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誤字脱字報告ありがとうございますm(*_ _)m
感想もとても嬉しいです!
初投稿なのでドキドキしながら更新しております…
文才のない私ですが、何処かで誰かの楽しい暇つぶしになる作品となりますよう頑張ってまりたいと思います!
毎日更新目指します!
内村怜としての前世を思い出したあの日。
私は、可能な限りこの世界について覚えていることをノートに書き留めることからはじめた。
レイチェルとして生きてきた今までの記憶もしっかりあるので、それらの整理の為にも良いと思ったのだ。
まず、レイチェルが住んでいるここは、聖ウラングランド帝国。
聖ウラングランド帝国は、1700年前、ハイデンランド大帝国としてこの世界の全てを支配していた唯一無二の大帝国であった。
そんな巨大なハイデンランド帝国を、圧倒的な力とカリスマ性をもって治めていたのが、ドリュフェルノ・ハイデンランド竜帝王だ。
ドリュフェルノ竜帝王は、実に約700年もの間、ハイデンランド帝国の帝王として君臨していた。
竜帝王が帝国を治めている700年の間、歴史に残る伝染病や大きな自然災害もあったものの、彼の圧倒的な力でそれらの困難をねじ伏せてきた。
そんなドリュフェルノは国民と臣下にとってはまるで神のような存在であり、竜帝王の為ならと命をかける者がほとんどであったという。人々は、永遠にこのハイデンランド帝国が後世もずっと続いていくと信じて疑わなかった。
そんなハイデンランド帝国が滅びるとキッカケとなったのが、ドリュフェルノ竜帝王である。
竜帝王ドリュフェルノは、圧倒的な力を持って大樹の元に産まれた。
それまで世界は幾つもの小さな国に分かれ、国同士の戦争はもちろん、内戦まで行われていて、手の付けどころのない酷い状態であった。
ドリュフェルノはそんな世界をたった1人で、一つに纏めあげたのだ。
世界各地を回りながら、はじめは族の長となり、小国の王となり、その小国が大きな国となっていった。
ドリュフェルノは竜としての圧倒的な力で国を纏めていき、ドリュフェルノ誕生から100年も経たないうちに、とうとう世界は彼の元一つになったのだ。
そんな圧倒的な力とカリスマを持つ偉大な竜は、この世界でたった一匹の竜だった。故に、最強であり、そして同時にいつも孤独だった。
己を崇拝をする者はたくさんいても、同じ目線に立とうという勇気のある者は居なかった。
そんなドリュフェルノに運命が訪れたのは、ハイデンランド帝国が誕生し300年、ドリュフェルノがこの世に産まれて400年経ったときであった。
大樹の元に、この世の者とは思えない美しいエルフが産まれた。
その瞬間ドリュフェルノの全身の血が沸騰するかのように思えた。
竜の本能、番感知による作用である。
美しいエルフはリリアナといい、大樹の元に産まれたその日からドリュフェルノの妃として、ハイデンランド帝国の国民に認知され愛された。
これまでたった1人で生きてきたドリュフェルノにとって、番リリアナの存在は、砂漠に咲く一輪の花、無くてはならない己の半身のような存在であった。
リリアナが大樹の元に産まれてから、大樹の元には連日頻繁に人間とは異なる生命が次々に誕生していった。
この現象は後にエルフ リリアナの生命の祝福と呼ばれるようになる。
ドリュフェルノは、番リリアナを大層可愛がり、己の一部であるかのように何処へ行くにも何をするにもリリアナを連れて行動したとされている。
リリアナ妃も、人間から見れば異常なドリュフェルノの執着を喜び当然の様に受け入れていたという。
ドリュフェルノは番リリアナ妃の為であれば、かつて面倒そうにしていたことも嬉々として行うようになり、リリアナもそんなドリュフェルノに寄り添い誠心誠意サポートしていた。
そんな帝王夫妻の姿は、周りの目には息をのむ程に美しく映り、周囲の者達まで幸せな気持ちにさせていた。
しかし、その幸せは永遠のものではなかった。
エルフの寿命は約300年であり、竜の寿命は短い者で1000年、長い者で5000年も生きるのだ。
リリアナが産まれてから280年頃を過ぎた頃、リリアナの体調は日々優れなくなっていった。これがエルフの寿命によるものだと、当時は誰も知らなかった。
リリアナこそがエルフとしての第一生命であり、一番の長者であったためだ。
人間は外見と中身が伴いながら老いていくが、エルフや竜、その他の種族は、ある程度成長してからは、その姿のまま寿命を迎える者が多いと現在では広く認知されている。
しかしその時代の人間は、老いこそが寿命である死に繋がるのだと思い込んでいた為、若く美しいままのリリアナの寿命が近いとは、誰も夢にも思わなかったのだ。
日々衰弱していくリリアナを大いに心配し、世界のあらゆる薬草から医者まで、己に出来ることなんでもやっていたドリュフェルノだが、どんな薬草も医者もリリアナを寿命から解き放つことは出来なかった。
そして、ハイデンランド帝国建設600年というめでたい年、竜帝王ドリュフェルノの番であり、エルフのリリアナ王妃は、愛しい番の名前を最後に、静かに息を引きとった。
それからのドリュフェルノの嘆きと怒りは凄まじいものだった。なぜなら、リリアナが寿命で死んだとは誰1人として知らなかったからだ。
ドリュフェルノはリリアナの死を受け入れず、かつてリリアナを診ていた医者や、側近、侍女達を疑い、激しい尋問拷問の末、殺していった。
これが番を亡くした竜の番狂いだ。
一般的な寿命で番を亡くした竜は、後を追うように衰弱し亡くなるとされている。しかし、番を何か他の理由で亡くしてしまった場合、竜はその事実を受け止めきれず混乱し狂ってしまう。
番狂いになってしまった竜は、決して以前の状態には戻らず、怒りと悲しみにより少しずつ自我が失われてゆき、やがて世界のすべてを破壊し尽くすまで止まらない。
周りに全ての生命が無くなり、ようやく死によってその破壊行動は止むのだ。
ドリュフェルノの場合、寿命でリリアナを亡くしたが、ドリュフェルノ自身が寿命だとは知らなかった為、番狂いになってしまった。
番狂いになってしまったドリュフェルノを止められる者などこの世に誰1人としておらず、ドリュフェルノによる残酷な殺戮が行われ、一日に何百人と言う命が失われていった。
人々は希望を失い嘆き悲しみ、やがて絶望に濁らせた目で、せめて少しでも苦しまない死を望むようになっていった。
ドリュフェルノが番狂いになり20年、ハイデンランド帝国の人口は三分の二になってしまっていた。
このままでは後30年もしないうちに、この世界の生命はドルフェルノによって奪い尽くされるだろうと誰もが思っていた。
そんな絶望一色の世に、奇跡が起こる。