ゲェジバトラー純
やぁ
都内 某病院所
あの事件以来、目覚めない妻のもとへ毎日通うその男の名は「加藤純一」。
かつてインターネットヒーローと呼ばれた彼の姿は既になく、痩せこけて益々頬骨が出て覇気が無いただのおっさんとなっていた。
いつも通り病室に入り、花瓶の水を入れ替えて椅子に座った。
「こいつのサラダ、食いてぇな。」
彼女の顔を見ながら思わず呟いてしまった。
事件が起こる前まで毎日食べていたサラダを思い出しながら純は泣きそうになっている。
涙が出ないように上を向き、涙を堪えながら窓の外を見ると、黒い目出し帽を付けた男が突っ込んできた。
「緑さん!?」
「オイ、カトォ!嫁さん貰ってくゾ!」
そういうと緑は、妻を担いで窓から飛び降りた。
それと同時に病室の扉が勢いよく開く。
「加藤さん!大丈夫ですか!?」
サングラスをかけた見覚えのある青年が入ってきた。
「もこう!緑さんが、俺の嫁をもっていっちゃったぞ!」
「まだ間に合います。追いますわぁ!」
もこうは、緑を追うべく窓から飛び出す。
「ぱぁ!?」
緑はともかく、もこうが窓から飛び出したのには驚き、純は窓の外を見た。
そこには、背中から赤い翼を生やして滑空するもこうがいた。
「どうなってるんだ...?」
とにかく急いで純は階段を駆け下り、病院を出ると...。
「遅いぞカトォ!嫁さんならもういないゾ!」
そこには、ボコボコにされたもこうがいた。
「加藤さん....逃げてください...」
「うるせぇ!今からそいつに俺の右ストレートでぶっ放してやっかんな!」
純は、渾身の右ストレートを緑の顔に放つ。
「どりゃああああ!」
鈍い音とともに、緑の体が5メートルほど後ろに吹き飛ぶ。
自分のパンチの威力に驚き、拳を見ると岩のようになっていることに純は気づいた。
「ボコボコにしてやっかんな!このオワコンがぁ!」
「来い、カトォ!俺の能力を見せてヤル!」
緑が叫ぶと、彼の体が黒く光り出す。
「これが俺のゲェジ!暗黒ボディだ!」
全身黒光りする緑の姿に、純はたじろいだ。
「関係ねぇ!もう一発喰らえ!」
純は再び緑を殴るが、弾かれてしまった。
「今、何かしましたか?」
何度も殴るが、純は緑には傷一つ付けられない。
「何度やっても無駄よぉ!この体はダメージを追うほど硬度が増すんだからなぁ!」
目の前で嘲笑する緑を前に、純は半ば諦めかけていた。
しかし、ダウンしていたもこうが純に向かって叫んだ。
「男は黙って.....龍舞やぁ!」
もこうが叫ぶと、純の体が赤くなる。
「力があふれてくる...もこう、サンキューな。」
拳を再び握ると、純は会心のパンチを繰り出した。
「バックナックル!」
破裂音と同時に緑の体が割れ始める。
「バウ!?」
「一発でいいわけ、俺たちは。」
緑は膝から崩れ落ちると、そのまま動かなくなった。
ひん