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今回は短めです。ごめんなさいm(_ _)m
本日はあと1話更新します^^
聖 青薔薇学園では、今日も特に変わった変化もなく、平和な時間が流れていた。
元平民のエレーナ・ハイム子爵令嬢が、セドリック・ウラン・ハイデン第二王子に横恋慕をしていて、殿下も満更でもはないという噂を除いては……。
「ねえ、聞きまして? あの身の程知らず、今度は殿下に手作りのお菓子を押し付けているそうよ?」
「まあ! なんて悍ましいのかしらっ……! さすがは、元平民ね」
「殿下に失礼だとは思わないのかしらっ……!」
まるで怪奇現象かのように語る令嬢に、聞いていた友人たちも反応良く震えあがる。
「殿下もいったい何をお考えなのかしら……レイチェル様がお可哀想だわ」
「ほんとうにね……。レイチェル様、最近はすっかりお元気がなくなっているそうよ」
「私もお聞きしましたわ。以前は、殿下の元を訪れてお話をなさっておいでだったのに、最近では会いに行こうともなさらないそうよ」
「ーーお労しいわね……。でも、婚約者があんなに堂々と他の女性と仲良くしていたら、会いたくもないでしょうね」
「「「お可哀想に……」」」
図書室で、授業で出す課題についての調べ物をしていたら、ヒソヒソと話し声が聞こえてきた。
ここ最近、学園内にいると、所々でこういった噂話が聞こえたり、女子生徒から怪我人でも見るような目線が送られたりする。
正直、すごく居心地が悪い……。なぜもっと上手くやらない、セドリックよ……。
本人たちも噂が立って嬉しいことは無いはずなのに、なぜもそう目立つところで逢瀬を重ねるのか、全くもって理解できない。
もう図書室には長く居られないと思い、静かに席を立ち廊下に出ると、噂の主人公であるヒロインちゃんことエレーナ・ハイムが居た。
エレーナは図書室から出てきた私を認識した途端、愛らしい丸い瞳をキッと吊り上げて睨みつけてきた。
「ーー私、あなたになんて負けないわっ!」
私は突然の出来事に驚いて言葉が出ない。
前世を思い出してから、こうしてエレーナと向かい合うことは、初めてだった。
「あなたに、セドリック様は渡さないっ! セドリック様も私と一緒に居たほうが楽しいって言っていたわ!」
「ーーそう……上手くいっているようで安心したわ」
全くもって本心であったが、これまでの嫌がらせの成果か、エレーナには嫌味として聞こえてしまったようだ。
エレーナは私を睨みつつ続けた。
「あなたが何を考えているの分からないけど、これまで私にしてきたことは全部セドリック様も知っているわ! 今更、後悔したって遅いわよ!」
おっと、バレていましたか……まあ、もともとは制約魔法に引っかからないための穴抜け魔法だったから、エレーナにバレるバレないの問題ではなかったのだけど。
むしろ、思い返せばエレーナには分からせるようなやり方をしていた。
「セドリック様と私は、学園を卒業したら一緒になるの! あなたなんて、もう怖くないっ!」
目を潤ませながらキャンキャンと吠えるエレーナの声が、ダイレクトに耳に響き、思わず耳を塞ぎそうになった。
しかし、どうやら彼女たちは相変わらず仲睦まじくやっていたようで一安心した。この調子ならば、平民落ちエンドはお約束されたも同然だろう。
私は思わずニヤリと笑ってしまい、それを見たエレーナはビクッと震えてから後ずさると、そのまま背を向けて走り去っていった。
ーーレイチェルの笑みはそんなに不気味かしら?
これは、平民になったときのために笑顔の練習もしなくてはと思い、私もいそいそとその場を離れた。




