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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
第七章 契約――魔女と共に

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72/90

クズ王子は、変化に戸惑う

 短かった髪は腰に届くほど長くなり、手足の長さは縮んだように思える。視界が、まるっきり変わっていた。

 触れた頬はすべすべで驚く。肌質まで変化しているようだ。

 ここで、ハッと気づく。

 股間あたりに手を伸ばしたところ――ここにあったものがなくなっていた。「ヒッ!!」と悲鳴を上げそうになったが、喉から出る寸前で呑み込んだ。

 本当に私は、本物の女性になってしまったようだ。思わずその場に膝をついてしまったものの、これは魔法である。一生この姿でいるわけではない。股間にあったものと一生の別れをしたわけではないのだ。

 ちなみに胸は男だったときとほぼ変わらない。いや、むしろ鍛えていた男だったときのほうが筋肉があったので膨らみがあったような……?

 なぜ、胸囲が男だったときに負けているのか。理解しがたい変化であった。

 せっかく女性になったのだから、こう、豊満だったらよかったのに……。


 いや、そんなことはどうでもよい。

 さっさと街娘の姿に変身しなければ。とは言っても、変身コンパクトの選択で街娘を選ぶだけである。

 コンパクトのルビーを撫でると、再び文字が浮かび上がった。街娘を選択すると、魔法陣が出現し、眩い光に包まれる。


 一瞬にして、服装や髪型が変わっていた。

 髪は三つ編みのお下げ姿に三角巾を被り、服はエプロンドレス。靴は使い古したように見えるブーツだ。鏡を覗き込むと、どこにでもいそうな下町風の娘その一といった姿が映っていた。


 なかなかいい感じに変化できたように思える。


 残った時間は、魔法の鞄に必要最低限の品を詰め込んだ。

 居間に戻ると、メルヴ・イミテーションがこちらを見て嬉しそうに飛び跳ねる。


『ワー! クリス、変ワッタネエ』

「私だとわかるのか?」

『ウン! 魔力デ、ワカルンダヨ』

「そうか。なるほど」


 姿を変えても、魔力を偽るのは不可能だ。魔力で私だと勘づかれるかもしれない。

 ただ、魔力を感知して個体を識別できるのは大精霊かエルフくらいだろう。絶対に大丈夫だという保証はどこにもないので、用心のために惑わし眼鏡を装着していたほうがいい。

 魔法学校で目立たないように過ごすために購入した惑わし眼鏡だったが、今度は別の目的で活躍してくれそうだ。いい買い物をした。


「そういえば、メルヴ・イミテーションは変装するのか?」

『スルヨー!』


 よくぞ聞いてくれたとばかりに、メルヴ・イミテーションは胸を張る。そして、テーブルの下に置いていた変装道具を見せてくれた。


『見テ、植木鉢ダヨ。メルヴハ、コレニ入ッテ、植物ノ振リヲスルヨ』


 メルヴ・イミテーションは説明しつつ、植木鉢の中へと入る。両手をピンと伸ばし、キリリと凜々しい表情を浮かべた。


『ドウ?』

「いや、立派な植木にしか見えない」

『デショウ?』


 植木になりきるメルヴ・イミテーションを前に笑いそうになったが、奥歯をぐっと噛みしめて堪えた。


 続いてドロテーアがやってくる。てっきり年若い青年になっているものだと思っていたが、白髪頭に立派な髭を生やした、五十代後半くらいの渋い男性の姿になっていた。

 フロックコートをまとう姿が、妙に似合う。


「社交界で情報収集するには、これくらいの年齢がちょうどいいの」


 若すぎると相手にしてもらえないらしい。あとは、情報料をぼったくられるときもあるようだ。


「なんていうか、大変なんだな」

「まったくよ」


 姿は違えど間違いなくドロテーアなのだが、男性の声で女性の喋り方だと大いに違和感がある。


「安心して。街に出たら、おっさんらしい喋り方をするから。あなたも、女性らしい喋り方をしなさい」

「私はいいだろうが。別に、俺と言っているわけではないし」

「その喋りだと、硬い印象があるのよ」

「そ、そうか」


 ドロテーアのような喋りが難しいのであれば、カイのように敬語でもいいという。


「できそう?」

「で、できます……かと」


 全身に鳥肌が立つ。敬語なんて、国王陛下にしか使わなかったから。 

 誰にでも敬語を使うカイはすごいと、改めて思った。


 ドロテーアと喋る練習をしていたら、扉が控えめに叩かれる。


「カイね」

「!」


 女性の恰好をしたカイが、やってきたようだ。

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