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異世界廃村復興記  作者: 野薔薇 零雅
第2章 運命の出会い
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立吹 美少女を拾う

 ある晩、旧ハルバ村がある森に大雨が降っている。そんな中ボロ布を着ている人が、一人で雨が降りしきる森の中で弱々しく歩いている。そして、その人は転倒し(うす)れていく意識の中で力を()(しぼ)って一言つぶやいた。


「誰か・・・助・・けて・・・」


 翌日


「昨晩は、大雨だったから畑の方は大丈夫かな?」

 僕が異世界に来て約二ヶ月が経過していた。ミョルニルたちは変わらずに過ごしている。


 変わったことがあるとしたらブレード・ディアーのリリのことだ。

 僕たちが保護した時は、抱きかかえるぐらいの大きさがあったが、今は僕の胸ぐらいの大きさになり頭から刃物のような角が生えてきた。

 小さかったリリが大きくなってなんだか感慨深(かんがいぶか)いな~。


 おっと、話はここまでとして、畑の様子を見に行くことにしよう。

 畑の状態は問題がないように見えるが、雨ではねた泥が葉っぱについてしまっている。

 このままでは、病気になってしまうのでルンたちを呼んで泥を落とす作業を行うことにした。

 約一時間で葉っぱについた泥を落とすことができた。


 さて、次は何かしようと考えていたらどこからともなく声が聞こえてきた。


「ゴゴゴ~~~!!!」


 どうやら村周辺の見回りをしていたノーツようだ、かなり(あわ)てて僕のところにやって来た。

 なにか必死に(うった)えているが、何を言っているか全然分からない。

 すると、ミョルニルがやってきて、僕の代わりにノーツの話を聞いてもらうとミョルニルの顔色が徐々に変わっていき。


「ゴ主人様大変デス!!!森ノ中デ人ガ倒レテイルソウデス。アトラ達ガ待ッテイルノデ現場ニ行キマショウ」

「分かった、すぐに行こう!ルン達は作業を中断して急患を迎え入れる準備をするんだ。頼むぞ!!」


 こうして、僕はミョルニルとノーツを連れて現場まで急行した。


 村から出て十二分のところに着いた。

 アトラたちが手を振っている。現場はここのようだ。

 アトラ達に近づくとアトラの足元には人が倒れている。

 早速、容体を確認してみよう。

 体はうつ伏せになっていて、見た感じはボロ布のローブを羽織(はお)っていいるだけでけががあるかどうかわからない。

 失礼ながら体を仰向(あおむ)けに直した。すると、僕はその人の姿を見て驚愕(きょうがく)した。

 僕と同じくらいの少女じゃないか!!!とっとにかく身体の状態を確認しよう。


 うーん、身長は僕と同じようだ。息はしていて外傷はなさそうだ。

 栄養失調によるものだろうか、手足は少し()せこけている。

 身体の特徴はたわわに実った胸部に絵画に描かれるような顔だ。

 つい抱き着きたくなるような・・・っていやいや見とれている場合ではない。


 ん?首に首輪のようなものが付けられているぞ。隣で見ていたミョルニルが少女の首輪を見て。


「大変ダ!!!コレハ隷属(レイゾク)ノ首輪ダ!!!」

隷属(れいぞく)の首輪・・・まさか!?」

「ソウデス、彼女ハ奴隷(ドレイ)ノヨウデスネ」


 奴隷(どれい)か、この世界にも物騒なものがあるのか。とにかく、なんとか彼女の首輪を(ハズ)すことはできないだろうか。


「何とかしないと、これは魔法か何か使って(はず)すことはできないの?」

「イイエ、コノ隷属(レイゾク)ノ首輪ハカナリ頑丈(ガンジョウ)デ魔力ヲ吸収シ効力ヲ打チ消す魔吸石(マキュウセキ)ヲ使ッテイルノデ鍵ヲ使ワナイ(ハズ)セナイノデス」

