第16話 チンピラ
マフィアをはじめ非合法組織というのは、治安が崩れている所に本拠地を持つ。
この街で言えば、北東区だろう。
北門と東門の間にある北東区は、衛兵さえも近づくのを恐れる場所でカジノや繁華街がある。
陽が暮れると共に人が集まりだして、朝になるまでバカ騒ぎをする。
まともな生き方をしているなら、近づくことなどない場所だ。
深夜12時に俺はその場所に武器も防具も付けずに歩いていた。
「おい、そこのお前」
「なんだ?」
「ずいぶんと膨らんだ袋を腰につけているじゃないか。何が入っているんだ?」
「ああ。金貨が30枚ほど入っているだけだ」
「金貨だと!本当か?」
「ああ、枚数はうろ覚えだが30枚くらいはあるはずだ」
「その金貨、置いていってもらおうか」
どうみても「ザ・チンピラ」としか見えない風貌の男は、手に短剣を抜いて構えていた。
「ほう。金貨が欲しいのか」
「ふざけるな。お前みたいな人間が来る場所じゃないんだよ、ここは」
「そうなのか。お前みたいなバカ面じゃなきゃ、来てはいけないのか?」
「少しぐらい腕が立つと思っているんだろう。しかしな。ここはお前にとって敵地なんだよ」
いつの間にか、チンピラの後ろには、同じようなチンピラ姿の男が8人くらい立っている。
「残念だったな。多勢に無勢なんだよ。痛い目をみたくなかったら金貨、置いて帰れ」
「ごちゃごちゃ言ってないで、掛かってこいや」
ザ。チンピラは、後ろの男たちに合図して、攻撃させる。
ただのチンピラだと思っていたこの男。
チンピラの中ではちょっと偉いらしいぞ。
「覚悟せいやっ」「ぐおおお」「死ねぇ」
それぞれが勝手な叫び声をあげながらとびかかってくる。
手にしているのは、ナイフ、棍棒、棒切れ、さまざまな武器だ。
素手とは言え、A級剣士でもあった男だ。
余裕で回避し、顔に拳を叩き込む。
毎日鍛錬をしてきた男の拳はそれだけで凶器だ。
「うわぁーーー。なんだ、こりゃ」
一瞬で手下8人が倒れてしまったのを見たザ・チンピラ。
パニックに陥っている。
「お前。エターナル一家のメンバーを知らないか?」
「エターナルなんて・・・知らない」
「ほう。お前も痛い目を見たいというのか」
握り拳を顔の前に持っていき、脅してみる。
ガタガタと歯を鳴らしながら震える。
「エターナルの方たちは違うんです。俺たちみたいのは、相手していないんです」
「どこにエターナルの奴らがいるか、知っているな」
「そ、そのぐらいは・・・・」
どこまで話していいのか、分からずしどろもどろの状態。
強いと分かると、一気に何もできなくなるのがチンピラのお約束だ。
「とにかく、エターナルの奴らが居そうな所へ連れていけ」
いよいよ、戦いがはじまる。
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