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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
第四章 行動――味方を探す

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クズ王子は、魔女から世界樹についての話を聞く

「魔女ドロテーアよ、なぜ世界樹なのだ?」


 ドロテーアは私の疑問には答えず、司祭と国家魔法使いにもう帰るように言う。ふたりは従い、会釈したのちに去って行った。

 どうやら、人払いをしたかったようだ。

 司祭と国家魔法使いがいなくなると、ドロテーアは腕を組んで尊大な様子で喋り始める。


「知らないの? 世界樹の葉は、どんなケガや病気をも治す最強の薬草なのよ」

「な、なんと!!」


 それが本当ならば、母の病気はすぐに治るだろう。なぜ、誰も提案しなかったのだろうか?


「つーかゴッガルド、この無駄に偉そうな眼鏡、いったい誰?」

「ドロテーア、偉そうじゃなくて、偉いのよ」


 そういえば名乗っていなかったと思い、惑わし眼鏡を外す。


「申し遅れた。私はクリストハルト・ルードヴィヒ・アルベルト・フォン・リンデンだ」

「は!? 王太子じゃない!! なんなの、その眼鏡は?」

「私自身の姿を惑わす、幻術がかかった魔技巧品だ」

「ちょっと見せて!」


 ドワーフが作った品だと言っていたような気がした。もしかしなくても、貴重な品なのだろう。


「嘘でしょう? ただでさえ制御が難しい幻術を付与して、常時展開させるなんて!」

「人間の技術ではないからな。それよりも、世界樹について詳しく教えてくれ」

「話が長くなるから、上の部屋に行きましょう。そっちのお嬢様も、辛そうだし」

「そうだな」


 アウグスタは先ほどよりも顔色を悪くし、今にも倒れてしまいそうだった。

 ゴッガルドが「抱っこして行きましょうか?」と心配するも、アウグスタは首を横に振る。こういうときは素直に甘えたらいいのにと思うものの、たぶん誰かに頼ったら負けと思っているのかもしれない。無理は身体に毒なのだが、今の状態で理解してもらうのは難しいだろう。ひとまず、本人がしたいようにさせておく。


 地下から客間に移動し、メイドが淹れた紅茶でひと息つく。バタバタしていたため、喉が渇いているのにも気づいていなかったようだ。


「話をする前に、先代が言っていたのだけれど、王家は三百年ほど国家専属魔女を教育係として呼び出していないようだけれど、本当なの?」

「なんだ、その国家専属魔女というのは?」

「本気で言っている?」

「本気だが」

「嘘でしょう。呼び出しがないの、先代の冗談だと思っていたわ」


 王家は有事の際、魔女に頼るという話は耳にした覚えがある。国王陛下も前代の国王の教えに倣い、聖獣の危機の場に魔女を呼んだのだろう。


「――というわけだが」

「魔女はただの便利屋さんじゃないのよ! この国の仕組みを教える役目があるの」


 なんでも、国家専属魔女は契約印に呼ばれて王太子や王位継承者の前に現れ、さまざまな知識を伝授するという。

 世界樹についての知識も、そのひとつらしい。


「胸に花の紋章があるでしょう? それ、歴代の国家専属魔女との契約印なの。血の契約を交わしているから、国王となる者の胸に刻まれているのだけれど」

「……」


 そんなもの胸にはない。その理由には、心当たりがある。

 王家直系の血筋は疾うに途絶えていた。そのため、国家専属魔女との契約も自然消滅してしまったのだろう。


「まあ、いいわ。世界樹について、説明するから」


 世界樹――それは我が国のどこかにあるといわれる、月から降り注がれる魔力を貯め、世界に循環させる巨大な樹だという。

 このように重要な役割があるため、世界樹を失うと世界が滅びるとまで言われているのだ。


「世界樹は〝大森林〟と呼ばれる巨大な森の最深部にあるの。そこへ繋がる関門ゲートが、この国にあるのよ」


 ドロテーアの話を耳にした瞬間、頭がズキンと痛む。同時に、記憶が流れ込んできた。

 すでに終わってしまった世界のものだろう。

 国が守護する世界樹へと繋がる関門についての情報は、なぜか帝国にバレていた。

 けれども帝国は、そこが世界の均衡を保つ世界樹の森とは知らなかった。その地を、我が国が隠していた領地と勘違いしていたのだ。

 強力な魔物も多かったことから、皇帝の命令で大森林の木々は焼き尽くされる。そのさいに、世界樹も同時に灰となったのだろう。結果、世界は滅びた。


「クリストハルト殿下、大丈夫ですか?」


 カイが私の肩に触れ、顔を覗き込んでくる。

 全身に汗を掻き、ガタガタと震えていたようだ。


「大丈夫だ。魔女ドロテーア、話を続けてくれ」


 関門へ繋がる出入り口は王族でもごく一部、国王の一親等までしか開けないようだ。


「最深部と言っても、すぐ目の前に世界樹がいるというわけではないから、護衛を連れていったほうがいいわ。ただし、多すぎたら魔物の標的になるから、少数精鋭をオススメするわね」

「少数精鋭――ならば、カイとゴッガルド、それから魔女ドロテーアも同行してくれないか?」

「は? なんで私まで行かなければいけないのよ」

「国家専属魔女なのだろう?」

「従うか否かは、気分次第なのよ」


 近接戦闘を行うカイに、物理攻撃と回復魔法両方使えるゴッガルド、それに攻撃魔法を操る魔女ドロテーアがいたらバランスのよいパーティーになると思っていたのだが。


「王太子殿下、わたくしも行きます。攻撃魔法で、戦えますので」

「アウグスタ、お前は聖獣の傍にいろ」

「しかし」

「聖獣を励まし、寄り添えるのはお前にしかできないことだ」

「そう、ですわね」


 魔女への報酬は何がいいものか。腕組みして考えていたら、ゴッガルドがドロテーアにある提案をする。


「ねえ、ドロテーア。大森林の最深部なんてめったに足を踏み入れられる場所じゃないのよ。珍しい薬草だってあるし」 

「ああ、言われてみればそれもそうね」

「噂では、若返りの薬草〝ゼルトザーム〟もあるという噂よ」


 ゴッガルドの話を聞いたドロテーアは、途端に瞳を輝かせる。


「わかったわ、同行する」


 魔女は薬草に弱いようだ。ゴッガルドのほうを見ると、パチンと片目を瞑る。助かったと、会釈を返した。


 そんなわけで、これから大森林に向かう。世界樹の葉さえあれば、聖獣も力を取り戻すだろう。

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