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生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない  作者: しめさば


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九条、急遽エクアレイスへと帰還する

 ドワーフの国、サザンゲイア王国の王都トゥームレイズ。その地下都市の一角では崩落が起き、その復旧作業に追われていた。

 ……というのは、表向きの話。本当は世界樹の根が街中にまで伸びた影響による被害なのだが、それを知るのは一部の者だけである。


 瓦礫を運ぶ車輪の軋み、崩れた石壁を叩く槌の音が響く中、俺に声をかけたのは現場監督のドワーフ。


「九条殿。そろそろ上がりましょうか?」


「ああ、もうそんな時間ですか」


「いつもありがとうございます。皆様のおかげで、この分ですと後一月もあれば復興できそうです」


 ワダツミとコクセイは重量のある瓦礫の乗った荷車を難なく運び、最初は敬遠されていたデスナイトたちも、今や頼もしい作業員の仲間として受け入れられている。


「最後までお手伝いできればよかったんですが……」


「いえいえ! 何を仰います! 他国からの来賓という立場にもかかわらず、我々の為に手を貸していただいて、感謝の極みでございます!」


 クリスがアミーを救い出している間に、俺たちがトゥームレイズに滞在している事をアピールするため、崩落の普及作業に手を貸している。

 ドワーフの王ザルマンがそれを公表、エルザ率いるネクロガルドが喧伝することで、俺たちの噂はトゥームレイズ中に知れ渡っている。

 もちろんそれはギルドを通じて海を渡り、エクアレイス王国のギルドにまで届いている事だろう。


 ――――――――――


「お疲れ様、おにーちゃん! 今日は何処に食べに行く!?」


「そうだなぁ……。この辺りの店は制覇したから、今日は少し足を延ばして港の方を攻めてみるか」


「うん!」


 トゥームレイズでの行動拠点。フロアを丸ごと貸切った宿へと戻ると、ミアとカガリが待ってましたと笑顔を見せる。

 俺の存在をアピールするため、夕飯はいつも外食だ。

 俺とミア、シャーリーにエルザに魔獣たち。この面子での外出にも慣れたもの。

 適当な食堂に入り、いつも通りの食事を楽しむ。


「はぁ、この自堕落な生活も、そろそろ終わりか……」


「え? 自堕落?」


 俺に発言に、食事の手を止めたミア。自堕落は少し言い過ぎたかもしれないが、クリスが頑張っている間、たまに観光を挟みながらも、だらだらと復興作業を手伝いをしていただけ。

 手伝いと言っても、従魔のみんなとアンデッドたちの監督役。そんな立ち回りなのだから忙しいはずがない。

 アルバートとドンパチやっていた頃を鑑みれば、十分楽な部類だ。


「自堕落かどうかは置いておくとしても、ようやく帰れると思うと気は楽ね」


 テーブルに運ばれてきた料理を口に運びながらも、浮かない顔のシャーリー。


 昨日、クリスを見張っていた従魔のピーちゃんが帰還。報告を受けた。

 その結果を鑑み、次のフェーズへと移行するため、コット村への帰還へと踏み切ったのだ。


「そうだな。エルザには悪いが……」


「仕方あるまい。駆け出しの割には、よくやってくれたほうじゃよ」


 その報告から、クリスの任務は完全成功とはならず――という結論に達した。

 途中経過までは調子よく冒険者の数を減らしていたらしいが、結局キャラバンの解散までには至らず、見張りの冒険者はそのままにダンジョンへの突入を許してしまったのだ。

 それを蹴散らしたのは、エルフの国の暗部の戦士。その後ダンジョンへと突入、消息を絶った。


 それからしばらくして、ネクロガルドの構成員がダンジョンへと侵入。いくつかのエルフの遺体と、真新しい崩落跡が発見されたとの報告を受けた。


「今回ばかりはエルフたちに同情するわ。九条に偽の情報をつかまされて……」


「おいおいシャーリー。滅多な事を言うもんじゃないぞ。ガストンさんに魔石の事を教えたのは、お礼のためだ。嘘なんかついてないからな?」


「たしかにエルフ達にとっては有益だろうけど、腹黒いというかなんというか……」


 クリスに錬金術を叩き込んでくれたお礼として、魔石の情報とその在処を教えたのだ。

 魔導船の開発状況を鑑みるに、魔力貯蔵装置の小型化は急務。魔石であれば、その役割を十分果たせるはず。

 ただ、それをギルドも狙っているから、急いだほうがいいとも言っておいた。


「保険だよ保険。冒険者とエルフで潰し合ってくれれば、こちらへの警戒は薄れるだろ?」


 クリスがその隙を突き、最下層へと続く落とし穴を通ることができれば、誰よりも早くアミーと合流できるはず。

 後は、ダンジョンを崩落させるだけで、冒険者とエルフたちの行く手を阻むことができる。

 多少の生き残りであればアシュラだけでどうとでもなり、そうなった場合、クリスたちが地下深くに閉じ込められてしまうが、ロバートから帰還水晶を託されている事は知っている。


「オーガたちには申し訳ないが、最悪の事態は免れるからな」


 最悪の事態。それはアミーをギルドに奪われ、クリスやオーガたちが全滅してしまう事を指す。

 だが、帰還水晶を使えばそれは免れ、完全成功とはならずとも、最低限の目標は達成できる。


「キャラバンの捜索隊がダンジョンへと入る前に、ワシ等がオーガたちを救出できれば、それでよい」


 キャラバンが帰還しなければ、ギルドは捜索部隊を編成するはずである。

 今回の件で曰く付きとなってしまったダンジョン。その捜索隊を募集したとして、果たして人が集まるのかは甚だ疑問ではあるのだが、諦めはしないだろう。

 その結果、ギルドが今回の件をエルフの仕業だと勘違いしてくれれば、上出来である。


「それよりも、クリスがギルド本部に帰還して、すぐに解放してもらえるかどうか……」


「まぁ、大丈夫だろ。ロバートの娘って事である程度のコネはあるだろうし、最悪アシュラだけ逃げちゃえばいいんだしな」


 帰還水晶の出口はギルドの本部。言うなれば敵地のど真ん中。しかし、アミーだけなら救える方法があった。

 アシュラが独断で状況を判断、帰還水晶を使った場合のアミー緊急秘匿術。

 ――なんて、大層な名前を付けてはいるが、要はアシュラの中にアミーを入れて隠してしまおうという事である。

 人型で、かつ子供サイズであれば可能。それは同時に最強の鎧としても機能するのだ。


「まぁ、アシュラがついてるんだ。滅多なことはないと思うが……」


 その時だ。食事を楽しむ俺達の傍に近づいてきたのは、ドワーフの給仕の女性。

 持っていたメニュー表を違和感なくエルザに手渡すと、礼儀正しく去って行く。


「……あれも、お前のお仲間か?」


「まぁの」


 渡されたメニュー表を開き、それに目を走らせながらも頷くエルザ。

 その表情は、冴えない。


「……何かあったのか?」


「九条、今すぐファフナーを呼ぶがよい。クリスは既に王都にいるそうじゃ。……しかも、オーガたちと共にの」


「はぁ!?」


ここまで読んでいただきありがとうございました。


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ。正直に感じた気持ちで結構でございますので、何卒よろしくお願い致します。

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