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第27話 女店員発の噂話

そんなに高級ではないが、安宿というほどでもない。


中級レベルの宿に身を落ち着かせた。

この街に来て、何をするのか。

全く決めていない。


「ふう。まぁ、何よりも知っている奴が全くいないというのは気持ちがいいな」


前の街では、噂が噂を呼んで変に有名になってしまった。

どこでも、「あの人って・・・」と言われることがあった。


「この街では目立つのはやめて、静かにしていよう」


そう決めていた。

だが、それは本人だけのこと。

すでに物事は起き始めてる。


「それがすごいのよ。オーク3体を一瞬よ」

「それって、C級冒険者でも無理じゃない?」

「オークってC級冒険者なら、倒せるって聞いたことがあるわ」

「だけど、一瞬で3体は無理よ。あれだったら、オーガだって倒せる感じよ」


噂になっていた。

このくらいは・・・って思っていたけど、周りの評価は違うらしい。


「あ、いらっしゃいっ。英雄様のご来店よ」

「なんだよ、それ」


なぜか、この街で唯一の知りたいと言える女の店に来てしまった。

それも噂の最中に。


この店は、冒険者や荒くれ者も多く、新しい強そうな男が入ってくると値踏みされるのが常だ。

しかし、柔和な顔の男には、そういうこともない。


「なんでも食べてね。私のことを守ってくれたお礼よ」


新入りの女店員が、特別扱いする男。

それだけで、注目を浴びるには十分だった。


「ほう。そいつはお前の男か?」

「違うわよ。そうなってくれたらうれしいけどね」

「そんな弱っちい男はやめて、俺にしろよ」


いかにも力ありますって感じで腕の筋肉を見せびらかしている男。


「そうですよ。俺なんかより、もっと強い男はいくらでもいますって」


勉強して、口調も弱そうにアレンジしてみた。

もちろん、筋肉なんて見せるはずもない。

これで絡まれることも減るといいなと思いながら。


「なんだお前。モテているのが自慢なのかよ」


全然ダメだった。

思い通りにはならないらしい。

あっさりと絡まれてしまった。


「決闘しろと言いたいところだが。そんなことをすると周りに迷惑だから、遊びの勝負をしないか?」

「遊びとは?」

「腕相撲で勝負だ。負けた方が勝った方を先生と呼び、敬うこと」


ずいぶんとかわいい勝負を仕掛けてくるな。

要は腕の筋肉が自慢って訳か。


「勝負は受けますよ。ただハンデが必要ですね」

「どんなハンデだ?」

「両手と片手、それも利き腕でない方で」

「おいおい、ずいぶんも虫がいい話だな」

「あれ、自信ないんだ。その条件だと」


ここで初めて、筋肉腕男が、俺のことを値踏みしはじめた。

このハンデを与えた上で勝てるかどうか。

しっかりと計算している。


「わかった。それでいい。勝ったら先生だぞ」

「よし、勝負は受けた」


そう言って、俺は左手の肘をテーブルに付けて手を差し出した。


「お前、どういうつもりだ?」

「えっ、さっき言いましたよね。利き手なんか必要ない、って。ほら、両手を出しなよ」


それを聞いて、完全に頭に血が上っているのが分かる。

こういう男を見ると、煽ってしまうのはどうしようもない癖らしい。


筋肉男との腕相撲勝負が始まった。

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