プロローグ
初投稿です。
へっぽこです。
よろしくお願いします。
目が覚めて一番始めに思ったことは、あれ?私なんでこんな面倒なことをしているんだ?である。
侍女が起こしにくるよりも早い時間に目が覚めてしまい、起きてから一番最初に思ったことがコレだ。
ベッドから起き上がり、見慣れたはずの鏡台の前に立つと、見慣れたはずの自分の姿がある。なのに、なぜこうも他人の様に感じてしまうんだろうか……。
毎朝毎晩、侍女のメアリーによって丁寧に手入れされたツヤツヤの黒髪は真っ直ぐ腰まで伸びている。鏡を覗き込む瞳は髪と同じ色で、家族には良く黒曜石みたいで綺麗だと褒められていた。
レイチェルは、鏡に映る自分を見ながら、昨日までのことを他人事の様に思い返していた。
「あら、なにその見窄らしい姿は。まるで、濡れ鼠ね、ふふっ。どこまで身なりを整えようと、所詮貴方風情はドブネズミのようなその姿がお似合いよ」
池に落ちてずぶ濡れになっている一人の女子生徒を見ながら私が言った言葉だ。
正確には私が魔法を使って池に落としたのだ。
聖ウラングランド帝国、5大貴族のうちの一つであるソイルテーレ公爵家の長女である私は、神殿との制約により己の魔法で人を直接傷つけられない。
これは5大貴族の者全てがあまりにも大きな力を持っているためだ。
しかし、何事も抜け穴はある。
私は、忙しい日々の合間を縫い夜な夜なそんな抜け穴を研究に研究し、1人の女子生徒を虐め抜いていた。
元から雪の様に白い肌は、抜け穴魔法の研究によって白さに拍車がかかり、大きな黒曜石の瞳の下には、これまた不健康きわまりない隈が居座っていた。
すべては、そう……あの女、エレーナ・ハイム子爵令嬢を懲らしめてやるためだ。
憎くて憎くてたまらない。
私とはまるで違う明るいうす桃色のふわふわした髪に、湖のような綺麗な透き通った瞳。誰からも愛される、優しい春風のような出で立ち。そして何より、ソイルテーレ公爵家の紋様が刻まれた自分のものより、何倍も遥かに大きな女性らしい胸!
エレーナを取り囲む全てが妬ましい。
きっかけは、レイチェルの婚約者であるセドリックとエレーナが、学園の中庭で逢い引きをしている姿を見かけたときだ。
この国の第二王子セドリック・ウラン・ハイデンは、婚約者であるレイチェルの前では決して見せない柔らかな微笑みを浮かべていた。
悔しい…悔しいわ!殿下は私にはあんな顔をなさらないのに…!元平民の妾の踊り子の娘に、このまま何もせず殿下を奪われるなんてっ…!
エレーナを陥れる為なら、何でもやってみせるわ!と、ギラギラ日々頑張っていた。
そして、現在。チチチと鳥の鳴き声がする爽やかな朝。
鏡台の前で、はて…なんでそこまで頑張らなければならないの?とレイチェルは考えていた。
と、同時にレイチェルの頭に、内村怜という名が浮かびそれからは一瞬だった。
どうやら私は乙女ゲームの悪役令嬢に転生したようです…