺モコノ世界ノ現状ヲ教エテ下サイ。エリール様ァァァ!!!!!!」
僕とミョルニル達は土下座をしてエリールに懇願する。
エリールからの返事はないようだ。というのもこの時、エリールは僕達の土下座姿を見て絶句していたのだ。
そんなことをつゆ知らず僕はあることを考えてしまう。
『あれ?返事がないな。僕たちの説得力が足りないのかな?よし、こうなったら奥の手だ!!!』
僕とミョルニル達は追い討ちをかけるように土下座ならぬ土下寝をして説明の必要性を必死で訴えた。
「なぜこの村が滅んだのか知りたいんだ。お願いだエリール!君だけが頼りなんだ!!!」
「俺達モコノ村ガ滅ンダ後ノ世界ヲ知ル権利ガアル、ダカラエリール様、世界情勢ノ説明ヲオ願イシマス〜〜〜!!!」
「「「ゴゴゴ〜〜〜!!!(オネガイシマス、エリール様〜〜!!!)」」」
「わっ分かった、分かったから、みんな頭を上げ・・・いや体を起こして」
エリールの返事を聞いた僕達は、寝ていた体を起こした。
「えーーと、今日は忙しいし色々準備があるから明日にしましょ。いいわね?」
「え?いいの?」
「えーいいわ、約束するわ」
「「「やったーーーーーーー!!!!!!」」」
エリールの返答に僕達は抱き合って大喜びをした。土下座は人の心を動かす。
こうしてエリールと約束を交わし昼の作業を行うのだった。
そして彼女から語られる世界の現状を僕達は聞くこととなる。
余談だが、エリールの叫び声を聞き駆け付けたシザー、コットン、ハーグ、リリ、トリ丸は、僕たちのやり取りの一部始終を見てかなりドン引きをしたのは言うまでもない。
次回は、長編になるので、数話に分けて話が完成しだい投稿します。しばらくお待ちください。