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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
最終章 クズ王子は――未来に手を伸ばす

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クズ王子は、オーガを前におののく

 額から二本の角が突き出た、鋭い目に牙、筋骨隆々の体を持つ亜人オーガ。

 見間違えるはずがない。あれは、かつての私を殺したオーガと同じだった。


「ヤット……見ツケタ!」


 そう言って、オーガが戦斧を向けたのはカイだった。

 なぜ、私でなくカイを狙う!?

 双方が接近し、剣と戦斧を交えたのは一瞬の出来事だった。

 オーガが一歩踏み出し、戦斧を振り下ろすたびに部屋が揺れる。

 カイは回避したり、戦斧を剣で弾き返したりと、冷静に戦っているように見えた。

 以前、終わってしまった世界で戦ったときは、一方的に圧されていたような記憶が残っている。カイは日々、鍛錬に勤しんでいた。そのため、戦闘力は向上しているのだろう。


 カイがオーガを引きつけている間に、どうにかしなければならない。


「うわあああ、扉が開かないよー! どうして!」

「聖女マナ、ちょっと黙っていてくださいませ!」


 何か魔法がかかっているのではないか。そう思ったのか、アウグスタは解析の魔法を試みる。けれども、魔法の反応はなかった。

 もしや、誰かが力で押しているのではないかと思って体当たりする。


「ぐう!!」


 力の限りぶつかってみたものの、人力でどうにかしているような手応えはなかった。

 肩が悲鳴を上げていたが、そんなことなど気にしている場合ではない。


 そういえば、ドロテーアから渡されていた魔法巻物があった。けれども、彼女が敵か味方かわからない状況で使うのは恐ろしい。


「聖女マナよ、転移の魔法巻物は持っていないのか?」

「あ、ある!」

「ならば、アウグスタとふたり、逃げてくれ」

「わかった」


 聖女マナは魔法巻物を取り出し、一気に破いた。けれども、転移魔法は発動されない。


「ええっ、どうしてぇ!?」


 魔法巻物が使えないなんて、これまでなかったのに。

 アウグスタは先ほどから聖獣を呼ぼうとしていたものの、応じないという。


「おい、メルヴ・イミテーション。今、あの場所に、転移できるか?」

『ウーン、アレ……? デキナイヨオ』


 やはり、魔法を徹底的に封じる何かが展開されているのだろう。


「何か、魔法を無効にする結界でもかかっているのか?」

「おそらく、そうとしか思えません」

「そんなーー!!」


 このような高位魔法を使えるのは、ドロテーアしか思い当たらないのだが……。

 オーガも彼女に場所を伝えてからやってきた。

 本当に、ドロテーアが私達の敵だったというのか。

 そんなことはどうでもいい。今は、アウグスタと聖女マナを守らないといけない。


「ふたりとも、暖炉の中に入っておけ。あそこならば、オーガの戦斧も簡単には届かないだろうから」


 ふたりを暖炉の中に避難させ、メルヴ・イミテーションを抱きかかえておくように頼む。長椅子やテーブルなどの障害物を積んですぐに接近できないようにする。カイがやられたら、私が戦うしかない。覚悟を決め、ぎゅっと拳を握った。


 カイはオーガを圧しているように見えた。そんな彼女を支援したかったものの、呪文を唱えても魔法は発現しない。

 今はカイだけが頼りだった。


 カイは一歩踏み出し、オーガの腕を切り落とす。

 しかしながら、やられたオーガは口元に笑みを浮かべていた。


『ハハ、ヤッタナ』


 そう呟いた瞬間、カイの足元に黒い魔法陣が浮かぶ。

 糸で足元を縫い付けられたように、カイは動けなくなってしまった。


「な、なんだ、あれは!?」

犠牲魔法オップファーですわ!!」


 アウグスタが叫ぶのと同時に、魔法陣から鋭く長い槍のような杭がいくつも突き出す。それらは、カイの体を貫いた。


「カイ!!」


 鎧の隙間から、大量の血を流す。

 視界がぐにゃりと歪み、意識が遠のいていきそうになった。

 そんな私を支えたのは、メルヴ・イミテーションの蔓である。


『シッカリシテエ! メルヴノ、葉ッパガ、アルカラ!』


 そうだ。メルヴ・イミテーションの葉は一緒に過ごす間に急成長した。その葉を食べさせたら、カイの傷は治る。


 オーガは自らの腕と引き換えに、魔法を発動させたようだ。

 まさか、魔法も使えたなんて。魔法を封じる結界も、あのオーガが使ったものなのか。


 オーガは戦斧を振り上げ、カイの首を狙う。


「止めろ!!」


 駆け寄って、ふたりの間に立ちはだかる。


「邪魔ダ!!」


 オーガは目標をカイから私へ変える。戦斧を振り下ろそうとした瞬間、空気が震えるほどの叫びが聞こえた。


「ああああああ、ああああああ!!」


 カイの叫びだった。オーガは戦斧を落とし、片耳を塞ぐ。


「カイ!!」


 振り返った先にいたカイの姿に異変があった。

 兜から、二本の角が突き出していたのだ。

 その瞬間、記憶が甦る。


 そうだ、カイはオーガの血を引く娘だったのだ。

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