第28話 腕相撲の勝負
「お前の腕、折れても知らないからな」
「いいから、早くしろよ」
ここでは腕相撲が良く行われる様子で、それも賭けの対象らしい。
「あの人、本当に強いのよ」
「まさか。勝てっこないわよ。あの筋肉の腕2本よ」
賭けは1:10のレートらしい。
俺に賭けたのはあのお姉さん店員だけだ。
レディーゴー。
審判役の掛け声とともに、両手の筋肉男が力を入れてくる。
元々、常時魔法での強化もされている俺の腕はぴくりとも動かない。
「どうした。もっと力いれないと」
「ふざけるな」
いくら力を入れてもピクリとも動かない。
だんだん焦りだす筋肉腕男。
「そろそろ終わりにしよう」
一気に左手に力を注入した。
パタン。
筋肉男の両手はテーブルに立ち当たった。
「痛てーーー」
「なんだよ。折れてやしないから、弱っちい声出すなよ」
勝負の行方を見守っていた観客たち。
一瞬の静寂の後に割れるような歓声があがった。
「すげーな、お前」
「もしかして、A級ライセンスなのか?」
「どうなっているんだ?魔法か?」
いきなり周りに人だかりしている。
お姉さん店員は、みんなが出した貨幣を全取りで集めている。
「でしょう。この人、すごいのよ」
「本当にすごいわね。今晩、お付き合いしてもいいわ」
「何言ってるのよ。私の方が先よ」
どっちもいらないが。
今日は久しぶりにひとりで寝ると決めているんだ。
「余興は終わりだ。飯をくれ」
「兄ちゃん、俺の酒を飲んでくれ。ビール!」
やれやれ。
飯ではなく酒になったか。
まぁ、いい。酒は嫌いではないしな。
「どんな訓練すれば、そんな強くなれるんだ?」
「ただ、毎日、鍛錬しただけですよ。特別なことなどしていないから」
もちろん、それもある。
ただ、悪魔の力を使っているのは内緒だ。
「今度、一緒に依頼を受けてくれないか?」
「君は冒険者かい」
「はい。C級ライセンスです」
うーん、そんなレベルの冒険者の依頼なんて、と思う。
だけど、やることもないから、いいかとも思う。
「俺と君の二人でか?」
「いえ、あと3人。魔法使いもいますよ」
「バーティに入れというのか?」
「入ってもらったらすごいけど、一度だけでもいいですよ」
まぁ、誘われたのも何かの縁か。
「わかった。明日、朝。ここで飯食っているから、迎えにきてくれ」
「やった!」
そんなやりとりを酒場の連中は楽しそうにはやし立てていた。
筋肉勝負なら負けないらしい。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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