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生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない  作者: しめさば


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108番、儀式を端折る

 ポカンと俺を見上げているアミーの前で、少々大き目に咳払い。

 そんなことで今の空気感をリセットできるとは思っていないが、話を前に進めよう。


「ひ、ひとまずは村で受け入れる方向で話を進めよう」


「あ、ありがとうございます……」


 なんだろう……。アーニャのせいで、痛い奴でも見るような視線を向けられているが、アミーの緊張は解れた様子。

 前向きに考え、まずは良しとしようではないか。


「あの……クリスからは聞いてはいるのですが、本当に人間と共存を?」


 クリスがコット村を訪れ、ダンジョンに運ばれるまではアシュラの箱の中だ。外の様子など知る由もなかったはず……。

 実際には見ていないので信じ切れていない――といったところだろう。


「まぁ、村の中限定だがな。獣に魔獣、アンデッドも普通に村の中を徘徊しているが、村人はもうすっかり慣れているよ。住民じゃない奴はたまに驚きはするが、村のルールは全種族統一だ。人間だろうが獣だろうが魔物だろうが争いはご法度。破れば相応の罰を受ける」


「罰……ですか?」


「そう構えることはない。争うなと言ったところでそれを破る奴も中にはいるからな。そうなった場合はどちらの意見も聞き、公平に審判する。その結果、片方だけを罰する事もあれば、喧嘩両成敗もある。罰則は軽ければ金銭か労働。よっぽどの事がない限り、命までは奪わない。まあ村から出て行ってもらうってのが罰としては一番重いか……」


 審判方法は至ってシンプル。カガリの前で状況を説明してもらうだけだ。

 それだけで、どちらが悪いのかはハッキリする。


「金銭というのはいかほど……」


「状況によるとしか言えんな。例えば店先で暴れたとかなら、壊した物の弁済とか怪我の治療費とか……」


 そこまで話して、アミーの言葉の意味を理解した。


「ああ、生活基盤が安定するまではこっちで面倒を見るつもりだ。人間の通貨は持ってないだろうからな。ただ、俺が十分だと感じた時点で支援は打ち切る。自分たちの生活費は自分たちで稼いでくれ。村にも仕事はあるし、なんだったらその辺りの面倒はエルザが見てくれるはずだ」


 もちろんアミーは例外だ。アミーの面倒は、同じ魔族であるフードルに任せる。

 その同意は得ているし、掛かる費用は俺が出しても構わない事を告げている。

 魔族とはいえまだ幼く、親も亡くしている。そんな境遇を鑑みれば、手厚く保護するのは当然だ。

 だが、オーガたちはそうじゃない。親が働き、その対価で家族を養う。それができないやむを得ない事情があれば一考の余地はあるが、特別扱いはしない。


「人間と一緒には働けないとは言わせないからな? 村に住むにしろ、エルザに保護してもらうにしろ、人間との関わり合いは必ず発生する」


 その言葉に、オルガナは諦めたように頷くも、腑に落ちないと眉間にシワを寄せるオーガが一人。


「ちょっと待ってくれ。俺たちは地上に慣れていない。このダンジョンを住処にはできないのか? ここにはゴブリンも住んでいると聞いたぞ」


「望むならダンジョン内の部屋を提供することも可能だ。ただ、そうなると……」


「マスター! 新規登録ですか!?」


「ほらでた……」


 俺の隣にふわりと現れたのは108番。元魔族の精神体。このダンジョンの管理者だ。


「何がだ?」


「ここに、俺にしか見えないダンジョンの管理者がいる。そいつが、お前達をダンジョンに住まわせたがっているのさ」


 そう聞くと、地縛霊みたいなイメージを持たれてしまうかもしれないが、実際そう変わりはない気がする……。


 隣で空中を漂う108番を指差してみるものの、オーガたちの焦点は微妙にズレている。

 俺は溜息をつきながらも、魂印の儀式について教えた。


「それは隷属しろということか? それとも……」


「どう捉えても結構だ。信じるのも信じないのも自由。決めるのはお前たちで、俺じゃない」


 魂印の儀。平たく言えば、ダンジョンに仕える魔物だけが受ける契約の儀式だ。

 契約が結ばれた瞬間、魔物の魂がダンジョンと同調することにより、その内部に満たされた魔力で生命力が補えるようになる。

 食事も休息も、本来必要とされる生の営みが、魔力によって代替されるのだ。

 だが、その恩恵にも影がある。

 契約した魔物は、儀式を執り行ったダンジョンの主。――つまりは俺の命に逆らえなくなる。

 それは、生殺与奪の権を握られているのと同じことだ。


「……いいだろう」


「随分とあっさりだが……本当にいいのか?」


「ああ。俺たちだけではアミーを守り切れなかった。更に保護までしてもらえるなら言うことはない。こう見えてお前には感謝しているんだ。その証明だとでも思ってくれ。……そもそも、ここを出たところで行く当てもない。裏切るつもりがないのなら、この契約にデメリットなど存在しない。そうだろう?」


 そこに気付くとは……。オーガなんてオルガナのような脳筋しかいないと思っていたが、このドズルという男は違うようだ。


 約束通り、オルガナたちは全員無事。既に魂印を契った先住たるゴブリンたちが俺を怖がったりはしないことから、一定の秩序が保たれていることは明白。

 まあ、視野が広ければ気付けることではあるのだが、見知らぬ土地でそれを見抜くだけの洞察力は中々なものだ。


「よし、じゃぁ108番、やってくれ」


「はいはーい」


 俺の言葉に返ってきた軽い返事。間髪入れず、108番が俺の胸に片手を突っ込む。


「――ッ!?」


 次の瞬間、引き抜かれたその手に握られていたのは、契約を縫いとめる一押しの刻印。

 それを笑顔で差し出される。


「はい、どーぞ」


「どーぞってお前……。魔法の詠唱みたいなのはどうした?」


 ゴブリンたちと契約を結んだ時、俺の中から魂印を取り出すのに、長々と呪文のようなものを唱えていたはずなのだが……。


「ああ、あれは最初だから頑張っただけです。何事も最初は肝心ですから」


 そんなことを得意気に話すもんだから、開いた口が塞がらなかった。

 最初に見せてもらった複雑なやり方とは違い、どうやら簡単に済ませることもできたらしい。


「あのさぁ……」


 その事実を突きつけられ、アレをやるのかと身構えていた自分が、途端に滑稽に思えてくる。


「……いや、なんでもない。さっさと終わらせよう……」


 いつも言葉が足りないんだお前は! ――と、言いたいところではあるが、こんなところで言い争うだけ無駄である。

 ちょっとしたお得情報を手に入れたとでも思っておこう。これからは時短できると思えば気が楽だ。


 108番から差し出された魂印を受け取り、溜息を一つ。腑に落ちない不満を覚えながらも、俺はそれをドズルの背中にぶつけた。


ここまで読んでいただきありがとうございました。


よろしければ、ブックマーク。それと下にある☆☆☆☆☆から作品への応援または評価をいただければ嬉しいです。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ。正直に感じた気持ちで結構でございますので、何卒よろしくお願い致します。

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