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生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない  作者: しめさば


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アミー、おでかけする

「じゃぁ、打ち合わせ通り頼んだぞ」


「ああ、まかせてくれ。最早何を言われようとも問題ねぇぜ!」


 海賊船の甲板の上から白い歯を輝かせ、俺へと向けてビシッと親指を突き立てるギャレット。


 ギルドに提出する報告内容を協議し、教育すること三日。

 彼らはすでに、どこに出しても恥ずかしくないほど完成度の高い虚偽報告ができるまでになっていた。


 筋書きはこうだ。

 ダンジョンは崩落によって侵攻不能となっており、オーガたちとは遭遇していない。撤退の途中でエルフの賊に襲撃され、キャラバンの生き残りはグリンガム兄弟のみ――。


 より高いリアリティを持たせるため、どのような質問を受けても即座に答えられるよう、幾通りもの会話パターンを用意。

 ロバートをギルドの監督官に見立て、事情聴取の予行演習を繰り返す。さらに、大企業の役員面接を想定した厳しい問答訓練まで施した結果、もはやボロを出すほうが難しいと言っていい水準にまで仕上がった。


「オルクスも、道中気を付けて」


「旦那ぁ、海は俺たちの庭だぜ? グリンガム兄弟はしっかり送り届けてやるから、期待して待ってな!」


 オルクスの威勢のいい掛け声が港に響き渡り、それを合図にグリンガム兄弟を乗せた海賊船は、村の小さな港をゆっくりと離れていく。

 岸辺に立ち、遠ざかる船影が水平線へと溶けていくのを見届けながら、航海が無事であるよう、心の底から願う。


「大丈夫かな?」


 報告のためだけにトゥームレイズまで赴くグリンガム兄弟。カガリに跨るミアと共にそれを見送るも、多少の不安は拭えない。

 できることなら同行して監視したいが、俺の気配を悟られる訳にはいかないのだ。


「時間はかかるだろうが、信じて待つしかないな」


 キャラバンの帰還が大幅に遅れていることを踏まえ、恐らくはギルド側も異変には気付いているはずである。

 調査隊か、救出部隊か……。それはわからないが、彼等がダンジョンに残されている争いの跡やエルフたちの遺体を発見していれば、グリンガム兄弟の言い分はすんなりと認められることだろう。

 故に、やれることは待機のみ。下手に細工をしようとダンジョンでバッタリ――なんてことになったら、目も当てられない。


「まあ、クリスを送り出す時と比べれば、幾分かはマシだな」


 そんな俺の言葉に、こみ上げてくるものを堪えきれなかったのか、ミアの唇の端からは小さな笑みがこぼれていた。


 ――――――――――


 その日の午後。フードルに頼まれ、アミーのお願いを聞いてやることに。


「急ですまんの」


「気にするな。肩の荷も下りた事だし、どうせ暇だ」


「よろしくおねがいします」


 フードルの後ろからひょっこりと出て来ては、深々と頭を下げるアミー。

 恐らくはフードルが買い与えたのだろう白いワンピースを身にまとい、大きすぎると言わざるを得ない大人用の麦わら帽子を被っている。

 正体を隠す為なのかとも勘繰るも、それを突き破って飛び出ている角が何ともシュール。

 全体的にちぐはぐではあるのだが、かえってそれがキュートにも見える。


「よく似合ってるじゃないか」


 それにアミーは、一瞬きょとんとした顔をしたあと、帽子のつばをそっと押さえ、照れくさそうに小さく微笑んだ。


 天気は晴天。絶好のおでかけ日和――ではあるのだが、面子はあまりパッとしない。

 俺とコクセイ。魔族のフードルとアミー。そしてエルザの婆さんだ。圧倒的闇属性パーティである。

 そんな四人と一匹が村の東門を出ると、待っていたのは巨大な毛玉。


「久しいな九条殿」


「ああ、そっちは変わりないか?」


「うむ。これといった報告はないな。東から来る兵隊も最近は顔すら出さなくなった。俺たちが食い過ぎて絶滅したか?」


 冗談か本気か、若干迷う言動を放ったのは、東の森のブルーグリズリーたちの長、カイエンだ。

 俺と契約、従魔化したことにより、ブルーグリズリーとは思えないデカさに進化してしまったため、求められた握手で握れるのは爪の先だけである。


「で……。今日、俺を呼び出したのはこの子を紹介するためか?」


「ほう。わかるのか?」


「ああ、微かではあるが、懐かしい匂いがする……」


 フードルの後ろに隠れるアミーに顔を寄せ、クンクンと鼻先をひくつかせるカイエン。


「そう驚かんでもよい。カイエンは、107番のダンジョンを守護してくれておるのだ。一時期は、アモンとも一緒に暮らしておったんじゃぞ?」


「え! ママと!?」


 そう。今回のおでかけ先は107番のダンジョン。アミーの母であるアモンが身を潜めていた場所でもある。

 現在は、カイエンたちブルーグリズリーが番人として目を光らせてはいるのだが、用心としてその出入口は塞いでしまっているのだ。

 とはいえ、フードルがいれば原状回復は容易。


 何の因果か、その娘を預かるのならば、話しておかなければならない事実。

 予想通りと言うべきか、アミーが訪問を希望したので久しぶりに、その封印を解こうというわけだ。


 魔界へと帰ってしまったアモンが、再びこちら側に戻ってくる可能性もゼロではない。

 前回は、調査――というほど詳しくは調べていなかったので、今回は専門家でもあるエルザに同行を求め、ついでに再調査もと相成ったのである。


ここまで読んでいただきありがとうございました。


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ。正直に感じた気持ちで結構でございますので、何卒よろしくお願い致します。

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