プロローグ
サブタイトル通り、レイチェルとセドリック軸のお話ではありません。
レイチェルもセドリックも登場しますが、メインではないです。ごめんなさいm(__)m
(許さない許さない許さないっ! こんなエンディング認めないっ! 認めてたまるもんかっ!)
女は、柔らかい桃色の髪を揺らしながら、整備されていない山道を息を切らしながら狂ったように必死に走っている。
身に纏っている美しく上品なクリーム色のドレスはところどころに泥が跳ねた汚れが目立っていた。
(この世界のヒロインは、私なのよっ! それをっ! 横から奪っておいてっ!)
慣れていない山道を走る女の足を木の根が引っ掛け、女は悲鳴をあげて勢いよく転んだ。ドレスは全体的に汚れてしまい、少しヒールのある靴も損傷している。
女はしばらく地面に伏せていたが、しばらくして上体をゆっくり起こした後、力一杯小さで華奢な拳を地面に叩きつけた。
(絶対に復讐してやるっ! あの女一人めでたしでなんて終わらせないっ! 終わらせるもんかっ! 絶対に地獄の底に突き落としてやるっ!)
女は、大抵の男なら思わず見とれてしまうであろう顔つきをしていた。思わず撫でてしまいたくなる桃色の髪に、海よりも綺麗な瞳。誰もが羨む美しく愛らしい顔が、醜く歪められている。
ふらつきながらも、ゆらりと立ち上がり、女はさらに山奥へと足を進めた。
恨みと憎しみで濁った瞳をギラギラとさせ、何かをブツブツと呟きながら進む女を止めるものは誰もいなかった。