「そんな!何もできずにこのまま弱っていく彼女を見殺しにしてしまうのか・・・」

「ハイ、ソウナリマス・・・」


 僕は少女一人の命を救えずに無力感でいっぱいになった途端、ミョルニルが声を上げた。


「アァーーー!!!」

「うわ!!びっくりした!急に声を出すなよ!!」

「思イ出シマシタ。ゴ主人様、コノ首輪ヲ(ハズ)スコトガ出来ルカモシレマセン」

「それは本当か!?どうすればいいんだ?」

「ゴ主人様、前ニ村長ノ家ノ掃除ヲシタ時ニ鍵束(カギタバ)ヲ見ツケマシタヨネ?」

「あーーーあったなー、そのカギなら僕の小屋に置いてるけど、それがどうしたの?」

「ソノ鍵束(カギタバ)隷属(レイゾク)ノ首輪ノ(カギ)ナノデス」

「そうだったのか、ならいっそのこと彼女を助けねば」


 こうして、彼女を村で手当てを受けるため、アトラに彼女を背負って村に戻ることにした。


 村へ帰る途中でミョルニルにあることを(たず)ねた。


「なぜこの村に隷属(れいぞく)の首輪の(かぎ)があるんだ?この村で奴隷(どれい)の取引でもやっていたのか?」

「違イマスヨ。ムシロソノ逆デス」

「逆?」

「ハイ、話ハ長クナリマスガ、昔コノ村ニ奴隷商(ドレイショウ)ガ来タコトガアリマシテ。百人ノ奴隷(ドレイ)ヲ連レテイマシタ。前ノゴ主人様デアル村長ガ村ノ全財産ヲ使ッテ、ソノ奴隷(ドレイ)ヲ全員買ッタノデス」

「結局、買っているじゃないか!」

「ゴ主人様!!最後マデ話ヲ聞イテクダサイ」

「はっはい・・・」

奴隷(ドレイ)ノ購入ハ建前デ、目的ハ奴隷(ドレイ)ノ解放デス。方法ハ奴隷(ドレイ)百人分ノ契約書(ケイヤクショ)奴隷商(ドレイショウ)ニ持ッテコサセテ離レテイル間ニ『ゴーレム・コア』ヲ作ッタ魔導具職人ガ作ッタ偽物(ニセモノ)(カギ)トスリ替エタノデス。コウシテ偽物(ニセモノ)(カギ)ニスリ替エテイルトハ知ラズニ商談ニ満足シタ奴隷商(ドレイショウ)ハ村ヲ去リ、本物ノ(カギ)デ買ッタ奴隷(ドレイ)達ニ付ケテル首輪ヲ外シテ解放シマシタ」


 なるほど、そんなことがあったのか。でも新たな疑問が生まれる。


「でも、なんで偽物(にせもの)(かぎ)の用意できたんだ?」

「前ノゴ主人様ハ自由ヲ束縛(ソクバク)スル奴隷(ドレイ)ヲ嫌ッテオリマシテ、イズレコノ村ニ奴隷商(ドレイショウ)ガクルコトヲ想定シテ、(アラカジ)メ魔導具職人ニ偽物(ニセモノ)(カギ)ヲ作ッテオイタノデス」


 ほー、前の村長は奴隷(どれい)否定派だったのか。


「それで解放した奴隷(どれい)達はどうしたの?」

「解放シタ後ハ、ソレゾレノ故郷ニ帰ッタ者モイレバ、帰ル当テガナク、コノ『ハルバ村』ニ住ム者ガイマシタ」

「へぇーそうなんだ。でも、なぜ魔導具職人が偽物(にせもの)(かぎ)を作れたんだ?」

「スミマセン、俺ニモワカリマセン。タダ、昔ハ色ンナ場所デ魔導具ヲ作ッテタコトシカ聞イテナイデス」


 この話を聞いて村もそうだが、前の村長等の村の住人たち全員何か隠していることがありそうだな。

 これもいずれ明らかになっていくのだろうか・・・


「ゴ主人様、モウスグ村ニ着キマス。彼女ヲ()イテイル家デ休マセマショウ」

「そうだな、まだ予断を許さない状況だから気を引き締めていこう」


 こうして森で倒れていた彼女を村で保護することにした。










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