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生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない  作者: しめさば


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九条の恩返し

「で?」


「で? ……ってなんだよ……」


 エルザから向けられる意味深な視線。言いたいことはわかるのだが、期待されても困る。


「オーガたちに手を貸せって言うなら、お断りだ。俺はオーガたちの侵略行為を許しただけで、助けるとは言っていない。どうしてもと言うなら、お前の方で手伝ってやればいいだろ?」


 オーガたちの境遇には同情はするし、ギルドに不信感もある。だが、オーガたちと交流がある訳でも、ギルドが俺に対し強硬な姿勢を取っている訳でもない。

 オーガたちを助けるという事は、ギルドと争う事と同義。今の俺は、エクアレイス王国の栄誉騎士。コット村の領主だ。

 反社会的勢力に属しているならまだしも、立場上無理な相談である。


「ワシ等は当然、助力する。じゃが、ギルド相手となると一筋縄ではいかんのぉ……」


 そりゃそうだろう。ギルド……というより、それに雇われた冒険者たちとの正面切ってのガチンコ勝負。

 ネクロガルドの戦力を侮っている訳ではないが、オーガの集団を殲滅するだけの戦力を相手にするのが、どれだけ大変か……。

 問題はそれだけではない。下手をすれば、オーガに味方する人間がいる……という事実が周知され、芋づる式にネクロガルドの存在が明らかになる可能性すらある。

 それだけのリスクを背負いながらも手を貸すというのだから、どれだけオーガに入れ込んでいるのか……。


「俺が動く理由がないだろう? 人助けにメリットを求めちゃいないが、デメリットがデカすぎる」


 人助け……とは言ったが、オーガは魔物だ。魔物を助けるという行為が、人間社会で認められるわけがない。

 まぁ、魔獣や魔族、ゴブリンと暮らしている時点で、ズレていることは重々承知の上ではあるが、正義はギルドにあるということ。

 俺に出来る事と言ったら、影ながら無事を祈ってやることくらいだ。


「ゴブリンと同じようなもんじゃろ。魔王などと呼ばれておるクセに、肝っ玉が小さいのぉ」


「うるせーな。ただ保護するのとは訳が違う。そもそも、お前に頼まれる義理はない」


「そうか? もふアニ建国の為、サザンゲイアに口利きしてやったじゃろ? その恩を今返す……という選択肢もあると思うが?」


「ぐっ……」


 恩着せがましいにもほどがある……と、言いたいところではあるが、事実ではあるので強くは言い返せないのが正直なところ。


「ほら、あれだ。お前はやる気かもしれんが、オルガナは人間なんかに助けてほしくないだろ?」


 それに、ハッとしたオルガナは、思い出したかのように勢いよく頭を下げた。


「助けてもらえるなら誰だって構わない! 我々を……いや、我々はどうでもいい。アミーだけでも……頼むッ!」


 人間なんぞとバカにしていたクセに、今更になって手のひらをコロコロと返すんじゃない……と、言いたいところではあるが、アミーだけ……という妥協点の提示は評価できる。

 自分達はどうなってもいいという覚悟は、どうやら嘘ではないようだ。


「九条……。ワシからも頼む……」


 そう言って、深々と頭を下げたのはフードル。

 オルガナの話を聞いた時点で、そうなるかもなぁとは、薄々感じていた。

 ベリトは因果応報とも言えるが、子供のアミーに罪はない。

 仮にギルドがアミーの身柄を確保したとしても、内部に魔族の……それも子供に対する知識がなければ、封印どころか永眠は必至。

 今のギルドに、アミーが自立するまでの魔力を用意できるとは思えない。


「おにーちゃん……」


 言葉にせずとも伝わる思い、とでも言おうか……。ミアの瞳が小さな湖のように揺れ動く。

 言いたいことがあるけれど、言葉にはできない。けれど、黙っているにはあまりに切実な視線だ……。


「はぁ……、わかったよ。助けてやればいいんだろ……」


 大きな溜息と共に、肩を落とす。

 フードルに加え、ミアにまでお願いされては仕方ない。根負けである。


「エルザ、今まで色々と便宜を図ってもらったが、今回の件ですべてチャラだ。いいな?」


「よかろう。恩に着るぞ、九条……」


 引き笑いで怪しい笑みを浮かべ、己の本心を表に出そうとしないエルザが、深々と頭を下げた。

 それが余りにも予想外過ぎて、暫く呆然としてしまう。


「やり方は、任せよう。人材、経費、隠れ家、必要な物はなんでも用意する」


「あ、あぁ……」


 その真剣な眼差しに嘘はないのだろうが、今までの弱々しいババァの演技は何処へ行ったのかと思うほどに、急にやる気を出し過ぎだ。


「そんなに指輪が欲しいのか?」


「当然……と、言いたいところじゃが、そっちはついでじゃ」


 まるでオーガを助ける方が主眼だとでも言いたげだが、カガリからの反応はない。

 本当に、読めない婆さんである……。


「それで、オルガナ。アミーの封印は、どれくらい持ちそうなんだ?」


 そこが、ひとまずのタイムリミットになるだろう。

 パッと思いつくだけで、アミー救出作戦として考えられる手段は幾つかあるが、それも残り時間次第。


「具体的にはわからないが、恐らくはあと1月ほど……。ダンジョンハートに小さな亀裂が見つかったのが3か月ほど前。それが少しずつ数を増やし、我々が旅立つ前には全体の3分の一程度まで広がっていた」


 修繕の魔具とやらも、完璧な物ではないのだろう。

 壊れた物を元の形には戻せるが、それを維持しておくのには魔力が必要なのだ。それが尽きればダンジョンハートは瓦解、封印も解けてしまう……。


「急ぐに越したことはないか……」


 アミーの延命を最優先に考えるなら、方法は2つ。

 1つは封印を維持し続けること。そして、もう1つは……。


「アストラ……だっけか? フードルの魔力を、アミーに譲渡することって出来る?」


「もちろんじゃ。この角に触れさせるだけで良いからな」


 ならば、やることは1つ。封印は諦め、アミーを連れ出してしまった方が手っ取り早く、確実だ。

 オーガたちの住むダンジョンに、フードルを転移させれば済む話。場所の特定は、108番に聞けばおおよその見当はつくだろう。

 これで、ギルドには俺の仕業だとバレずに、エルザの恩を帳消しに出来るのだから、なんとも楽な仕事である。


ここまで読んでいただきありがとうございました。


よろしければ、ブックマーク。それと下にある☆☆☆☆☆から作品への応援または評価をいただければ嬉しいです。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ。正直に感じた気持ちで結構でございますので、何卒よろしくお願い致します。

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